クリス・アンダーソン『フリー―〈無料〉からお金を生みだす新戦略』NHK出版を読み終えた。

ものすごく売れているビジネス書。『ロングテール』の著者で、たまに読む『WIRED』の編集長であるクリス・アンダーソンが「FREE」、無料のサービスをいかにビジネスと整理させていくかについて、「無料」サービスの歴史から、そして現状のネットビジネス、さらにはSF小説の世界まで踏み込んで、解説する内容は、とても分かりやすい。

すでに、Googleなどの無料サービスがここまで普及し、有料のウェブのサービスが伸び悩んでいる実情を前提とすれば、当たり前のことを言っているようだが、やはり、この「FREE」という言葉につきまとう胡散臭さ(私自身は思っていないが、どこかコミュニズムのにおいを感じてしまう人もいる)からか、真剣に論じられてこなかったように思う。

しかし、著者が言うように、atom(原子、物質の世界)からbit(情報の世界)に急激に移行しつつある現代においては、従来の考え方は成り立たなくなってきているのは間違いないと思う。その点において、音楽などの不正なコピーがなくならないのは自然な流れだという著者の意見は、正しいように思う。いくら著作権法を改正し、規制を厳しくしようが、情報のコピーを制限しようという動きは、重力に逆らうようなもの。むしろ、そういった情報の性格を生かしたビジネスこそ、成功するのだとも思う。

内容的にはまったく難しくなく、むしろ日頃直感しているようなことを整理してくれる本だ。

ただ、読んでいる最中に起きたハイチの大地震の報道を読んだりしていると、こういった議論が全世界に通用しているわけではないのが現代でもあることに気付かされる。無料化されるどころか1日180円で暮らし、泥をこねたパンを食べて飢えをしのいでいる人々の悲惨な生活。豊かな消費生活の外には、こういった悲惨が存在しているのだ。
じゃぁ、こういった「FREE」のビジネスは、世界の悲惨を救えるのか。私には答えが見つからない。でも、何か使えそうなヒントがあるかもしれない。個人の寄付や国家の支援に頼るのではなく、貧困をビジネスによって救うこと。そのためには、「Free」なbitをatomに変え、提供する仕組みが欲しいなぁ。うーん、うまくまとめられないけど、刺激的な1冊だった。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
著者:クリス・アンダーソン
販売元:日本放送出版協会
発売日:2009-11-21
おすすめ度:4.5
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