先日、新聞で痛ましい記事を読みました。
 昨年4月のJR福知山線の事故で、結婚を約束して12年間同居していた相手の男性を亡くした女性が、後追い自殺をした、というもの。その女性は、周囲に「JRに遺族として扱われない」ということを漏らしていたということです。

 JR西日本側としては、「婚姻届の有無で対応を区別してはいない」「労災遺族年金が出るようになったから打ち切った」などという言い分があるようです。
 実際に女性とJRでどのようなやり取りがあったのかわかりませんが、この女性は、自分が籍を入れていなかったため、家族として闘っているほかの遺族への対応との間に、差別を感じていたのでしょう。
 もし本当にそうだったとしたら、事が事だけに、JR側はもっと柔軟な対応をするべきだったのでは、と思います。

 最近、結婚しても籍を入れない「事実婚カップル」が増えています。籍を入れない事情はそれぞれでしょうが、大きな理由の一つに、現在の民法では夫婦別姓が認められていないということが挙げられるでしょう。
 二人元気に暮らしている間は、さして不便はないかもしれません。問題がクローズアップされるのは、どちらかが亡くなったときです。

 今回のこの女性のケースでもそうでしたが、遺族年金など、内縁の配偶者(事実婚も内縁ということになります。)に認められる権利も増えてきました。

 では、相続の場合はどうでしょう。
 内縁の配偶者は、相続権がありません。もし亡くなった人に法定相続人がいる場合は、内縁の配偶者は相続することができません。

 もし亡くなった人に法定相続人が一人もいなければ、特別縁故者として家庭裁判所に申し立てをし、財産分与を認められれば、認められた分の財産を受け取ることができます。

 「籍を入れていなかっただけで、事実結婚生活はあったのだし、そんな四角四面に考えなくても……」と思われるかもしれませんが、民法では婚姻届の有無を判断基準に置き、私的な事情を排除することによって、権利を濫用されることを防いでいます。そうでなければ、例えば誰かが亡くなって、「私、事実婚の妻でしたから」などという人がひょっこり現れたときに、判断しようがないというわけです。

 では、事実婚カップルは実際にどうしたらよいのか。
 方法の一つは、遺言に「内縁の配偶者に遺贈する」旨、残しておくこと。
 また、生前に財産が夫婦のどちらかに偏らないよう、贈与税のかからない範囲で少しずつ名義を変更しておけば、ある程度の財産は残せるでしょう。
 重い病にかかったら、死を覚悟して籍を入れてしまうというのも方法の一つかもしれません。

 私個人的には、どちらが早く亡くなるかということはわからないわけですから、できればそれぞれが相手に財産を残す旨、遺言をしておくのがよいのではないかと思います。(法定相続人から遺留分を請求される可能性はあります。)
 もしご自身のケースに当てはまる方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度検討なさってみてください。