2015年02月22日

ラブストーリーズ3

2月22日、シネ・リーブル神戸。

いつもは、“ラブストーリーもの”はあんまり観に行かないのですが、これはラブストーリー“ズ”。
複数形になっている通り、実は映画も2本になっている。
ある夫婦のひとつの物語が、夫の視点で描いた映画(「コナーの涙」)と妻の視点の映画(「エリナーの愛情」)の両方によって語られる、というもの。
この2本が同時公開される極めてユニークなスタイル。
更に、夫婦を演じたのが、共にHANAお気に入りの俳優、ジェームズ・マカヴォイとジェシカ・チャステイン。
(チャステインは、プロデュースにも名を連ねる。)
こうなると、ラブストーリーだろうと何だろうと、観に行きたくなるのがマニア心理。

まだ幼い一人息子を亡くして悲しみに沈む夫婦、コナーとエリナー。
夫婦の溝は、エリナーの自殺未遂によって決定的になり、エリナーは失踪。
やがてコナーは、エリナーが聴講生として大学に通っていることを知り、彼女を連れ戻そうとするが...。
苦悩の末に、二人がそれぞれ、人生の新たな一歩を踏み出してゆく姿が描かれる。

夫サイド・妻サイドで別々のエピソードも盛り込まれ、2本共に登場するキャラクターもいるが、例えば夫・妻それぞれの父親は、他方の映画には出てこない。
もちろん共通のエピソードもあって、カメラワークなどに違いを持たせているのだが、興味深かったのは、セリフや演技にも明らかな「変化」が付けられていたこと。
2本の監督・脚本は同一人物なので、演出家の好みとかではなく、明確な意図があってのことと思われる。
エンドロールに流れるキャストの名前の順番も、「コナーの涙」ではマカヴォイがトップ、「エリナーの愛情」ではチャステインがトップ、というように徹底していた。

原題は「エリナー・リグビーの失踪 彼(Him)/彼女(Her)」。
ちなみに映画を観る順番としては、「コナーの涙」から観た方が、とっつきやすいと思います。

評価は、「3つ星+」。  
Posted by hana2007moviefan at 21:41Comments(0)TrackBack(0)

花とアリス殺人事件3

2月21日、大阪・梅田ブルク7へ移動。

まだ鮮度が高かった頃の蒼井優×鈴木杏×岩井俊二による佳作「花とアリス」(2004年)。
その前日譚、花とアリスが出会ったエピソードを、アニメーションという表現手段で岩井監督が描いたのが本作。
そのアニメーションの手法がとにかくユニークで、キャラクターの絵は、生身の人間の芝居を撮影した映像をトレースしたロトスコープアニメ、声の方は実写版オリジナルキャストである蒼井優と鈴木杏。

この革新的な試みは、「花とアリス」の世界観の中においては、成功していたと言っていいと思う。
実写のようなリアルな演技動作(いわゆる“アニメっぽくない”良さ。)と、ファンタジー的な要素も強い“絵”との融合。
そして改めて、声だけを聞いていても伝わってくる、“実力派女優”蒼井優・鈴木杏の際立った存在感。
「花とアリス」のファンにとっては、納得の行く仕上がりだったと思う。

ただ、オリジナルキャストにこだわらず、あえて“今”の若手女優を起用して実写版で作る、という別の意味での大きなチャレンジも、見てみたかった気はする。
もしキャスティングするなら...「花とアリス」で描かれた“少女たちの繊細でリアルな存在感”を表現できるとすれば、取りあえず思いつくのは、広瀬すず×杉咲花あたりか。
「学校のカイダン」コンビ。
「リトル・フォレスト」の橋本愛×松岡茉優でもいいけど、中学生の役だからね...。

ところで、タクシーの外観などに散りばめられた「鉄人28号」へのオマージュは、あれは一体なんだったんだろう
(HANAは鉄人フリークなんで、“センサー”がすぐにキャッチ。)
かつて、池松壮亮が金田正太郎を演じた実写映画「鉄人28号」に、敷島博士役で蒼井優が出演していた、というつながりが、あると言えばあるけど。
謎。

評価は、「3つ星+」。  
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アメリカン・スナイパー4

2月21日、TOHOシネマズ西宮OS。

アカデミー賞候補の呼び声高い、クリント・イーストウッド監督最新作。
イラク戦争で160人もの“敵”を射殺し「伝説」と称された、米軍シールズの凄腕狙撃兵クリス・カイルの活躍・苦悩・悲劇の生涯を描いた作品。
ブラッドリー・クーパーが、主演・プロデュース。

声高に反戦を訴えるような映画ではなかった。
むしろ、敵側の狙撃手で米軍を苦しめる強敵「ムスタファ」との間で繰り返される、息詰まる攻防戦などは、戦争アクションの高揚感もたっぷり。
(加えて、ムスタファにもカイル同様に妻子がいる設定や、戦友をムスタファに倒されたカイルの怒り・悲しみなど、様々な視点が盛り込まれていた。)

普通の保守的アメリカ人として自然な愛国心から軍に入り、もともと父親から仕込まれていたハンティングの腕前を発揮して、スナイパーとなるカイル。
テロリストの残忍さと、巻き込まれる一般住民。
過酷な戦場の恐怖と、帰国後のPTSD。
心を戦場に囚われたままの夫・クリスと、妻との間の溝。
やはり戦場に赴いた実弟や戦友らが心を病んでいく一方、カイルは“伝説のスナイパー”としてアメリカでは英雄視され、敵からは首に懸賞金をかけられる立場に。
そして、砂嵐の中でも展開される中東での戦闘の実情や、戦闘中の“現場”と米国の一般人とが携帯電話でリアルタイムにつながってしまう、現代の戦争の現実。

これらが偏ることなく観客に提示され、何が正しいのか、どこに正義があるのか、境界はボヤけてゆく。
戦争について論じるのではなく、戦争に参加した一人の兵士の姿を、ドキュメンタリー風に追ったドラマ。

“無音”のエンドロールも、新鮮。
クリス・カイル本人が、映画化準備中に殺害された現実も踏まえて、“美しい音楽”でしめくくるべきではないような気分も、判る。
逆に、このあと何かが起こるのではないかという緊張感も漂い、席を立てなかった。

さて、アカデミー賞の行方は
アメリカの英雄を描いた本作か、「フォックスキャッチャー」の心理ドラマか、それともマニアが好みそうな「バードマン」か  
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娚の一生3

「さよなら歌舞伎町」の廣木隆一監督が、コミック原作を映画化。
主演は、豊川悦司・榮倉奈々。

師であった女性と恋に落ちた過去を持つ今は初老の男が、その女性の死をきっかけに、遺された家で女性の孫娘と同居することになり、やがて恋愛関係に...というお話。
(孫娘といっても、演じているのは榮倉奈々ですから、ロリコン犯罪ものではない。)

時代を超えて祖母と孫と恋愛するなんて、まぁ普通ありえねーシチュエーションも、トヨエツの飄々とした雰囲気ならば、ありかもしれん...と、思わせてしまうところが、さすが豊川悦司。
ただ、当初は祖母の死と不倫のダメージで、ぶすーっとしている榮倉奈々に対して、いくらかつて愛したひとの孫だからといっても、そんなにあっさり恋愛感情を抱くものかね...とも思ったが。
あと、祖母と孫の「中間」の母親の位置付けが、はっきりしていなかったので、何となく腑に落ちなかった。

それと、「年の差恋愛・結婚」を意外にさらっと受け入れてしまう、ヒロインの親族連中。
HANAの知る限り、九州(鹿児島あたり)の田舎の方の人々は、こういう方面に対しては非常に保守的・不寛容、という印象なのだが。
ま、おっさんのHANAにとっては、“ありがたいこと”ではあるけど(笑)。

評価は、「3つ星+」。  
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2015年02月15日

リトル・フォレスト 冬/春4

2月15日、神戸国際松竹。
ここでの二連戦は珍しい。

昨年公開の夏・秋編に続く“後編”。
田舎のスロー・フード&ライフを背景にして、自分の“居場所”を考える若者たちの姿を描く。

橋本愛と松岡茉優、この二人の“次世代型実力派女優”の共演も、見どころ。
まさに自然体の演技を見せていて、本作の世界観にぴったり。

登場する料理がどれもみんな美味しそうで...グルメ映画は色々あるけど、ここまで本当に美味しそうなのは、なかなか無い。

散りばめられたエピソードも、楽しい。
冒頭、「クリスマス」をねだった子供時代のいち子に対して、あっさりダメ出しした母親と全く同じ答えを、HANAも父親から言われた事がある(笑)。
聞き覚えのある音がする...と思ったら、なんと、いち子(橋本)とキッコ(松岡)が薪ストーブの煙突掃除をしている場面
HANAが子供の頃は、札幌の実家の居間に石炭ストーブがあって、親が時々煙突掃除をしていた。
(当時、風呂は薪でわかしていた。)
煙突の内側がこすれる音というものを、何十年も聞いていなかったが...耳は、覚えているもんなんですね〜。
あと、「キャベツケーキ」を食べさせたユウ太(三浦貴大)から、「ソースが欲しい」と言われた時のいち子の微妙な表情が、笑えた。

実際のところ、この映画に出てくるような“地方での半・自給自足の暮らし”が理想形なのかどうかは、疑問も感じるが...。
長年、コンビニ弁当やレトルトやファストフード外食ばかりで暮らしてきた今、老後は「お料理チャレンジざんまい」で過ごしたいと思う、今日この頃ではあります。  
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味園ユニバース3

山下敦弘監督による、昭和と現在がほど良くブレンドされた「おっさん歌謡バンド映画」。
サウンドスタジオを“経営”しながら、地元のおっさんバンド「赤犬」のマネージメントもしているカスミは、記憶喪失だが歌がメチャクチャ上手い青年を拾い、「ポチ男」と名付ける。
ポチ男は、ボーカルとしてバンドに参加するが、徐々に記憶が戻り始め...。

関ジャニ∞の渋谷すばると、二階堂ふみの共演という、意表を突いたキャスティングに、まず注目。
この二人以外には、ビッグネームな俳優は出演してないが、それがかえって“大阪ローカル”な雰囲気には合っていたと思う。

「ポチ男」渋谷すばるの類い稀なる歌唱力と容貌がなければ成立しなかった映画、と言っても過言ではない。
ジャニーズのグループの中に、こんな実力者がいたとは
ジャニーズ、恐るべし。

「赤犬」のおっさんたちの尻を叩く“牧童”みたいなカスミ役の二階堂ふみも、図太くパワフルに好演。
ツンデレな感じも少し入っていて、結構かわいい。
二階堂ふみの役柄の中では珍しい部類に入る、真っ直ぐでシンプルな女の子。
ライヴの際に着ていくスケ番風セーラー服は、カスミの「戦闘服」なのかな

大阪パワーが満ち溢れる、エネルギッシュな音楽エンターテインメント映画。

評価は、「3つ星+」。  
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悼む人3

2月14日、TOHOシネマズ西宮OSへ移動して二連戦。

原作は天童荒太、監督は堤幸彦
堤監督の作風も、変わったな〜、と言うべきか、広がったな〜、か。

“悼む人”という非常に特殊な設定なので、説明しにくいが...結構、引き込まれた。

キャスティングが、上手い。
主人公である高良健吾や、井浦新・大竹しのぶ・椎名桔平ら。

とりわけ、石田ゆり子が良かった。
なかなか色っぽいし、前半は“片目しか見せない”表情が多いにもかかわらず、その“目”だけで十分に語っていた。
助演女優賞に値する存在感。

評価は、「3つ星+」。  
Posted by hana2007moviefan at 00:30Comments(0)TrackBack(0)

フォックスキャッチャー4

2月14日、バレンタインデーなどには全く関係なく、シネリーブル神戸からスタート。

アカデミー賞候補の一つ。
デュポン財閥の御曹司が、男子レスリングの金メダリストを射殺した実話の映画化。

心に闇を抱えた大富豪のジョン・E・デュポンは、金に糸目をつけずレスリングチームのオーナー兼コーチとなり、広大な邸宅の敷地の中に練習場を作って、有望選手を住まわせる。
ロサンゼルス五輪で「金」を取っていた若者マーク・シュルツが、ジョンからの突然の勧誘を受けるところから、破滅へのドラマが始まる...。

ジョン・デュポンを演じたのは、スティーブ・カレル。
コメディのイメージが強い俳優だが、本作では全く異なる役どころを好演。
とにかくもう、最初から「目が死んでる」キャラ。
“金で買えないものはない”と信じ込んでいる彼の性格は、趣味で装甲車を購入するエピソードなどにより強調される。
大財閥の御曹司ゆえの苦悩は、相容れない母親への屈折した思いから、精神の歪みとなってゆく。
レスリングの技術も知識も薄弱なのに、「馬」を高級な趣味と見なす一方レスリングは下劣と見下す母親への反発もあって、レスリングチームにのめり込み、「支配者」たらんとする。

エキセントリックなジョンの振る舞いによって、マークもまた、ノイローゼ状態に陥ってゆく。
もともと、やはりレスリング金メダリストである兄・デイヴへのコンプレックスを持っていたマークは、新たにジョンがなりふり構わず巨額の報酬でデイヴまでチームに招聘したために、ますます心を閉ざし絶不調に。
デイヴはそんな弟を懸命に支えるが、その姿にジョンは嫉妬を覚える...。

デイヴとマークは、それぞれマーク・ラファロ、チャニング・テイタムが好演。
(マークが演じたのは、マークでなくデイヴ。)
ドラマ部分の“演技”はもちろん、レスリングシーンもリアル
二人が経験者なのかどうか判らないが、迫真のテクニック(に見えた。)
相当なトレーニングを積んだのだろうが、こういうリアリティがドラマを支えていたと思う。

コンプレックスに悩む男たちの、確執と嫉妬、そして狂気をじっくりと描き出した佳作。  
Posted by hana2007moviefan at 00:26Comments(0)TrackBack(0)

2015年02月11日

ミュータント・タートルズ3

2月11日、TOHOシネマズ西宮OSへ駆け足で移動。

アメコミのリブート版。
製作が、あの(笑)マイケル・ベイということで、あまり期待してなかったけど、特段の不満は無いアクション・エンターテインメントに仕上がっていた。

無駄に尺が長い、という事もなく、テンポも良かった。
ニンジャ、刀、「先生」といったジャパニーズ・テイストの要素もあるので、日本の観客にも取っつきやすい印象。

あと、「スター・ウォーズ」のジェダイ騎士団の設定の影響も感じられた。
タートルズ=パダワン(弟子のジェダイ)、スプリンター=ジェダイ・マスター(ヨーダ)、シュレッダー=ダース・ベイダーの図式。
もっとも、本家スター・ウォーズでは、ヨーダとベイダー=アナキンの直接対決は無かったが。

そして、最終決戦のクライマックスのアクションでは、日本男子の多くが心の中で「ジェットストリーム・アタック」と叫んだことでしょう(笑)

エンドロールでは、エピローグ的なものは何もなかったが...続編はあるのかな
マイケル・ベイだから、きっとあるのでしょう

評価は、「3つ星+」。  
Posted by hana2007moviefan at 21:53Comments(0)TrackBack(0)

Present For You3

2月11日、大阪・梅田ブルク7。

人間と人形のダブルキャストという、超・変わり種の映画。
実写3D映像とパペットアニメを融合させた、実験的意欲作。
主演はオダギリジョー(と、その姿の人形)。
亡くなられた夏八木勲氏(と、その姿の人形)も出演。

撮影が行われたのは結構前、2013年頃らしく、製作には約5年を要したのだとか。
たぶん、アニメパートの製作に時間がかかったものと思われる。

ストーリーは、割とダークな内容。
組織のボス(夏八木勲)に気に入られてしまい、ヤバい人間を抹消する「後始末」という裏稼業にかかわる破目になったカジワラ(オダギリジョー)のもとに、大物政治家(柄本明)が運び込まれてきて...というお話。
バラバラ死体を鍋で煮込む的な、園子温が好みそうなシチュエーションもあったりするので、アニメーション描写により過激さが希釈される効果も。
また、実写パートのロケやセット撮影も、大幅に簡略化できていたようです。
(手の込んだパペットアニメとの差し引きで、果たして「合理化」になっていたのかどうか...)

まぁ、そういう事ではなくて、“ディープな大人の物語”を、ライトにコミカルに、そしてファンタジックに見せる効果があって、面白い試みだったと思う。
ストレートにCGを使った実写だったら、「幽霊」や“飛び降り自殺が一転”みたいな展開には、違和感が出たでしょう。

監督・脚本・プロデューサーは、アニメーション制作サイドの臺佳彦。
(実写畑の監督だったら、こんな企画は思いつかないだろうねえ...)

評価は、「3つ星+」。  
Posted by hana2007moviefan at 21:50Comments(0)TrackBack(0)