台湾の李登輝前総統が絶賛なさったという映画があります。「跳舞(ダンス)時代」という映画です。「跳舞時代」は1933年に台湾でヒットした流行歌のタイトルで、出したのはコロンビアレコードでした。陳君玉作詞、鄭雨賢作曲、歌ったのは純純という女性歌手だそうです。
当時、コロンビアレコードの台湾支社で働いていた人たちに対するインタビューからこの映画は始まります。かつて同僚だった仲間と昔を懐かしんで語り合うおじいさん、おばあさんの表情はとても嬉しそうです。コロンビアレコードがあった建物を訪ねて、遠くを見るような表情で当時の思い出を語ります。純純という歌手は気位が高く、彼女にあこがれる男性は多かったけれどもなかなか近寄れなかったそうです。そんなインタビューの合間、合間に1930年代の台湾のニュース映像や当時、流行した音楽が入ります。洋装のカップルが社交ダンスをしている映像、恋人たちが池でボートを漕いだりカフェで音楽を聞いたり語りあっている映像を見ると、これが1930年代の台湾なのか!と驚きます。日本では大正末期から昭和初期にかけて流行の最先端を行く若者がモダンボーイ(モボ)やモダンガール(モガ)と呼ばれましたが、多少の時間差はあったとはいえ台湾にもちゃんと「モボ」や「モガ」がいたのですね
台湾は1895年に日本領になりましたが、当時の日本は文明開化の真っ最中。建物も服装も生活様式も何もかも急ピッチで欧米化していた時期だったので、それがそのまま台湾に入ったのでしょう。当時、公用語は日本語だったはずですが、台湾語の歌と日本語の歌と両方、歌われていたんですね。台湾の人から見れば東京の風俗は流行の最先端ですから流行に敏感な若者が真似をするのは今も昔も同じだなあ、と思いました。
この映画を製作したのは1960年代生まれの二人の女性、郭珍弟さんと簡偉斯さんです。製作の動機は「苦しかったと教えられていた日本時代の台湾に、実は両親や祖父母の若いころの輝くような恋愛や流行があったことを知ったから」だそうです。
この映画の大ファンだという李登輝前総統は「台湾の歴史と文化が中国に直結したものではなく、日本や西洋と深く関わっていることを台湾の若い人が知る良い機会だ」とおっしゃっています。
音楽好きな方に特にお勧めの作品です。「日本李登輝友の会事務局(℡03-3868-2111 Email info@ritouki.jp )」に申し込めば送料160円で送ってくれます。会員価格3,150円、一般価格3,360円です。