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世の中には本が溢れていて、その中からどの本を選んだらいいのか、迷うところです。限られた時間の中で本を読むこと自体やさしいことではないのに、その本がくだらない、つまらない本だったら損をした気分になってしまいます。ことに若い頃、読む本というのはその人の思想や生き方に影響を与えることがあるので、単純に「読書は良いこと」とばかりも言えない気がします。読書によって偏った考え方や嘘の情報を吹き込まれ、信じ込んでしまうことも往々にしてあるからです。
若い頃、こんな本に出会っていたら良かったのになあ、と思える本を最近、読みました。福田恆存(ふくだつねあり)の『私の幸福論』(ちくま文庫・640円)です。福田恆存といえば文芸評論家、翻訳家としてだけでなく戯曲を書いたり演出をしたりと、書斎の中だけではない幅広い活躍をした方です。保守言論人としても有名で、新仮名づかいに代表される国語改革(という名の改悪)を批判したことでも知られています。仕事量は膨大で、全集ももちろん出ていますが、『私の幸福論』は全集にも評論集にも入っていません。講談社の「若い女性」という雑誌に昭和30年から31年まで連載していた「幸福への手帖」というエッセイをまとめたもので、福田恆存としてはとても珍しい、女性向けの「身の上相談」風の文章です。ですがもちろん軽いものではなく、1行、1行、読みながら深く考えさせられる内容です。福田なりの「人生論」ですから男性が読んでも悩みを解決するヒントを得ることができるでしょう。
若い頃の悩み、というのは人間関係が多かったような気がします。若い頃の人間関係、というのは主に異性との関係です。『私の幸福論』はいきなり「美醜について」という章から始まります。福田はこう書きます。「美醜によって、人の値うちを計るのは残酷かも知れませんが、美醜によって、好いたり嫌ったりするという事実は、さらに残酷であり、しかもどうしようもない現実であります。それを隠して、美醜など二の次だと言うことのほうが、私にはもっと残酷なことのようにおもわれるのです」。今なら「差別発言」と糾弾されそうなことです。このくだりだけで読むのを止めてしまう人もいるかも知れません。でも冒頭のこの部分だけで読むのを止めたら、そのあとにもっと大切な話が出てくるので、我慢して読み続けた方が良いと思います。
私がこの本を読んで感じたことは、福田さんというのはとても優しい人なのではないか、ということです。若い女性の持つさまざまな悩みを福田さんはおそらく放置しておけなかったのでしょう。だから物議をかもしそうなことを批判を覚悟であえて書いたのではないでしょうか? 前書きに、福田さんはこう書いています。「与えられた現実を目をつぶって受け容れろというつもりはありませんが、それだからといって、ただ現実がまちがっているというようなことばかりいっていてもはじまらない。現実がどうであろうと、みなさんは、この世に生れた以上、幸福にならねばならぬ責任があるのです。幸福になる権利よりも、幸福になる責任について、私は語りたいとおもいます」。
読書の秋にお勧めの一冊です
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