2005年02月02日

藪の中の黒猫

本日のお題は藪の中の黒猫(1968年 監督:新藤兼人)
のろの大好きな猫のお話…と言っても、かわいい猫ちゃんではなく化け猫のお話。
この作品との出会いは1992年。大ファンだった太地喜和子の事故死にショックを
受け、彼女の作品を片っ端から探しては観ていました。もちろんヤフオクなんぞ無
い時代。レンタルビデオ店にも置いていないシロモノを探すのは至難の業でしたが、
とにかく見たい作品は執念でゲットしていました。藪の中の黒猫もその中のひとつ。
新藤監督の同志・乙羽信子、祖父の名跡を継いで間もない頃の二世中村吉右衛門
など、のろの大好きな俳優たちが結集したこの作品。ただの化け猫映画と思ったら痛
い目見ますよ(-_☆)キラーン 注→ネタバレあります

藪の中の黒猫

時は平安中期の戦乱の世。藪の中の民家に大勢の落武者が押し入る。そこには若い女・
シゲ(太地喜和子)と姑のヨネ(乙羽信子)が暮らしていた。餓えた落武者たちは家中
の食べ物を漁り、シゲとヨネを凌辱したあげく、家を焼き払い立ち去った。焼け跡の遺体に
は一匹の黒猫が寄り添い、鳴いていた…。

平安京の羅城門には夜毎美しい女(太地喜和子)が現れ侍を誘う。藪の中にある女の屋敷に
招かれた侍は、女の母(乙羽信子)が用意した酒と肴でもてなされ、翌朝、喉を喰いちぎられ
た無惨な姿で発見される。

同じ頃、戦で手柄を立てた薮ノ銀時(中村吉右衛門)は、源頼光(佐藤慶)の家臣となった。
百姓から侍に出世した銀時は、その姿を見せようと母と妻の待つ藪の中の家に帰ったが、そこに
は母も妻もなく、焼け跡だけが残っていた。

源頼光からの命を受け、夜な夜な侍を襲う妖怪退治に羅城門へ赴いた銀時は、暗闇から現れた
女に連れられ藪の中の屋敷に…。

     おれは不思議な気持ちだ
     おれの母や嫁にそなたたちは瓜二つなのだ

母や妻の姿を借りた妖怪と、二人に斬りかかる銀時。しかし、女たちは闇へ消え去る。
銀時は不思議な懐かしさを覚え、母と妻に似た二人の姿を探し、夜毎藪の中の屋敷や
羅城門を彷徨う。

     あなたたちを討ちに来たんじゃない
     会いたくて来たんです

ある夜、ようやく羅城門に女が現れ、藪の中の屋敷へ…。

     あなた方が何者であるか それはもう問うまい
     私はあなた方に会いたかった
     それだけでいいのです

女は銀時に抱かれ狂おしいまでの激情に身を委ねる。妖魔に魅入られたような甘美な時に
我を忘れ逢瀬を重ねる銀時。しかし七日が過ぎた晩、女は消えしまう。屋敷では母が一人
銀時を出迎えた。

     あの子は七日間だけに命を縮めて
     あなたさまと契りを交わしたのです

天地の魔人に誓いをたて、この世とあの世とを彷徨う怨みの霊魂の神に願をかけ、侍の血を
すすることを約束し、再び人の世の姿を借りることができた二人だった。しかし女はその約束
を破った。侍である銀時を殺すどころか、からだを許し地獄へ落ちたという。

     あの子は恨み重なる侍の血をすするよりも
     あなたに抱かれて地獄へ落ちることを望んだのです

もう一度会いたいと、床に這い慟哭する銀時。母の姿は消えていた。

その後も、喉を喰いちぎられた侍の屍が相次いで見つかる。頼光から叱責された銀時は意を決
して羅城門を訪れ、闇から現れた母と共に藪の中の屋敷へ向う。その道すがら水溜りに写った
母の顔に怪猫の姿を見た銀時は、太刀を振るい左腕を斬り落とす。母の姿は闇に消え、斬り落
された腕は黒猫の脚へと変化した。黒猫の脚を持ち帰った銀時は、頼光より七日間の物忌みを
命ぜられる。蟄居して七日目の夜、陰陽の占いを司る巫女に化けた母に脚を奪い返された銀時
は、その後を追った。いつしか藪の中の屋敷に辿り着き、狂ったように太刀を振るう銀時。

     おかあさーん! おかあさーん!

翌日、藪の中の焼け跡に息絶えた銀時の姿があった。降りだした雪がすべてを覆い、藪には
猫の鳴き声だけが響く…。

幻想的な映像に能といった様式美を織り込み、物語に一層の余韻と深みを持たせています。
新藤監督が師事した映画監督・溝口健二の「雨月物語」(1953年)へのオマージュとして
製作されたということですが、それに劣らぬ作品だとのろは思っています。
中村吉右衛門との切ない逢瀬で見せる太地喜和子の初々しさが、のろには衝撃的でした。
48歳という若さで急逝した彼女の仮通夜の際、信濃町にある文学座へ多くの芸能人が駆け
つけました。その中で「杉村先生(杉村春子)がお気の毒で…」「このバカヤロウって言っ
てきました…お棺に」と目を潤ませていたのが乙羽信子です。文学座の長である杉村春子
の後継者として周知され、更なる活躍を期待されていた太地喜和子。その死を惜しみつつも、
花の盛りで散った女優の美学を感じざるを得ないのです。
乙羽信子も杉村春子も、すでにこの世の人ではありません。この二人の遺作となった
午後の遺言状(1995年)も新藤監督がメガホンをとっています。

なんか寂しくなってしまった…o( _ _ )oショボーン


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この記事へのコメント

1. Posted by maa   2005年02月03日 03:04
どもども。誰だかわかるかな?
↑読んだら見たくなりました。
見るね。見る見る。
したらまたくるね。
2. Posted by のろ   2005年02月03日 18:26
★maaさま のろのブログへようこそ!!

どもども。誰だかわかるよ!
ぜひ見てね。したらまた来てね。

すご〜く怪しい会話になってる気がする(~_~;)
3. Posted by ikuyo   2005年02月03日 22:57
maaさまって、誰だかわかるよーな気が…。
4. Posted by のろ   2005年02月04日 20:42
★いくちゃん 今日はありがと!!

クロワッサン美味かった!!
あとは明日のお楽しみです。

maaさまは、おそらくいくちゃんの
思っている人でしょう(笑)

すぐわかるっちゅうねん(~_~;) 
5. Posted by ikuyo   2005年02月04日 21:10
「どもども」でわかった(笑)

こちらこそ今日は一緒に謎のパン屋に行けてよかったよ。
やっと買えて、心の奥からスッキリしました♪
6. Posted by 栃麺坊   2005年02月11日 14:12
のろさん、こんにちは!

昨年、「太地喜和子伝説」「欲望という名の女優太地喜和子」と喜和子さん関連の本を立て続けに2冊読み太地喜和子ワールドに浸ってました。
私の大好きな役者さん中村嘉葎雄さんとちょっぴり浮名を流されそれから結構気になる女優さんでした。
「太地喜和子伝説」ではお2人のお話も出てきますが恋愛関係ではなかったようです・・・が。
この作品のことも触れられていて気になっていた作品でした。
素敵な女優さんでした・・・惜しいな〜本当に。
7. Posted by のろ   2005年02月11日 22:02
★栃麺坊さんこんばんは(●^o^●)

のろのブログは気まぐれなので、なかなか更新してません。お恥ずかしい(~_~;)
でもホントに嬉しいです!!「太地喜和子伝説」「欲望という名の女優太地喜和子」 
2冊とも栃麺坊さんが読破していたとは…。もちろんのろも読みました。
読み返すたびに女優の生き方を全うした人なんだなって思います。

中村嘉葎雄さんは「婉という女」で志麻様の弟を演じておられましたね。
時代劇が好きなのろはお兄さんの錦之介さんの方が好きだったのです…が。
1987年に放送された「魚河岸ものがたり」をご存知でしょうか?
嘉葎雄さんと佐藤友美さんの静かな大人の恋が実りかけたその時、
佐藤さんの突然の死で終止符がうたれてしまう…。
あのドラマの嘉葎雄さんが忘れられなくて、お兄さんより好きになってしまいました。
マセた中学生でした(*^^*)
8. Posted by 栃麺坊   2005年02月13日 21:58
のろさん、こ(^0^)ん(^_^)ば(^▽^)ん(^_^)わ(^○^)

やん♪(/.\*)(*/.ヽ)やん♪
もう・・・どうしてのろさんとはこんなに話が合うのでしょう・・・。
私もはじめは錦之介さんのファンでした。
「破れ傘刀舟」「鬼平犯科帳」などなど・・・でも途中からいつも錦之介さんの傍にいらっしゃる嘉葎雄さんに惹かれはじめたのです。
「魚河岸ものがたり」勿論見ました!
嘉葎雄さんは錦之介さんのように豪快ではありませんが繊細でストイックな役柄がよく似合います。
この番組もそうですね。

佐藤友美さんと言えば・・・志麻さんの親友と言ってもいいくらいの方ですよね。
若い頃から一緒によく遊んでいらっしゃるようですね。
でもお二人一緒だとかっこよすぎて目立ちすぎるような気がしますが・・・。
9. Posted by のろ   2005年02月14日 11:08
★栃麺坊さん こんにちは(^O^)/

高廣さんの「京都ぽんと町〜」の文字を見たときに、只者ではないと
思いましたが(笑) 錦之介さん、嘉葎雄さんまでも…。
この一致って偶然にしてはスゴイですよね!ね!
「てめえら人間じゃぁねぇ…たたぁ斬ってやる!!!」って見てましたよ!
それに東京では今昼に再放送しています。のろはお蘭姐さんにも憧れていました。
基本的に、カッコよくて和服の似合うお姐さん好きなんです。

カッコいいと言えば、佐藤友美さん。彼女もステキな女優さんですね。
一度コンサート会場でお見かけしたのですが、オーラでまくりでした。
ってことは志麻様と佐藤さんのツーショットって眩しそう(^O^)

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