アインシュタインの手書きメモ2枚がエルサレムのオークションで競売にかけられ、156万ドル(1億7700万円)と24万ドル(2700万円)で落札されました。競売会社ウィナーズの広報担当者によると、イスラエルにおける資料のオークションとしては史上最高額とのこと。

1922年に訪日したときに、東京の帝国ホテルに滞在していた際、手紙を届けに来た日本人の配達人にチップの代わりにメモを渡しました。2枚ともドイツ語で書かれたものです。

156万ドルで落札されたメモには、帝国ホテルの便箋(縦21センチ、横13センチ)に「静かで節度のある生活は、絶え間ない不安に襲われながら成功を追い求めるよりも多くの喜びをもたらしてくれる」と書かれています。

24万ドルで落札されたもう一枚には、「意志あるところに道は開ける」と記されています。

出品者はドイツ・ハンブルク在住で配達人の親戚にあたる人物とのこと。アインシュタインはメモを渡す際に「あなたが幸運なら、これらの紙は通常のチップよりずっと価値があるものになるだろう」と語ったといいます。

科学的な価値はないものの、アインシュタインの幸福観が示されているという点で貴重なものとされています。

ホテルの便箋に書くなんて、アインシュタインさん、意外に粋なところがあったんですね。チップの代わりに渡すところなど、ユーモアのセンス抜群です。日本のホテルならではの微笑ましいやり取りと言えます。

アインシュタインの言葉とはいえ、一枚のメモに億単位の値が付いたことには驚きます。落札したのは欧州の人のようです。大富豪か、研究者または博物館などの関係者ではないかと推測します。「帝国ホテルの便箋に手書き」されたものであるところに興味を持ったのかもしれません。あるいは、一流の科学者が示した専門外の分野に関する意見ということで注目が集まったとも考えられます。ある分野で頂点を極めた人の考え方や思考を探求しようとする欲求には際限がないことを示しているように思います。

あらゆる高度な数式を駆使して相対性理論を確立したアインシュタインにしても、幸福については数式で表すことはできなかったのでしょう。このメモに書かれていることは、彼なりの表現で数式に代わる幸福の方程式を示そうとしたものなのかもしれません。「この方程式で幸福という難題に挑んでもらいたい」というささやかなメッセージなのではないかという気がします。幸福はその人にしか証明することはできないのですから。