最近、あるインタビューの動画を見ていました。インタビュアーがペンを持っていたのですが、それを見ていてあることに気付きました。

手に持っているペンの半分から上の部分しか見えていなくて、なおかつクリップの部分がとても目立っていました。ペンの下半分の部分は手に隠れてほとんど見えていません。だから手に持ったり書いているときはクリップの動きがとても目立つのです。クリップの存在感の大きさを再認識しました。

ペンが万年筆なのかボールペンなのかそれ以外のものなのかは判別できませんでしたが、ほぼ正面を向いてテーブルに座っている態勢でペンを手に持っていたので、外観の上の部分だけははっきりと見えました。クリップが目立つタイプだったこともあるのですが、その動きに惹きつけられたのです。
こちらが書いているのを見ている相手がいることを想定して考えてみると、ペンの上部に相手の視線が向けられることになるので、色合いや形状にもよりますが、クリップというのはとても目立つポジションにあると言えます。

ペンが使われている状態を相手から見たときに、見る角度によるとはいえ、実はペンの上半分しか見えていないということに改めて気づいたことには、どこか新鮮な感じがあります。そんな当たり前のこと何を今更、という気もしますが、その時は強く印象に残ったのです。

普通、ペンを購入するときは、小さいアイテムでもあるので全体としてのデザインを見てしまうのですが、こちらが書いているとき相手からはペンの上部しか見えていないのです。書いているときのペンの動き方など、普段は意識しないものなので、書く側にせよ、書いている人を見る側にしても、「書いている状態のときのペンの見え方」というのはなかなか面白いテーマだと思えてきました。よく考えてみれば、本来、ペンは飾っておいて見て愉しむようなものはなく、実際に書いて使われている状態がペンの本来の姿であると思うので、そこに関心を持つというのはもっともな話ではあるのですが。

ペンを買うときは、置かれて静止している状態のものを見ることが圧倒的に多いです。試し書きはするものの、せいぜい書き味や感触を確認する程度で、たいていは時間をかけずに直感的に選んでいます。だから「書いている状態のときのペンが相手にどう見えているか」ということを考えて選ぶような発想は今までにはなかったものです。

人が書いているシーンを見る機会としては、例えば何か申込書などにサインしたり、アンケートに記入したり、仕事の打ち合わせでメモを取るなどがあるくらいで、もっと長い時間書き続けるような場面を見ることはめったにないものです。自分で書いているときも書かれた文字のほうを目で追っているので、ペン先こそ見ることはあっても、ペン全体の動きを特に意識して書くということはほとんどありませんでした。

今後購入する際には、「このペンはどんなふうに使うときれいに見えるか」と想像しながら選んでみようと思っています。”試し書き”のとらえ方にひとつ新たな見方が得られました。
見られることを特別に意識するつもりはないのですが、「書いている状態が相手からどう見えるか」という視点を持って、その情景を想像してみるというのも愉しい選び方だと思います。
上質なペンを使っていても、きれいに使えているかどうか、振り返ってみても良さそうです。ペンと同様に書く姿勢も真っすぐでありたいですから。