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先日、新聞を開いていたらNETFLIXの広告が出ていました。
日本のみならずニューヨーク・タイムズをはじめ主要各国の代表的な新聞に掲載されたものです。創業以来初の世界的広告キャンペーンとのことでCMも放映されているようです。

面白いと思ったのは動画配信の最先端を走るNETFLIXが新聞に見開き2ページにわたる大々的な広告を掲載したことです。今なぜ紙メディアに掲載したのか、とても気になりました。


難局に遭遇するようなときには、確かな情報、俯瞰する視点を提供するもの、急速な変化の中にあって立ち止まって熟慮する契機となるものへの関心が高まるので、新聞に焦点が向けられたのではないでしょうか。

世界の主要紙に同時に広告を掲載するということは、言葉から想像を引き出そうとするうえで新聞広告が今だ有力だメディアであることを示しているように思われます。また、娯楽としての映像分野に新たな地平を開こうという強い意志表示が読み取れます。

今のような困難な状況だからこそ言葉による表現が持つ力に期待を寄せていることがうかがえます。映像配信の先端を駆けるNETFLIXが変化球を投げてきたのです。それも抜群のコントロールで。
新聞の読者に向けたものというよりは新聞に掲載することそれ自体に意味があるような広告です。

動画の再生バーがひとつあるだけというの極めてシンプルなもので、隅の方に短文のメッセージがあります。派手なビジュアルのインパクトで訴求するというよりも言葉による表現で伝えようとしています。

再生時間が2割ほど経過したところに赤丸があります。この位置にあるのは「残りはNETFLIX本編の動画でご鑑賞下さい」と呼びかけているように思えてきてユーモラスでもあります。

「線を超えるもの」という一文があって再生バーを一本の線に見立てています。ひとつの線から思い浮かぶのは境界やハードルといったものです。地平線や水平線のように実際は遠く離れているのにすぐ近くにあるように見えたりします。遠近両面の世界が重なっていると考えることができます。
「事態は一瞬にして急展開する。眼前にどんな高い壁が立ちはだかっても決して超えられないはずはない」という力強いエールが聴こえてきました。
黒い背景のなかに浮かぶ白い再生バーは出口へと誘導する一筋の光のように見えてきて、「脱出の手掛かりは動画のなかにある」そう語りかけている気がします。

「旅のようなこの線の中で」という文もあり、線を旅路としてもとらえています。再生バーは動画の始まりと終わりを示すものですが、入口と出口があるトンネルと見ることもできます。赤い点が右端に到達すれば動画は終わりますが、そこを出口としてまた新しい自分のストーリーが始まる。そんなふうに展開していきそうです。

ふだんは再生バーを見ていて特に気に留めるようなことはありませんが、立ち止まって見方を変えてみると、こうした想像が膨らんでいくところは新聞広告ならではですね。