IMG_20201205_140553

渋谷パルコで開催中の最果タヒの展覧会を見てきました。若い人から人気を集めている詩人で、私も以前から注目していました。

たくさんの詩の断片がモビールのように天井から吊るされています。ひとつひとつの言葉がくるくると回転していて、読もうとしてもすぐに見えなくなったり突然目の前に現れたりするのです。歩き回りながら偶然出会う言葉とのやりとりが体験できるようになっています。どこからかふとやってくる言葉を捕まえて詩として紡いでいく様子を身体で味わっている感覚です。現れては消え、つかもうとしたとたんにどこかへ離れて行ってしまう気まぐれな言葉たちと戯れているような感じでした。

詩の一節を形成しているひとつひとつの言葉それぞれが自由にしていて、他の言葉とつながりながら好きなように宙を舞っている光景は開放感に溢れていました。たくさんのモビールの間を歩いていると、まるで言葉の森の中に深く入り込んでいくような幻想の世界をイメージしました。

いつも頭に浮かんでくる言葉ではないけれど、せっかく捕まえた言葉なので離してしまいたくないからなんとか繋ぎ留めようともがいている、言葉と格闘するそんな光景が目に浮かんできました。


IMG_20201205_140517

会場の壁に書かれた文のなかに、「あれは詩だ、と思うとき、言葉の向こうに光を見つけた『自分』の存在が証明される」とありました。モビールのようなインスタレーションによる表現は、自分が立つ位置や動き方によってその都度様々な言葉と遭遇していく思考の様子を体で体験できるものとなっています。あるとき遭遇した言葉をヒントに、それが詩として感じられることの感覚に迫るものだと思いました。言葉を詩だと感じる瞬間には、どんな感情の変化が起こっているのでしょうか。言葉と詩との間に自分の存在証明になるほどの大きな転換があると考えると、その瞬間というのは一体どんなときなのか、探究してみたい面白いテーマです。

詩集を本で読むのとはまた違った体験のなかで新しい言葉と出会うことができました。展覧会の会場がパルコであるというのも、先鋭的な感覚を持っているところが通じていて相性もぴったりですね。