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ロルバーンとコラボレーションした『深夜特急』のリングノートです。
これは第1巻の表紙で使用されている絵柄になります。第2巻以降の表紙を用いたノートもそれぞれあります。

この絵はフランスの著名なグラフィックデザイナーのカッサンドルが描いたポスターを用いたものです。ちなみにカッサンドルというのは本名ではなくペンネームのようです。この人はファッション誌「ハーパースバザー」の表紙を飾ったり、イヴ・サンローランのYSLのロゴをデザインするなど、多くのグラフィック作品を手掛けています。


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青と黒と白に赤がアクセントとして用いられています。Rollbahnの文字も赤に合わせていますね。

直線を強調したシンプルなデザインはキュビズムやバウハウスの影響を強く受けていることが見て取れます。鉄道広告として使用された作品で、長距離国際寝台列車の「北方急行」を描いています。

真っ直ぐに突き進むスピード感溢れるイメージは、成長に向けてひた走る社会の変化の速さが思い起こされます。


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方眼タイプのノートです。ここに旅日記を思う存分書ける日が早く来るといいですね。

『深夜特急』第1巻では、著者の沢木耕太郎がユーラシアを巡る旅に出発した最初の訪問地である香港・マカオが描かれています。この時、1974年頃ですが、著者が語っているように香港はまだ旅行で訪れる目的地として想定される場所ではありませんでした。収録されている香港の紀行文は、初めは雑誌に掲載されたものだそうですが、この時期に香港について書かれたものはほとんどなく、この紀行文がいかに先駆的なものであったのかということを示しています。まだ知る人の少ない地について真っ先に興味の先鞭をつけたこと、また、ひとりで現地を巡るという新しい旅の方法を広く提示したことが、この作品の揺るがぬ人気を支えるものになっているのだと思います。

著者が訪れて以来、半世紀近くが経とうとする今においても香港は大きな変革の波に覆われています。今や世界中から観光客が押し寄せる大都市になりましたが、その平穏な観光をも揺るがすような変動の時を迎えています。『深夜特急』に描かれた時代から50年後の香港を著者がどんなふうに歩くのか興味があるところです。新たな『深夜特急・香港』が書かれることを期待したいものですが、これは贅沢な願望でしょうか。