
福島県の五色沼湖沼群を散策してきました。
磐梯山の裏側にあたる地域で裏磐梯と呼ばれるエリアです。この辺りはあまり人工の手が入っておらず、むき出しの自然を満喫することができます。今回の旅では、幻想的な沼がいくつも点在する五色沼探勝路を散策しました。
沼に向かって木の枝が猛々しく突き出しています。澄んだ水を求めて湖面に向かって伸びようとしている姿が雄々しいです。

樹々の姿がきれいに水面に映し出されています。空には飛行機雲のような真っ直ぐな線が走っていて景観を引き締めています。

これぞまさに水鏡という光景が圧巻です。

森の木々が水面を挟んでいる光景はハンバーガーのバンズようです。

満々と生い茂る森の中にところどころ明るい陽光が差し込んでいます。

葉の上に道を成すように光の散策路ができています。

葉の上を伝う朝露が光に照らされて瑞々しくはじけています。

奥へ奥へと探勝路が続きます。道は石が多くごつごつしていて、しっかりした足取りで歩かないと転びます。決して整った道ではありません。

とにかく様々な虫が始終飛び交っていて、常に腕をさすったり顔の周りを手で払ったりしていないと虫が寄ってきます。それでも何ヵ所も刺されました。半袖で歩いたのは良くなかったですね。虫よけスプレーを施したうえで長袖のシャツを着るのが正解でしたね。
熊が出没することもあるみたいで、注意を促す看板が掲示されていました。鈴を鳴らしながら歩いている人も多く、警戒度はかなり高そうです。
ここに来る前に中津川渓谷に行ってきたのですが、拠点となるレストハウスが閉まっててるうえに駐車場に一台も車が停まっていないのです。それでも渓流が見たかったので10分ほど遊歩道を降りて行きましたが、まだけっこう歩いていかないと下まで到達しない感じでした。また、熊出没を警告する看板が掲示されていて、人気がまったくないなかで本当に熊と遭遇しそうな気配を感じたので、道を降りるのを断念して引き返すことにしました。
渓流を堪能するのも捨てがたいところですが、こうした自然に慣れていない身で、周りに頼れる人もいない状況なので安全を優先しました。

美しいブルーのようなグリーンのような色の沼が見えてきました。

本当に絵の具で塗っているかのような鮮やかな色です。

自然が織りなす色彩は写真では表現しきれないですね。実際に目の前で見た印象は本当のところ言葉や写真では表現できません。しっかり目に焼き付けておきました。

陽が薄いとこのように深々とした濃い緑に変わるのかもしれません。

歩いていると少しずつ水の音が聞こえてきました。音が次第に大きくなり、森の中を流れる小川に行き当たりました。なんと、ほとんど目にすることのなかった花が水際で小さく咲いていました。

小さな花びらですが清流の中で咲く様子に清涼感が高まります。

水が流れるなかで形を崩さずに広がる大きな葉の存在感が力強いです。

樹々の間からうっすらと見える沼はどこか神秘的な様相を帯びています。

水面の上をアメンボが這っています。まるで直に地面を見ているようにも見えますが、水の上なのです。いかに水が澄んでいるかが分かります。

深い緑と白のコンビネーションが鮮やかです。

水面の美しいグリーンに負けじとばかりに雲の白色が攻め込んでいます。

こうした水面を絵画で表現するのが上手なのはコローやブーダン、ピサロやコンスタンブルなどの画家ですね。

沼に続く小川が見えました。

静謐な沼の水面と光に照らされて白く浮き上がった波形がコラボレーションしています。水が織りなす静と動のリレーが繰り広げられています。同じ水でありながら、あるときは沼と呼ばれまたあるときは小川と言われる。水も一露では形をなさず、様々な環境のなかで千変万化しながら自然を生きていることを思うと、その柔軟性に感服します。

警戒していた熊と遭遇することもなく、探勝路をゆっくり歩いて陳在する沼を巡りながら自然を満喫しました。最小限の設備で歩道が設けられている以外はそのままの自然に触れられるようになっていて、束の間ではあるものの野性的な感性が呼び覚まされる体験となりました。
一泊二日で行った今回の旅では、檜原湖畔にある裏磐梯レイクリゾートに宿泊しました。朝晩2食付きのプランで食事はホテルで摂りました。いずれもバイキング形式で好きなものを選ぶことができます。和洋中とバラエティーに富んだメニューで、またしても少々食べ過ぎてしまいました。
おいしそうなやきそばが目に入ったのですが、鍋にたくさんあるし、既にひととおり取り終えていたのでお腹に余裕があったら後でまた取りに来ようと思い、いったん席に戻りました。食べ終わって、少しならやきそばもいけるかなと思って取りにいったところ、なんと鍋の中は空でした。時既に遅し。
やっぱり先に取っておけば良かったと思いつつも、ほぼ満腹状態だったので更に食べたところであまりおいしさを味わえないかとも考え断念しました。やきそば、大人気なんでしょう。
デザートもケーキや果物が何種類もありました。うれしいのはケーキの大きさが小ぶりで一口サイズなので、全種類食べてもお腹の負担にならないところです。これは素晴らしい。あっ、シュークリームは食べなかったかな。
大浴場で汗を流しました。遅い時間だったこともあり他に数人しかおらず、のびのびゆったりと湯につかりながら一日の疲れを癒しました。
ホテルのすぐ傍には檜原湖があり、観光で訪れる人もそれなりにいると思われますが、周辺には営業していない店が多く見受けられました。8月下旬なので夏休みとはいえ観光のピークから少し外れた時期でもあり、客足が一気に落ち込んだタイミングだったこともありそうですが、周辺のお店は閉まっているところが散見されました。なかには、そうとう前に閉店して廃屋になったまま放置されているような建物もあります。大人数を収容できる飲食店なども少なくありません。おそらく今から20年~30年前のバブル時代前後の頃は多くの人で賑わっていたと思われます。いくつもの店舗が集結した観光センターがあることからも、かつては活況を極めた時代があったことが想像されます。それから時を経て閑散とした寂れた環境になってしまっているのは残念でならないと感じます。この辺りには大勢で楽しめるようなこれといったレクリエーション施設もなく、エンターテイメントを求める観光客からすれば少々物足りなく映る面はありそうです。スキー場があるので冬は活況なのかもしれませんけれども。
でも、できるだけ手を加えず、ありのままの自然に触れる体験に特化しているというのは商業的には厳しいかもしれませんが体験価値としては高いものがあり大変貴重だと思います。入場料を徴収して大掛かりな設備を整えた施設にすることもできると思いますが、それだととせっかくの美しい自然との間に距離が生じてしまうことになり、もったいないです。そうはせずに可能な限り手を入れない素の自然そのものが提供されているところに大いに共感します。五色沼探勝路にしてもスタート地点から終着地点へ到着するまでの間にお手洗いは設けられていません。そこまで徹底して自然を残そうとしているのです。
観光のピーク時期を外し、できるだけ観光地化されておらず人工の手が入っていないエリアでのんびりと寛ぐ時間を過ごす。時間をかけて自然の移ろいを眺め耳を澄ます。そうした体験ができる旅を望むうえで裏磐梯というエリアはぴったりの場所だと思われたので今回の旅先に選びました。
夏の裏磐梯は素敵な場所です。あんなにも表情を変える沼の情景を眺めているだけで、様々なイメージが喚起されます。散策路を歩くのも、もっと時間をかけて森の様子に気を配りながら歩いたら更に新しい発見や気づきが得られたでしょう。虫除けスプレーと長袖のシャツは必須ですが。
いつまでも、アメンボが澄んだ水の上を這っていられるような清新な自然のままであってほしいですね。