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渋谷INS Studioでシャルル・ムンカの個展を見てきました。20年以上にわたり世界各国を旅するなかで、文具店で見つけた「試し書き」の紙を収集してきたそうです。それをモチーフに創作された作品が「Tameshigaki」とのテーマのもと集結しています。

PILOTの試し書き用紙に書かれているのはおそらくムンカの筆跡だと思われます。個展の企画に関する情報が書き込まれています。このような紙をひたすら集めてきたというのですから驚きます。



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LとTとUの書き心地を試しているのかな。



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横書きした文字を縦に置いたのか、初めから上下にこの向きで書いていったのか謎ですね。



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サインペンかマジックのインクの出具合をチェックしているようですね。太いペンで書いているのでインクのムラの状態がよく分かります。ある程度使用した後でインクの出方が少し薄くなり出した頃の具合をみている感じですね。同じ太さでもペン先の材質や紙と接する角度によって線の表情も変化します。そのあたりを探ろうとしている書き方でしょうか。
MONOのロゴもあります。



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会場の奥には文房具が並べられた棚があります。



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オリジナル文具を販売しているのかと思いきや



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市販の文具が陳列されているだけでした。



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棚の下にはもともとあった車の輪留めがそのまま残っています。
この個展はマンションの地下駐車場が会場になっています。発想が奇抜で、生活のなかの本当に身近な場所にアートが置かれているということには驚きました。会場の入口が分からなくて付近を何度も行ったり来たりしてしまいました。



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意味のある文字を書こうとしているようでそうでもないような曖昧さを楽しんでいます。



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上から下に降りてきてカーブを描きながら上へ上がっていき頂点を打ってまた下がっていくという繰り返しの動きはアルファベットを書くときに最も頻繁に生じる動き方なんでしょうね。筆記具を選ぶうえで、まずはここの書き味が快適であることが大前提だから多く書かれているのでしょう。また、最も書き慣れた動きでもあるということでしょう。



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輪留めを活かして展示台にしています。日常や身の回りの取るに足らないことを創作テーマにしているムンカの真骨頂が見て取れる感じです。



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WATERMANの試し書き用紙に書いたものでしょうか。上下の文字がともに半分欠けています。



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Pentelの文字がうっすらと見えます。左側に書かれているキャラクターは誰でしょうか。分かりません。



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長く大きな線が伸び伸びと書かれていますね。試し書きにも書く人の性格が表れますよね。



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こちらにはZEBRAの文字が。これも一部かすんでいます。
ドラえもん登場です。



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まさに試し書き用紙ですね。ひとつ思うのは、たいていの文具メーカーはオリジナルのメモ帳を提供していますが、それとは別に試し書き用紙を備えているんですね。お店に置いてある紙は試し書き用のものだったり、一般のメモ帳と変わらなかったりしますが、紙質などに違いがあるのでしょうか。形で言うと横長タイプのものをよく見かけます。
ボールペンやサインペンで書く時と万年筆を選ぶ際に使用する場合とで使い分けているということはありそうです。



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rotringですね。くるくると回転するスプリングのような書き方は試し書きの定番と言えます。私もよく書きます。


この「試し書き」に見られるような、誰も気にしないようなとりとめのないものに焦点を当てて、新しい発想に活かそうとするムンカの視点は、何の変哲もない身の回りにあるもののなかに美を見つけていくことの面白さに気付かせてくれました。
混沌としていて曖昧な試し書きのイメージを創作テーマにしたのは面白いですね。実物の試し書きをそのまま忠実に再現したり、組み合わせてみたりしながら創作したのかもしれません。
捉えどころのない、たゆたうような線のなかに、確かな手ごたえを感じ取ろうとする書く人の願いが垣間見えてくるようでした。