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東京富士美術館で「アメリカ印象派」展を鑑賞しました。
アメリカ・マサチューセッツ州にあるウスター美術館が所蔵する印象派の作品がやってきました。日本初公開作品を含む珠玉の絵画との対面です。



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会場に入った最初の部屋ではモネの「睡蓮」をビジュアルで表現したインスタレーションが空間を彩っていました。絵画を模して壁一面に展開され、鑑賞者を囲うように拡がるビジュアルは、作品の中に身体全体が没入するような感覚を呼び起こします。印象派の作家が大きな関心を寄せた、身近な風景にある「光」の色彩を絵画とは異なる手法で表現しているところ、印象派展の導入部として軽いウォーミングアップになります。



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ベルト・モリゾ「テラスにて」
こちらは東京富士美術館所蔵です。海に降り注ぐ陽の眩しさで、空とほとんど一体化しているようでありながら、光の先に広大な大海原が拡がっている様子が想われるところ、見えていないものの先にある光景を見に行こうとする印象派らしい作品だと感じます。



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クロード・モネ「睡蓮」
池全体がもやに包まれ、幻想的な雰囲気を醸しています。鮮やかな色彩で蓮の花を描くことにも大きな魅力を感じていたと想像されますが、もやのなかで微かに浮かびあがる蓮の花の虜にされてしまったのでしょう。



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ルイ=ウジェーヌ・ブーダン「工事中のトゥルーヴィルの港」
出ました、ブーダンの作品です。水面に映り込む風景を描かせたら右に出るものはいないと思わせるほど、その繊細な表現にはいつも魅了されます。



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ジュリアン・デュプレ「干し草作り」
鍬を引く女性の身体の姿勢や足もとの藁が舞い散る様子など、躍動感と繊細さが併さっています。頭に巻いた赤いスカーフとグリーンの作業着の色が鮮やかに際立っています。屋外での作業でも身なりへのこだわりを惜しまない余裕が表れています。



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トマス・コール「アルノ川の眺望、フィレンツェ近郊」
一瞬、写真と見まがうほどクリアな絵です。



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ブルース・クレイン「11月の風景」
湿った地面を覆う枯葉や小石がキャンバスから浮き上がるほど塗り重ねられていて、絵画を超えて彫刻作品かと思えてくるほど立体感ある描き方です。



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チャイルド・ハッサム「花摘み、フランス式庭園にて」
小道の左側の緑が圧巻です。幾重にも重なり合って深々と生い茂る様子は決して花の美しさに負けていません。



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ヨゼフ・イスラエルス「砂丘にて」
曇っているからなのか、海の色が砂丘とつながっているような色合いで描かれていて、遠くを見つめる女性の、どこか寂し気で不安な心情が浮かび上がってきます。



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ジョン・シンガー・サージェント「コルフ島のオレンジの木々」
どこにオレンジがあるんだろうと思うほど緑に覆われています。こうした多様な緑から養分を得ることで、豊潤な酸味と甘みの漲る果実が成るのです。緑のなかに分け入って、胸いっぱいに匂いを嗅いでみたくなりますね。



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ジョゼフ・H・グリーンウッド「リンゴ園」
野原の草の軽やかなことといったらありません。ほぼ同じ色味なのに一葉ごとの存在感がしっかりしています。小さな水溜りはリンゴの瑞々しい感触を想起させます。



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ジョゼフ・H・グリーンウッド「雪どけ」
小川に映り込んだ樹々と白い雪との色のコントラストが素晴らしいです。



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ジョン・ヘンリー・トワックマン「滝」
自然のままの形が残っている川の上流で、流れが入り乱れている感じがいいですね。荒々しく流れ落ちる水の音が聞こえてくるようです。



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ウィラード・リロイ・メトカーフ「プレリュード」
春の訪れを待ち望む田園風景です。かすかに残る黄色い葉をまとった樹の幹が寂しそうで物憂げです。まもなく暖かい季節を迎え、太い樹の幹が見えなくなるほど青々とした葉で覆われることでしょう。



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チャイルド・ハッサム「コロンバス大通り、雨の日」
雨水に湿った街の大通りですが、一目見て地面が濡れていると分かる描き方はさすがです。



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チャイルド・ハッサム「朝食室、冬の朝、ニューヨーク」
カーテンを綴じているのは日差しが眩しいからなのか、それとも寝起きでまだカーテンを開ける気分にならないからなのかどちらでしょう。花瓶にある花の黄色と身に纏っている明るいグリーンは、これからの充実した一日の訪れを予感させます。



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ルーサー・エマーソン・ヴァン・ゴーダ―「公園にて」
茶色い地面の色が素敵です。階段の端の手すりの上に陽が当たり、白い直線になって長く伸びているところは、真っ直ぐ降り注ぐ陽差しの強さを想わせます。



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ジョルジュ・ブラック「オリーヴの木々」
樹の枝が幹から離れてが宙に舞い上がっています。その様子は人の腕のようにも見えます。ひとつの樹だけでなく、隣の樹からさらに遠くにある樹ともつながりたいという強い欲望を感じます。他の樹に辿り着いた枝は色が変化しています。高く広く生い茂る躍動感ある樹々の清新さが伝わってきます。



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ロヴィス・コリント「鏡の前」
美容室と思われる部屋のなかで明るい照明が白い服に眩しく反射しています。カットに入る前に望みの髪型を話しているのでしょうか。あるいは、散髪後、予想していた雰囲気と微妙に違っていて、動きを交えながら、再度、要望を伝えているのでしょうか。両手で髪を触って細かく指示している動きは少し激しいようです。服の皺の入り方や荒々しい描き方からも、そんな印象を受けます。



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服のはだけ具合から、身体を大きく動かしている様子がうかがえます。



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服に様々な色が混じり込んでいるのは、雑然とした部屋に光が反射しているからでしょうか。いや、もしかするとここは美容室ではなく、どこかの場所で服を着たままシャワーを浴びて洗髪しているようにも思えてきました。服が水に濡れているからこの色彩になっているのでは?。そんな印象すら持ってしまうほど大胆な光の表現です。



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マックス・スレーフォークト「自画像、ゴートラムシュタインの庭にて」
帽子とシャツの襟の淡いベージュが引き立っています。



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何層にも塗り重ねられていて、帽子のつば、シャツの襟ともにしなやかな曲線が立体感をもって迫ってきます。タバコの煙がかすかに横に流れて自然のなかに消えていく感じがいいですね。



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ウィラード・リロイ・メトカーフ「街の風景、チュニス」
住宅街の路地でしょうか。左右に見られる光と影のコントラストは生活の浮き沈みを象徴しているように思われ、日々繰り返される自然のいたずらと言ったら酷でしょうか。



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フランク・ウェストン・ベンソン「ナタリー」
きりっとした目で遠くを真っすぐ見つめる視線。肩に掛けられた赤いスカーフ。自由と遊興を謳歌する活気が伝わってきます。伸びやかで大らかな気性に溢れる絵ですね。作者はこの視線の先に、開放的で自律した人々が築きゆく、繫栄するアメリカの未来を見据えていたのかもしれません。