【患者を生きる】:目 未熟児網膜症:4 50キロ離れたまちから、遠隔診療朝日新聞社 朝刊 主要ニュース ライフ  医療・健康 aspara 健康club 【患者を生きる】 2010年01月12日 08:19:00  この記事は参考資料です。転載等は各自の責任で判断下さい。
 5月半ば。ふだんは約50キロ離れた岡山県倉敷市の川崎医療福祉大で教える眼科の田淵昭雄(たぶちあきお)医師(66)が、診察に来た。未熟児網膜症(ROP)の症状の有無を確認するためだ。

 田淵医師は、06年6月に福山医療センターの眼科の常勤医がいなくなってから、2、3週に1度、センターで赤ちゃんを診ている。大学の講義が終わった後、車を1時間運転して来るため、診察はいつも夕方からだ。

 田淵医師は、非常勤医を引き受ける際、広角デジタル眼底カメラの購入をセンターに頼んだ。ROPは、眼科医による2~3日おきの診察が欠かせない。しかし、田淵医師が頻繁に倉敷からやって来るのは難しかった。

 このカメラなら、眼底の広い範囲を撮影でき、より詳しく病態がわかる。「画像をメールで送ってもらえば、倉敷にいても目の状態を把握できる」と田淵医師は考えた。ROPの遠隔診療がスタートした。

 英人くんも受けることになった。説明を聞いた英爾さんは、「全身の状態は落ち着いてきているけれど、診察のため眼科のある病院に運ぶ途中に容体が変わるかもしれない。センターでこのまま診てもらうほうが安心だ」と考えた。「メールでチェックしてくれるなら大丈夫」と母の牧子さん(26)も思った。

 最初の検査で、英人くんの目は、右も左も網膜上に新生血管は見られなかった。

 1週間後、2回目の検査は、センターの小児科の吉本順子(よしもとじゅんこ)医師(37)=現・岡山大病院小児科=が担当した。

 開瞼器(かいけんき)でまぶたを開けたままにし、筒状のカメラを瞳の上に押し当て10枚ほど撮影。両目の鼻側と耳側をそれぞれ1枚、計4枚の画像を電子メールで田淵医師に送信した。

 左は目立った変化がなかったが、右は発症の兆候がみられた。「次回の診察の時に診ます」と田淵医師は吉本医師に連絡した。