5月22日は5年に一度のベトナムの全国統一選挙投票日です。
ハノイでは、国(国会議員)、ハノイ市、区、郡の4階層の議員選挙の投票が同時に行われています。
ベトナムの投票率は98%前後で、ほぼすべての有権者が投票すると言われています。ただし、実際には「投票したことがない。」という若者に多く出会うことから、お父さんやお母さんが家族の分も含めて投票する「代理投票」も認められているようで、全ての人が投票活動に参加している訳ではなさそうです。投票カードと立候補者のデータは町内会を通じて各戸に配布され、候補者の大まかな経歴や専門が分かりますが、政策に関する議論とかは殆どされないということです。日本のような街頭演説や選挙カー、ポスターなどは一切認められていません。
国会の仕事に携わって2年ですから、5年に一度の国会議員選挙は今回が初めての経験です。実際の投票所の管理がどう行われているか確かめたくて、国会事務局に公式な選挙モニタリングを申し込みましたが、「外国人は駄目!」と断られてしまいました。ここはやはり簡単にはいきません。

そこで、自力で見学を試みることに。プロジェクトの佐久間さんと2人で街中の投票所に行ってみました。今朝は5時半から「選挙に行こうよ!」というアナウンスや「ベトナム、ホーチミン!」というような歌が町内放送でガンガンと流され、街は選挙モード全開です。
観光客の散歩を装って恐る恐る入っていったのは近所の小学校。投票所を見守る祖国戦線の若者に、中に入って見て良いか聞いてみると、なんとOK。「写真は駄目ですよ!」ということでしたが、椅子を用意してくれて、お水まで出してくれました。
投票所は受付から、投票、そして投票確認の順番で非常にスムーズに運営されていました。時折、お年寄りの管理員の人が「なんで外人がいるの?」的な視線を送ってくるのでちょっとそわそわしましたが、若者にくっつき、いろいろと質問させてもらえました。
Q.ここの有権者は何人くらいですか?
A.1000人くらいです。あそこに有権者名簿があります。
Q.大体何時くらいが投票のピークですか?
A.朝ですね。お昼ごろには大体終わると思います。
Q.投票所で働いている人たちは祖国戦線の人たちですか?
A.祖国戦線の民間下部団体の人たちが主です。
などなど。

投票所で働く人たちは高齢者がメインです。皆さん、ワイシャツにネクタイをしてめったにない正装という感じ。行き来する女性の中にはアオザイを着た人もいて、なんだか華やかな雰囲気もあります。
親切にしてくれた若者にお礼を言い、次の投票所を探しながら歩くと、なんと10分圏内にあと4か所も。それぞれが小学校や幼稚園、集会場を使って、独自の飾りつけをして投票所を運営していました。中には通りを派手に飾り付けお祭りのようなところも。最初は投票所が見つかるか不安だったのですが、すべての投票所で同じ放送が大きな音で流されているので、街を歩くだけで投票所がどこにあるかすぐに判る状況でした。

全体的に、とても穏やかでスムーズな投票活動が行われていて、ほっとしました。途上国の選挙というとどうしても政治的に不安定な要素や、選挙妨害などがあるのが普通に思えてしまいますが、ベトナムの選挙は違いました。アフガニスタンで人が殺される選挙を経験した私にとっては、とても嬉しい、ベトナムの平和を再確認する時間になりました。

ただし、ベトナムの選挙には大きな問題があると言われています。それはベトナムが独自に築き上げてきた制度であり、良いところ悪いところがあるのですが、やはり立候補の自由や結社の自由が認められていない点は、今後大きな課題になると思われます。
プロジェクトで支援し立法化された「選挙法」が、今回の選挙でどのような影響を与えたか、成果を上げたか、検証が必要です。

こぼれ話し;
〇投票率の高い理由がもう一つあるようです。有権者名簿で、投票済者のチェックをするのですが、投票が済んでいない人は町内会の人が家まで投票をするように誘いに行くのだとか。
〇投票所で説明してくれた若者は祖国戦線の自警団員とのこと。外敵から地元住民を守る役目を負っているようです。何かあったら戦争に行く準備はいつでもある、という感じ。
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投票日の街並み。路地には国旗がたくさん。