芹ヶ谷だより

美術館スタッフが皆さまにお届けします。

ミニ企画展「描かれた文学 ドラクロワとシャセリオー」

5
テオドール・シャセリオー連作 『オセロー』より 「ああ、私の美しい兵士!」

 「浮世絵風景画展」と「ミニ企画 浮世絵モダーン」、今年の夏は浮世絵をたっぷりお楽しみいただきました。 たくさんのみなさまにご来場いただいたふたつの展覧会が9月12日に終了、次の企画展「版画の見かた―技法・表現・歴史」が9月25日(土)から始まります。

 じゃあ展示室はお休み?―いえいえ、そうではありません。9月15日(水)からミニ企画展「描かれた文学 ドラクロワとシャセリオー」が始まりました。

両者は19世紀のフランスで活躍した画家。
ドラクロワといえば七月革命を描いた「民衆をひきいる自由の女神」が有名ですね。
シャセリオーは2017年に国立西洋美術館で開催された大回顧展が記憶に新しいところです。

今回のミニ企画展では、ふたりが文学を主題に制作した版画集を紹介します。

ドラクロワが描いたのは、ドイツの文学者ゲーテの戯曲『ファウスト』。
シャセリオーはシェイクスピアの悲劇『オセロー』。
どちらも文学史に残る名作として知られます。

というと、高尚そう、難解そう…、はっきりいってつまらなそうって思っていませんか?

物語の主人公は、現代風にいうと《残念な人》。
1
   
学問をきわめても真理は分からないと絶望し、悪魔に魂を売る約束をするファウスト。
部下の悪だくみにまんまとはまり、心優しい妻を殺すオセロー。

他の登場人物も、陰険だったり、だまされやすかったり、嫉妬や愛といった感情にひきずられ判断をあやまってしまう――つまり、人間臭い人間ばかり。
ドラクロワとシャセリオーはこうした人々の姿を実にいきいきと描いています。

『ファウスト』と『オセロー』はいくつもの日本語訳があり、文庫本などでも手軽に読むことができます。
読書の秋、見てから読むか、読んでから見るか。ぜひ、ご来場ください。

「浮世絵風景画」グッズを先着プレゼント中!

好評開催中の「浮世絵風景画―広重・清親・巴水 三世代の眼―」展も、残すところ1週間となりました。
9/7(火)より本展を鑑賞の方を対象に、オリジナルの広重ファイルをプレゼントします!

 IMG-8640
表にプリントされているのは、歌川広重「冨士三十六景 駿河薩タ之海上」。 
波と富士山の絶妙なレイアウトが素敵な作品です。
※本作は前期展示のため、現在は展示されていません。


 IMG-8639
チケットや鑑賞ガイドを入れるのにぴったりのA5サイズです!
※なくなり次第終了とさせていただきます。

「浮世絵風景画―広重・清親・巴水 三世代の眼―」展は、9月12日(日)まで開催中です!
会期末の週末は混雑が予想されますので、来館を予定されている方は、ぜひお早めにお越しください。

館長かわら版 その二十

 企画展「浮世絵風景画 広重・清親・巴水 三世代の眼」は会期後半に入っています。今回は後期展示で日本橋を描いた作品を2点、とりあげてみます。

 東海道を描いた絵師として知られる広重ですが、生涯を通じてもっとも数多く描いたのは江戸の名所です。彼が手掛けた数多の江戸名所絵シリーズの中で、傑作として知られるのが天保期に佐野屋喜兵衛から出版された「東都名所」です。「日本橋之白雨」はその中の1図です。「白雨」とはにわか雨のこと。画面左奥へと続く日本橋と右奥へと遠ざかる日本橋川という左右両方向への空間の奥行を二点透視法的に処理し、遠景ほど淡く霞み、色を失うという空気遠近法も併用し、急な雨に煙る日本橋周辺の風景が、その雰囲気まで含めてリアルに再現されています。同じ絵師の手になる保永堂版「東海道五拾三次之内 日本橋」とともに、江戸時代の風景画でこの橋を主題としたものの中で双璧といえるでしょう。

UKIYOE-2-068
歌川広重「東都名所 日本橋之白雨」天保(1830-44)前期、個人蔵

 でもよく見ると現実にはあり得ないことが描かれているのに気づきませんか。雨が降っているのに、遠くに富士山が見えるはずはありません。風景の「写真(現在の「写実」とほぼ同義)」を売り物としていた広重なのに、どうしてなのでしょう。

 広重に限らず、江戸の名所絵として描かれた日本橋図には、かならずといっていいほど、手前から奥に向かって、日本橋、江戸城、富士山が配置されています。当時の人々にとって、江戸の繁栄を象徴する場所であった日本橋は、江戸城(江戸の町は将軍のお膝元)、富士山(江戸では富士を信仰する冨士講がさかんで、人々の精神的な支えともいえる存在)といっしょにイメージすることが定着していたからです。たとえ現実にはありえない現象でも、人々が日本橋に対して抱くイメージを裏切らない、そのことが広重の名所絵の成功の秘訣でもあったわけでしょう。

 その広重も、東海道シリーズ中の1図として描くときは、構図を変えています。上述の保永堂版「東海道五拾三次之内 日本橋」(前期展示)や「東海道五十三次之内(行書東海道) 日本橋 曙旅立の図」(現在展示中です)では、背景には江戸城も富士山も描かれていません。あくまでも街道の起点として橋をほぼ正面からとらえているからです。

 後期展示では、巴水の描く日本橋風景の傑作も展示しています。「東海道風景選集 日本橋(夜明)」。石造りのアーチ橋と姿を変えた日本橋を斜め方向からとらえ、背景にビル群を望んでいます。ゆっくりと流れる日本橋川の川面にたゆたう橋の姿や、日の光を受けた橋の明暗など、現代的な表現が随所に見いだされます。巴水は「知りすぎているからかも知れませんが、広重の模倣追随などしません」(昭和10年「半雅荘随筆」)と語っていますが、雲の縁が紅く染まって朝焼けを表現するのは、早暁の日本橋を描いた広重の保永堂版「東海道五拾三次之内 日本橋」が脳裡にあったからではないかと思います。ただ、この作品の最大の魅力でないかと思われる画面を支配する爽快な大気の肌触り、そこからにじみ出る透明感あるリリシズムは、間違いなく巴水が生きた時代の感覚を可視化したものに他なりません。

UKIYOE-1-033
川瀬巴水「東海道風景選集 日本橋(夜明)」昭和15年(1940)
株式会社渡邊木版美術画舗蔵

月別アーカイブ
ギャラリー
  • ミニ企画展「描かれた文学 ドラクロワとシャセリオー」
  • ミニ企画展「描かれた文学 ドラクロワとシャセリオー」
  • 「浮世絵風景画」グッズを先着プレゼント中!
  • 「浮世絵風景画」グッズを先着プレゼント中!
  • 館長かわら版 その二十
  • 館長かわら版 その二十
  • 館長かわら版 その十九
  • 館長かわら版 その十八
  • 館長連続講座「浮世絵を知る」が始まります!
  • 2年ぶりに開催!受講生作品展が帰ってきました!!
  • 2年ぶりに開催!受講生作品展が帰ってきました!!
  • 2年ぶりに開催!受講生作品展が帰ってきました!!
  • 2年ぶりに開催!受講生作品展が帰ってきました!!
  • 2年ぶりに開催!受講生作品展が帰ってきました!!
  • 館長かわら版 その十六
  • 館長かわら版 その十六
記事検索
プロフィール

hanga_museum

QRコード
QRコード