芹ヶ谷だより

美術館スタッフが皆さまにお届けします。

2011年04月

駒井哲郎展 ワンポイント鑑賞講座 その2 <駒井と戦争>

1920年、大正9年生まれの駒井哲郎の青春は、戦争に翻弄されたといえるでしょう。

1944年と45年の2度にわたって召集され、溝ノ口東部第六二部隊に入営しています。
最初は脚気のため除隊となり、二度目は終戦をその部隊でむかえました。
階級は陸軍二等兵、都会の富裕な商家に生まれ育ったこともあり、古参兵などからずいぶん殴られたようです。

兄のひとりはニューギニアで戦死し、実家は空襲で焼かれてしまいました。
この戦争体験は、芸術家志望の繊細な青年のこころに深い傷を残したにちがいありません。
戦後まもない時期に制作された『孤独な鳥』は、傷ついた彼のこころを表現した作品ともいえるでしょう。

軍隊を体験した同世代の銅版画家・浜田知明(1917年生)は、その不条理さを直接的に告発する版画をつくりました。

いっぽう駒井は自分のこころの中を描くことで、戦争体験者の心情を普遍的に表現する方向へと向かったようです。

美術家の資質もさまざまです。

孤独な鳥展示

講演会が開催されました!

『駒井哲郎 1920-1976』展関連イベントとして、4月23日(土)に資生堂名誉会長をつとめられている福原義春氏による講演がありました。
福原さんは50年間にもわたって駒井哲郎の作品を集めてこられ、そのコレクションが今回、展示されています。
駒井哲郎の作品を集め始めたきっかけや、作品への深い思いなどを、展覧会の担当学芸員との対談形式で、熱く語って下さいました。
展覧会を見る上でとても参考になる、わかりやすいお話で、多くの方が熱心に聴講されていました。
ウィットに富んだお話もあり、場内でなごやかな笑いがこぼれていたのが印象的です。


4月30日の『東京新聞』夕刊・文化欄には、福原氏の「『駒井哲郎1920-1976 こころの造形物語』展に寄せて」が掲載されました。
大正以来のモダニズムの空気が駒井作品に流れているという新鮮な指摘をされていて、ハッとさせられました。

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4月30日(土)には、作家の堀江敏幸氏による講演があります。
堀江氏は「熊の敷石」で平成12年に芥川賞受賞、ほかにも多くの文学賞を受賞されている作家で、早稲田大学教授で、昨年秋に資生堂で開催された駒井展の図録に刺激的なテキストを寄せられています。
展覧会観覧とあわせたご来館をお待ちしています。

連載開始! 駒井哲郎展 ワンポイント鑑賞講座 その1

駒井哲郎が生まれ育ったのは日本橋室町のあたりです。
慶應義塾普通部時代、15歳のときに銅版画に興味を持って制作を開始した彼は、近所の隅田川やその周辺の河岸風景をモティーフにしていました。
ちゃっかり自分の家を風景に入れた銅版画もあります(出品番号2「河岸」)。

その頃の駒井の作品は、ホイッスラーやメリヨンの銅版画とよく似ています。
それは彼が、西田武雄という日本への銅版画の普及に努めた人のもとで、熱心にこういった西洋の版画の実物を眺めて勉強していたからでした。

現在、常設展示室のミニ企画『西洋版画の世界―駒井哲郎の視点』では駒井とかかわりの深い西洋の版画家の作品が見られますので、比較してみてください。

駒井展開催中、駒井作品をめぐるワンポイント鑑賞講座を連載してゆきます。
お楽しみに!

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初期作品が展示された駒井哲郎展会場入口付近の展示

常設展示
常設展示 向かって左がホイッスラー、右がメリヨンの銅版画

駒井哲郎展 村田館長によるトークがありました!

4月16日(土)に館長・村田哲朗が『駒井哲郎 1920-1976』の会場でスペシャルな解説を行いました。

館長は主に作品制作の背景について解説し、多くの方が熱心に聴いていらっしゃいました。
真中でこちらを向いている男性が館長です(↓)。
館長による解説は第II部でもあります(5月21日・土)。ぜひ、お出かけください。

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始まりました! 駒井哲郎展

4月9日(土)より『駒井哲郎 1920-1976 ―こころの造形物語―』が開幕しました。
10日(日)には学芸員によるギャラリートーク(展示解説)が行われ、大勢のお客様が熱心に聞き入っていらっしゃいました。
会期中はその他にもさまざまなイベントがあります。
ぜひ、お出かけください。

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