夏の暑さも峠を越え、早いものでもう9月です。
開催中の「諷刺画って面白い?」展の会期も折り返しを過ぎました。
今回ご紹介するのはウィリアム・ホガース『勤勉と怠惰』第11図「怠け者の徒弟、タイバーンで死刑になる」。
『勤勉と怠惰』は1747年に出版された銅版画集。
同じ工場に徒弟(住み込みで修行する職人見習)として入った二人の青年、ひとりはまじめな働き者で、もうひとりは遊び好きの怠け者。彼らの対照的な人生が12点の作品に展開していきます。
これは第11図、怠け者の末路が描かれます。

アイドルが向かう先には死刑台。執行人がパイプを吹かして待ちかまえています。
当時のロンドンでは死刑見物は人気の娯楽(!?)、立派な見物席がしつらえられ、最上段からはアイドルの到着を知らせる伝書鳩が放たれます。つめかけた観衆が画面狭しとばかりに描きこまれています。

兵士、野次馬、物売り、スリ、老若男女さまざまな人の中には、あまりの混雑に赤ん坊を取り落とす人までいます。
画面中央で赤ちゃんを抱いている女性が売っているのは、「アイドル、最期の言葉と告白」。死刑はこれからなのに、いったい誰が書いたのでしょうか?

そして画面の右隅には、嘆き悲しむ母親の姿が。
彼女はこの連作にくりかえし登場し、息子の更正を願いますが、それはかなえられませんでした。
一見すると雑然とした画面ですが、近くでていねいに見ていくと、人々の表情や動きの豊かさにひきつけられます。たくましい庶民の姿を描くホガースの温かいまなざしが感じられます。