芹ヶ谷だより

美術館スタッフが皆さまにお届けします。

2018年10月

特別ギャラリートーク「シュマイサーが訪ねた地・アーネムランド」においでください

オーストラリア北部アーネムランド。白人の入植がなかったことから、オーストラリアのなかでも先住民アボリジニの伝統的文化を色濃く残す地です。

1976年にオーストラリアを初めて訪ねたシュマイサーはアーネムランドに足をのばしました。この時からアボリジニ・アートに関心をもったのでしょうか、現代アボリジニ・アートの歴史において、シュマイサーは先住民アーティストに最初に銅版画技法を教えた指導者のひとりであることが指摘されています。

2010年、シュマイサーは東アーネムランドのブルーマッド湾で行われた、先住民美術家とオーストラリアの代表的アーティストによる共同版画制作プロジェクト「ジャルキリ」に参加しました。
http://www.nomadart.com.au/documents/DjalkiriFolioBoxWorks.pdf

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この体験から生まれた『イルパラ海岸のかけら』連作は、シュマイサーが最後の情熱を注いだ大作です。版画に手彩色とドローイングを加え、少なくとも15点のバリエーションを制作、本展ではそのうちの4点を展示しています。生命の喜びあふれるこの作品を見ると、翌年にシュマイサーが世を去ったとは信じがたいものがあります。それはアーネムランドという場所がもつ力から生まれたものだったのでしょうか?

11月4日(日)14時から開催する特別ギャラリートーク「シュマイサーが訪ねた地・アーネムランド」でお話くださるのは、文化人類学者の窪田幸子氏。現地の調査を通して、アーネムランドに暮らすアボリジニのヨルング族の研究をされています。アボリジニ・アートへの造詣も深い窪田氏に、シュマイサーの制作に最後の輝きを与えたこの地の魅力をお話いただきます。ぜひご参加下さい。



特別ギャラリートーク・ラダックを開催しました

 ご報告が遅れましたが、9月29日「特別ギャラリートーク・シュマイサーが訪ねた地」の第2弾「ラダック」を開催しました。講師は写真家で編集者の山本高樹氏。台風24号の接近が警戒されるあいにくの天候にもかかわらず、ラダックに興味をお持ちのみなさまにご参加いただきました。

ラダックでの取材をライフワークとされる山本氏は、この夏も現地を訪ねられたとのこと。ラダックの生活や人々を身近に知る山本氏ならではのお話となりました。
 
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インド北東部のラダック地方は、国境紛争のため外国人の立入りは1973年まで禁じられており、古くからの文化が残されていました。シュマイサーがここを訪ねたのは1984年。「この異世界がまだ違っているうちに、その壮大で感動的な姿を捉えるのに辛うじて間に合った」と当時出版された画集に書かれています。

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シュマイサーたちは荷物を馬に積み、ほぼ徒歩で6週間をかけこの地を巡りました。30年以上経った今日では自動車が走り、インターネットの利用も進んでいます。そんな現代の目で見ても、「そう、あそこはこういう場所だ」と感じさせる何か、その場所の「本質」みたいなものがシュマイサーの作品にはとらえられている、と山本さんはおっしゃいます。

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シュマイサーがこの地を訪ねたのは7月。標高の高いラダックの空気は澄み渡り、強い陽射しのなか、はるか遠くの景色までくっきりと目に映るのだそうです。そして聞こえてくるのは風の音。山本さんはそれを「風息」という言葉で表現されています。
「行こうと思えば意外と簡単に行けますよ」とのことですが、さていかがでしょうか?
Days in Ladakh: http://ymtk.jp/ladakh/

特別ギャラリートーク「シュマイサーの訪ねた地」第3回はオーストラリア・アーネムランドをとりあげます。シュマイサーが最晩年に訪ね、アボリジニのアーティストたちと共同制作を行った地です。この地域に暮らすヨルング族の研究をされている、文化人類学者の窪田幸子先生のお話です。ぜひご参加下さい!
 
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「版画工房の特別な一日」に是非ご来館ください。

ずらりと並んだ版画のプレス機や、制作中の様子をご覧になられたことはありますか?

当館1階には、本格的な版画の制作ができる、全国的にも珍しい公立の版画工房があります。

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11月3日(土・祝)には「版画工房見学 もっと近くで見てみたい! 銅版画が生まれるところ」と題した見学会を実施します。

②工房見学 ③小P1040460
(以前に実施した工房見学会の様子)

普段は廊下に面したガラス越しにしか見ることのできない版画工房の中にお入りいただき、銅版画の制作の様子をより近くから見学していただこうというイベントです。

当日制作を公開してくださるのは、当館の「版画工房・アトリエの一般開放」を利用して銅版画を制作されている方々です。

インクのにおい、銅版の光沢、版に向かう作り手の緊張感。

制作現場の空気を是非感じてみてください。

現代銅版画の巨匠・深沢幸雄氏が自ら制作した電動ベルソー「チンタラ十世」も間近でご覧いただけます!!

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(当館版画工房の『守護神』 電動ベルソー・チンタラ十世)


「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」展関連催事
版画工房見学 もっと近くで見てみたい! 銅版画が生まれるところ
日時  2018年11月3日(土・祝)11時~12時30分、14時~16時
会場  当館1階 版画工房 
対象  中学生以上
参加無料
事前申込不要
実施時間内は随時見学可能
混雑時はお待ちいただく場合があります。



黒崎彰氏による講演会「シュマイサーと日本」にお出かけ下さい!

1968年、日本の伝統木版を学ぶために京都に留学したシュマイサー。
しかし大学には適したコースがなく、指導者を求めるうちに、木版画家の黒崎彰氏に出会いました。

シュマイサーの資質を見抜いた黒崎氏は、木版の技法を直に教えるのではなく、
摺りや彫りの職人を紹介し、シュマイサーが彼らの技を主体的に吸収するよう導きました。
これを出発点としてシュマイサーはさらに交流を広げ、自分なりに日本文化を理解し、
取り入れ、自らの表現へとつなげていきました。

たとえばこれは『古事記』からヤマタノオロチの物語。

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シュマイサー芸術への日本の影響の大きさを考える時、黒崎氏との出会いがいかに大切なものだったかがわかります。ふたりの親交は40年以上にわたり続き、国際交流の面でも協力しあって大きな成果を残しました。

10月20日(土)14時から開催の講演会「シュマイサーと日本」では、黒崎氏が所蔵されるシュマイサー作品を実際にご覧いただきながら、シュマイサーの制作、そして日本とのかかわりについてお話いただきます。ぜひご参加ください!



特別ギャラリートーク・南極を開催しました

 世界を旅し、その経験から作品を制作したシュマイサー。彼が訪ねた地には、気軽には行かれない場所も多く含まれています。そうした場所を実際に訪ねた方を講師にお招きして、作品の前でその魅力を語っていただく企画が「特別ギャラリートーク・シュマイサーが訪ねた地」です。

10月21日の第1回に取上げたのは「南極」。講師は立川市にある国立極地研究所の橋田元氏です。観測のため南極を何度も訪ね、昭和基地での越冬も体験されている研究者です。

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まず講堂で、氷山はどのようにして生まれるかなど、南極について映像を交えてお話いただきました。研究所からご提供いただいた南極の氷も登場。グラスに入れてぬるま湯をかけると、氷が融けて、閉じ込められていた太古の空気がぷつぷつと音を立てます。
 

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シュマイサーが乗船したオーストラリアの砕氷船の航路や日程、作品に登場する基地や、作品に書きこまれた文章なども交えてのお話をうかがい、「シュマイサーが訪ねた南極」を感じたところで、展示室へ。

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展示室では作品を前にしたお話は、実際に行かれた研究者ならではもの。たとえばこの作品。空の色が赤いのに氷山が白いのは、太陽が低い位置にある遅い時間だからとのこと。

鳥の翼が風を切る音が聞こえるほどの静寂の中で、太陽の光によって色と形を刻々と変えていく氷山。太古の昔から、そしてこの先もずっと繰り広げられていく壮大な眺めを思い出しますとのお話に、南極の体験がシュマイサーにとって重要なものとなった理由が感じられました。

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たくさんのみなさまに最後まで熱心にご参加いただき、ありがとうございました。

南極に興味をもたれた方は、国立極地研究所の南極・北極科学館へ。研究者がそれぞれのテーマを分かりやすくお話される「サイエンス・カフェ」なども開催されています。同じ多摩地区にある施設です、ぜひお出かけ下さい。

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