芹ヶ谷だより

美術館スタッフが皆さまにお届けします。

2018年11月

シュマイサー展イベント報告:特別ギャラリートーク・シュマイサーの技法

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ご好評いただいたシュマイサー展の特別ギャラリートーク。
最終回の11月11日は銅版画家の小野修平氏に、シュマイサーの技法についてお話いただきました。

たくさんの方がご参加下さいました。
 
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今回の展示では、技法にとらわれず作品を見てほしいというシュマイサー自身のやり方に従って、キャプションに細かな技法は記載しませんでした。
「作品に集中して見ることができた」と概ね好評でしたが、「どうやって作ったのだろう?」と技法に関心をもたれる方も多かったことがうかがえます。

さまざまな技法がある銅版画。
エッチングやドライポイントなど、カタカナの名称もなんだかとっつきにくいですよね。
卓越した技術の持主と評されるシュマイサーの技法はさらに複雑です。

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シュマイサーの多色刷り技法について論文も書かれている小野氏。刷り見本をまじえた、たいへん分かりやすい解説をしていただきました!
版を複雑に組み合わせた多色刷りや、ドローイングや手彩色を大胆に加えた作品、シュマイサーは実に多彩な制作をしています。どうしてこうした方法を選んだのか、制作者の立場からシュマイサーの気持ちを推測する小野氏のお話は印象深く、手を動かすことでしか分からないことがあるのだと感じました。

4回にわたり開催した特別ギャラリートーク。
それぞれのテーマについて深い知識を有する先生方のお話は、参考になったという以上に、作品を見るうえでの新鮮な視点を開かせてくれました。
専門家の話を聞くのが大好きだったというシュマイサー。その気持ちがわかるような気がします。
講師のみなさま、素晴らしいトークをありがとうございました。

シュマイサー展イベント報告:特別ギャラリートーク・アーネムランド

「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」展は11月18日に会期を終了しました。
会期が終わりに近づくにつれて来場者が増え、多くの方にお運びいただきました。
どうもありがとうございました。

見逃してしまった、またはもう一度ご覧になりたいという方!
この展覧会は2019年4月13日から6月2日の予定で奈良県立美術館に巡回します。
ベストシーズンの奈良へ、ぜひお出かけ下さい。
なお展覧会図録は求龍堂から一般書籍として出版されており、書店などでご入手いただけます。

遅くなりましたが、イベントのご報告です。

11月4日の特別ギャラリートーク「シュマイサーが訪ねた地・アーネムランド」でお話いただいたのは、神戸大学国際文化学研究科教授の窪田幸子氏。文化人類学がご専門で、オーストラリアの先住民アボリジニの社会や文化を研究されています。アーネムランドを研究フィールドに長年調査を続けていらっしゃいます。

まず講堂で映像を交えて、アボリジニの歴史と文化についてお話いただきました。
 

アーネムランド1

アボリジニの各部族は、祖先から伝わる精霊の旅の話(ドリーミング)を受け継いでいます。それは彼らが暮らす土地と深い関わりをもつ物語です。
アーネムランドで行われた、先住民美術家とシュマイサーを含むオーストラリアの代表的アーティストによる共同版画制作プロジェクト「ジャルキリ」。この様子を映したビデオでは、ドリーミングに登場する貝や植物を前に、先住民の話に聞き入るアーティストたちの姿が紹介されます。

つづいて展示室に移動し、作品を前にギャラリートークです。
 

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貝や蟹の殻といった「海辺のかけら beach bits」はシュマイサーの作品に繰り返し描かれてきましたが、とりわけ最晩年の作品で重要なモティーフとなったように思われます。
ドリーミングにおいて貝や植物のひとつひとつがもつ意味を知り、「海辺のかけら」にもまた新たな意味が加わったのではないか、そんなことを考えさせられた窪田氏のトークでした。


黒崎彰氏講演会「シュマイサーと日本」

ヨルク・シュマイサー展の会期も残すところ数日、遅ればせながらイベントのご報告です。

Mr Kurosaki
 
10月20日に開催したのは、木版画家の黒崎彰氏による講演会「シュマイサーと日本」。
黒崎彰氏は日本を代表する木版画家で、版画史家としても多くの著作があります。
1968年に京都に留学したシュマイサーが、木版画の師を求めるうちに出会ったのが黒崎氏でした。シュマイサーに日本文化理解の扉を開いた存在といえるでしょう。
 
黒崎氏が注目したのは作品に書かれた文字。「日記」シリーズが示すように、画中に書かれる文章はシュマイサー作品の大きな特長です。

とりあげた作品は3点。
木版「Exile’s Letter(李白)から」とエッチング「韓国の旅」。どちらも1969年とごく初期の作品です。
  
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そして「日記とアンコール」(2007年)
 
無題

1969年作の2点は今回の展覧会には出品されていません。おそらく刷り部数も少ない貴重な作品です。
黒崎氏ご所蔵の作品を持って来られ、「版画は手に取って見ないと」と、なんと回覧!


回覧

「韓国の旅」に書き込まれているのは、地名や日付、文章もごくごく短いもの。
その後、文字が画面に占める割合は大きくなり、造形的な要素としても重要な役割を演じるようになっていきます。

そして文字である以上は、そこに記された内容にも意味があるはず、この文章は読まれることを前提にして書かれている、と黒崎氏は言います。その一例として「日記とアンコール」の文章の冒頭部を判読して下さいました!

アンコールワットを描いた作品の文章が「御所は素晴らしい秋の色に輝いている」で始まるとは意外です。シュマイサーが現地を訪ねたのは2003年ですが、この作品は2007年、京都で暮らしていた時期に制作されており、文章がまさに「日記」であることが分かります。この先を読み進めれば、制作の状況や作品にこめた思いなど、さまざまな事実が浮かび上がってくるに違いありません。

木版を学ぶために来日したシュマイサーでしたが、二組の版画集を制作したのちは、この技法に取り組むことはありませんでした。黒崎氏がその理由としてあげたのが、木版で文字を彫ることの困難さです。文字を重要な表現手段と考えるシュマイサーに適していたのは、線の表現であるエッチングだったのです。

版画史家でもある黒崎氏は実際の作品を丁寧に読み解き、わかりやすく論を進めて下さいました。それとともに強く感じたのは、それぞれの作品にむける細やかなまなざしです。おふたりの長い交友と、黒崎氏の温かな人柄がよくあらわれたご講演でした。

「ゆうゆう版画美術館まつり」でenjoy ! Art !

美術を愛する人々の交流の輪を広げることを目的に、
国際版画美術館開館30周年、友の会設立20周年にあたる今年度は
「 enjoy !  Art ! 」をテーマに10月6日(土)・7日(日)、美術館内と前庭で開催しました。
2日間とも多くのお客様でにぎわいました。

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前庭では「チャリティ・アートバザール」
「玉川大学による参加型アートイベント『トビタツ木ノ実』~夢が実る秋のトリカゴ~」
などを行いました。

チャリティ・アートバザール
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市内外のアート系団体が、自作の絵画・版画・陶芸・手工芸品・ガラスなどを展示・販売し、売り上げの10%を町田市社会福祉協議会に寄付します。


玉川大学による参加型アートイベント「トビタツ木ノ実」~夢が実る秋のトリカゴ~ 
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巨大な鳥カゴにつるされている袋の中から鳥のプレートを取り出し、木の実や木の葉で装飾。
実らせたい夢をカードに書いて鳥カゴに結びます。
参加者には玉川大学で開発された黄色いコスモスの種をプレゼントしました。
自然に親しみ、自然を拡散するためのイベントです。


講堂では
「桜美林大学による親子で楽しめるアートワークショップ『日本さん家のお隣さん』
~お隣さんのアートワークショップ~」などを行いました。 
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中国、台湾、朝鮮半島、ロシアの文化にちなんだ作品を作ったり、
民族衣装の試着体験や、
韓国やインドのすごろくで遊んだり。
異文化交流が楽しめるワークショップでした。


美術館内エントランスホールでは「木版画摺り体験」「ゆうゆうプロムナードコンサート」
「ポスターデザイン原画展示&表彰式」などを行いました。

木版画摺り体験
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友の会会員の指導のもと「多色摺り木版画」を体験。
子どもたちから大人まで楽しめる時間になりました。


ゆうゆうプロムナードコンサート~虹をかけて
Duo Iris(デュオ・イリス)
ヴァイオリン:真野 謡子(まの ようこ)氏  /  ピアノ:後藤 加奈(ごとう かな)氏
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ヴァイオリンとピアノの美しい調べが館内に響き渡り、
またひとつ芸術の秋が深まったかのようです。


ポスターデザイン原画展示&表彰式
デザイン審査委員長:浅井 竜介(あさい りゅうすけ) 氏
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「まつり広報用ポスター」に応募いただいた全作品を展示するとともに、
審査委員長による講評、各賞の授与に加え、指導者のご挨拶をいただきました。
 
美術館内アトリエでは
「キッズ・アートスペース~たった1つのマイバッグ!」を行いました。
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友の会が用意した様々な版や型紙の中から、
好きなものを選び
消しゴム版画やステンシルで
無地の布バッグに装飾していきます。
世界でたった1つの自分だけのマイバッグができました。

さて、美術館では今後とも楽しいイベントを行う予定です。
企画展「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅(会期:2018年11月18日まで)」
関連イベントだけでなく、
現在企画中のイベントもあります。
詳細が決まりましたらHPや
時々チェックしてみてください。
       



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