芹ヶ谷だより

美術館スタッフが皆さまにお届けします。

2019年08月

館長かわら版 その二

 明けて夏休みのまっただ中、美術館2階の休憩コーナーにも芹ヶ谷公園で水遊びする子どもたちの声が洩れ聞こえてくるようになりました。「畦地梅太郎展」と「インプリントまちだ」が始まってもう一ヶ月以上経ちましたが、来館される方の中には小中学生の姿も目につきます。

 先日、晩年の畦地のことを直接御存じのお二人の話をうかがうことができました。おひとりは、お孫さんにあたる畦地堅司さんで、31日(水)に展示室内で特別ギャラリートークをしていただきました。大勢お集まりいただいた畦地ファンに囲まれ、ポイントとなる作品を適宜取り上げつつ畦地の版画家としての活動をわかりやすく解説していただきました。個々の作品に関して実際に作家がどのように語っていたかを知るのは貴重な機会です。畦地についてにわか勉強の身にとって「目から鱗」的なことが盛りだくさんでしたが、一番意外だったのは、見ようによっては白いベビー服をまとった小児のようなことから人気のある「白い像」(1958年)が、畦地にとって‘山’そのものを象徴的に表現したものだと知ったことです。画面下部の黒い杭のようなものが森林を表し、その上にすっくと立つ白い像は森林限界以上の雪山を表象したものらしいのですが、山そのものを神体とみなす日本人の心性も反映したものかもしれません。話をうかがった後では、松林の上に雪を被った富士の峰が浮かぶ与謝蕪村の「富嶽列松図」とイメージを重ね合わせる自分がいました。

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 もうひとりは、当館の元学芸員の河野実さんで、3日(土)に「畦地梅太郎と町田」の演題でご講演いただいたのです。1981年の市立博物館での「創作版画の曙」展を機に畦地との交流が始まり、彼が当美術館の設立に大きな役割を果たしてくれたことなどをお話いただきました。

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 さて、「インプリントまちだ2019―田中彰」では、河野さんのご講演の日に、1階ホールに特設したアトリエで、田中彰さんの滞在制作を拝見しました。その日の制作開始直後で、まだお客さんがいなかったので、私も電熱ペンでの版づくりを少しだけ体験させていただいたのですが、木版画とはいいながら、彫刻刀とはまた違う版面の手応えが面白く、またペン先が版面を焦がすにおいが鼻に心地よく、どこかしらなつかしい感じがします。夏休みとあってお子さんがたの参加も多く、電熱ペンでの版画づくりにはまってリピーターとなった子もいるとお話される田中さんの嬉しそうな顔が印象的でした。河野さんのご講演が終わってホールに戻ると、特設スタジオの前には順番待ちの列ができていました。共同制作された版画は、順次、二階の企画展示室に作品として展示されています。その数もずいぶんと増えてきました。


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大久保純一(おおくぼじゅんいち 町田市立国際版画美術館館長)

「夏休み!大学生と版画体験」

暑い暑い夏休み。
美術館にはたくさんの子どもたちが来てくれています。
7月26日(金)には「版画体験イベント なぞってコロコロ」を開催。
女子美術大学 版画コースの学生が企画して準備、実施してくれたワークショップです。

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学生が用意したかわいいイラストの上に透明なフィルムを置いて色ペンでなぞります。

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「プレス機」という機械にフィルムと紙をおいて
コロコロとプレス機をまわしてみると・・・不思議!
紙に描いた絵がきれいに写りました!!


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カラフルなマスキングテープで厚いボードに貼って素敵な版画作品の完成です。

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大学生がつくったボディーシールをペタっと貼ってくれるコーナーもありました。

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秋に開催する『美人画の時代』展に出品される作品に
イタズラ描きをしちゃうコーナーも大盛況!!

とってもにぎやかで楽しい一日でした。
8月31日(土)にも版画体験イベントを開催します。
次回は「復刻浮世絵版木・摺り体験 2019こどもの巻」です。
詳しくはこちらをご覧ください。

みなさんの参加をお待ちしています。

畦地展関連イベント「山の歌声」

7月27日開催のイベント「山の歌声」。
「山の版画家」畦地にちなみ、展示室で山の歌をお楽しみいただきました。

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ご出演いただいた歌手の奥村浩樹さんは熊本出身、国立音楽大学の声楽学科ご卒業ののちローマで研鑽を積まれ、日本とイタリアで幅広い演奏活動を行っていらっしゃいます。

イタリアのベスビオ火山の登山電車を歌った「フリクニ・フニクラ」からスタート。朗々と響き渡る声であっという間に歌の世界へと引き込まれます。
山の歌のスタンダード「雪山讃歌」に「アルプス1万尺」、故郷熊本の「五木の子守唄」、映画で歌われた「エーデルワイス」。そして最後に、イタリア・オペラから「誰も寝てはならぬ」(トゥーランドットより)など2曲をお聴かせいただきました。

日本の歌では美しい歌詞を改めて味わい、イタリアの歌では高く広く響いていく歌声に、山男たちが暮らす山の大きさが思い浮かぶようで、バラエティにとんだ選曲でしたが、畦地作品に不思議なくらいぴったり合っていました。
あっという間の30分でした。


奥村氏

町田市在住の奥村さんは、なんと以前からの畦地ファン。
襟元にならぶ畦地の缶バッチも、楽譜ファイルに貼った絵はがきも、ご自分のコレクションからお持ちいただいたものです。
素晴らしい歌声を、ありがとうございました!

山の歌声」は9月15日にも開催の予定です。
畦地梅太郎・わたしの山男」展、そして同時開催の「インプリントまちだ」展でも楽しいイベントを予定しています。ぜひご来館下さい。


館長かわら版 その一

 因果なもので、自分の専門とするジャンルの浮世絵や江戸時代の絵画の展覧会を見にいくと、どうしても展示作品を分析的に見ようとしてしまいます。充実した展覧会だと当然学問的に得るものは多くて満足感は得られるのですが、それが幸福感と同じかというと必ずしもそうではありません。それと違って、たまに専門外の、たとえば西洋近代絵画とか近・現代の日本画などの展覧会に足を運ぶと、素直に作品を楽しんでいる自分に気づき、ちょっとした幸福感を感じることがあります。仮にも美術史家ならば、すべての作品を専門家的なまなざしで見つめようとすべきだろう、と同業者からお叱りを受けるかも知れません。ぼぉ~と見ていられるのも、学生時代にまじめに美術史の授業に出席しなかった賜物(報い?)かもしれません。

 さて、私の目で見た当館の展覧会の紹介をこのコーナーに書かなければならなくなりました。先代の村田館長は、すべての企画展でスペシャルトークをなさっていたとのことですが、不勉強な私にはとうてい出来ない芸当です。はっきりとは言われませんが、せめてその代わりにこのコーナーを書いて、というのが館の真意なのでしょう。

 というわけで、これから美術史家ではあるものの、いささか専門は外れた者の目を通して、当館の展覧会をご紹介していくことになります(浮世絵の展覧会の場合は、そうとは言ってられませんが)。よく言えばお客様方の目線と近いところから、悪く言えば「個人の感想です」のレベルで、展示に関する感想やおすすめの展示作品などに関して書いていくことになります。苦し紛れに自分の専門に無理矢理ひきつけて書くこともあるかもしれません。呆れずにしばらくおつきあいをいただければ幸いです。

 では、まずは第一回目です。現在、企画展示室では、ふたつの企画展が開催されています。前半の展示室に展示されているのは「畦地梅太郎・わたしの山男」です。

 畦地梅太郎は晩年を町田市鶴川で送り、1997年には町田市の名誉市民になりました。生前、市に約300点もの作品を寄贈いただき、当館設立に大きな後押しを頂いた館の恩人でもあります。今回の企画展は、畦地の没後20周年を記念するもので、当館としては久々の畦地の企画展で、待ち望んでいた方も少なくなかったのか、平日でも多くの方にご覧いただいております。

 畦地といえば、「山男」シリーズで有名です。登山雑誌の表紙を飾っていたことで山登り愛好家にも親しまれた作家で、週末登山家の私の義兄もよく知っていました。今回の展示はその「山男」に焦点を当てた作品で構成しており、第1章が「山男があらわれるまで」として、初期作から「山男」が描かれるまでの風景画時代を編年的に展示していますが、第2章「山男誕生」では、かならずしも時代順にこだわらず、山男とともに描かれているザイルやハーケンなどの持ち物などでくくって展示しています。

 【図1】
【図1】

 展示の重点は「山男」ですが、私は浮世絵の中でもとくに風景画を専門としてきましたので、導入部の第1章はやはり楽しく見ることができました。満州の街角を描いた「赤い壁」【図1】など、現地の空気感が伝わってくるようですし(中国東北地方に行ったことはないので、あくまで「個人の感想」ですが)、「白馬大雪渓」【図2】の暗い青をした空は、寒い冬山に登ったことのある人ならわかる、印象としての空の色なのでしょう。来館者のひとりが畦地の描く山の版画を見て、「ああ、山の空はこんな色なんだよね」としみじみとおっしゃったという話を、本展担当の学芸員から教えてもらいました。自ら山を歩き、自ら体験したことしか作品化できないと語っていた畦地ならではの空気感が作品には漂っているのかもしれません。

 【図2】
【図2】

 「山男」を描く諸作品に特定のモデルは無く、畦地は「わたしの心の山男」だと言ったと伝えられていますが、それだからこそ、山を愛し山に登る人たちに共感を得たのでしょう。素朴で不器用そうな表情をした山男の姿からは、彼だからこそ理解できる空気感が漂っているのかもしれません。

 【図3】
【図3】

 編年的展示ではないと申しましたが、それでもよく見ていると1970年代頃から色彩が鮮やかになっていくことに気がつきます。「鳥のすむ森」【図3】「ものの気配」(1975年)のような、どこか童話的な雰囲気の漂う作品もあり、山男でなくとも楽しめると思います。

 7月31日(水)には畦地のお孫さんに当たる畦地堅司氏の特別ギャラリートークがありましたが、8月3日(土)には生前の畦地と交流のあった当館元学芸員の河野実氏のご講演「畦地先生と町田」も予定されています。ぜひ足をお運びください。

 次の企画展示室は、若手アーティストが町田に取材した作品を発表する「インプリントまちだ」の第三弾、「インプリントまちだ展2019―田中彰 町田芹ヶ谷えごのき縁起」です。今回お招きした作家、田中氏は1988年生まれの、文字通り新進気鋭の木版画家です。

 【図4】
【図4】

 田中氏は、レザーや木などに絵を描くための電熱ペンを用いて木の面を焼き版をつくる手法を特色とされています。同じ木版画といっても、エッジを効かせた彫刻刀の線とはひと味違う、柔らかみが感じられる線と見受けました。展示作業の合間に少し田中氏と話をさせていただきましたが、その際に伝わってきた優しいお人柄としっくりくる作風です。今回の企画展の目玉である芹ヶ谷公園のエゴノキを版材にして製作した作品を展示するコーナー「きのからだをぬけて」【図4】では、雁皮紙に刷った版画が和紙に貼られており、軽くて柔和な独特の風合いを出しています。

 【図5】
【図5】

 田中氏はコーヒーにも強い関心を持っておられ(ご自身で豆を焙煎し、販売もされているそうです)、コーヒー産地を旅した体験をもとにしたコーナーがあり、そこに「コーヒーファーマー」と題して、氏と交流のあるフィリピン・ルソン島のコーヒー園の人々の顔を描く版画が展示されています。その周囲の壁面をコーヒーパペットと名付けたオブジェが取り囲んでいます【図5】。コーヒーの包装紙にさまざまな具象モティーフを刷り、それを袋状にして中にコーヒー豆を入れ密封する。豆から出るガスで袋は適度にふくらんで立体感を得ることになります。コーヒー農園の周囲に棲息する生き物がモデルなのでしょう、蝦や蟹、虫や鳥、魚などが造形されていて虫や魚、甲殻類などの生き物が好きな私には楽しい空間です。芹ヶ谷公園のエゴノキを掘り上げて製材し、版画にまで仕上げる記録映像が右手壁面のディスプレイで上映されているのですが、そこから鳥のさえずりや水の音が聞こえてきて、まるで森の中にいるような錯覚に陥ります。

【図6-1】【図6-2】
【図6】

 「森の中」といえば、会期中の金・土・日、館内に強化段ボール製の特設スタジオを開設し、その中で田中氏が来館者と共同で木版画製作をおこなっています(開催しない日もありますのでHPで要ご確認)【図6】。勤務の関係でまだ私は共同製作の現場には立ち会っていませんが、出来上がった円筒形のスタジオはまるで巨木の洞(うろ)に入るような感覚です。体験される方は山の中や公園に秘密基地をつくって遊んだときのような気持ちになられるかもしれません。

大久保純一(おおくぼじゅんいち 町田市立国際版画美術館館長)

暑い日はシェアサイクルで版画美術館に涼みに行こう!

2019年4月24日から始まったシェアサイクル社会実験
駐輪場(サイクルポート)の設置が進み、市内30箇所にまで増えています。
     
7月21日に、電動自転車シェアサイクルを使った市内名所めぐりをしてきました。
以下、体験レポートをご覧ください。
(前回の体験レポートはこちら)。


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木曽住宅バス停自転車駐車場のサイクルポートへ。
住んでいる近くにサイクルポートがあると、気軽に利用できますね!

木曽住宅サイクルポート


団地をぬけて、本日の最初の目的地、小山田神社を目指します。

団地をぬけて

小山田神社蓮

小山田神社周辺に到着。
ここは、知る人ぞ知る蓮の名所になっています。
透明感のある蓮の花が見られて、早起きのしがいがありました。


仮囲いアート1仮囲いアート3

続いて、建替え工事中の町田リサイクル文化センターへ。
工事現場の仮囲いにアート作品が描かれています。
アートの持つチカラの大きさを実感しました。

仮囲いアート2

町田市エコキャラクター「ハスのん」にも会えたのん♪



そして、最終目的地、町田市立国際版画美術館へ!

美術館前芹ヶ谷公園(版画美術館)サイクルポート

サイクルポートにシェアサイクルを返却したら、
涼しい館内へ。
「喫茶けやき」で-田中 彰 町田芹ヶ谷えごのき縁起 開催記念特別メニューの、
タピオカミルクティを飲んだあと、
畦地梅太郎・私の山男 展も堪能しました。


これからしばらくは、暑い日々が続きそうです。
電動自転車のシェアサイクルなら、汗だくにならずにサイクリングができます。
ぜひ、版画美術館に涼みにきてください。



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