あけましておめでとうございます。

 新年の美術館は、いろいろな展示が目白押しです。それぞれ会期は短いですが、1月10日からの中学校美術作品展にはじまり、24日からは小学校図画工作展、2月7日からは小学校書写展というように、「町田市公立小中学校作品展」が続きます。このブログがアップされる頃には終了していると思いますが、中学校美術作品展には感心させられました。入り口に並べられた、多感な思春期の内面がにじみ出しているような鉛筆画の自画像に圧倒されました。学校ごとに造形テーマを設定しているので飽きさせません。ミニ屏風や扇面という伝統的な絵画の画面のプロポーションや枠を生かした作品の中には、けっこう多くの古典作品を見て養ったのではと思わせるような、巧みな構図感覚を見せるものもありました。

小中展写真

 美術館企画の展示としては、「2019年度 新収蔵作品展」が充実しています。いずれも個人や作家本人からご寄贈いただいたものです。個人の方からご寄贈の、現代日本を代表するアーティスト奈良美智の版画10点は必見です。自分の周囲の世界に対する抑えきれない憤懣を湛えたような、あの睨み返す目を持つ少女たちが壁面に居並んでいます。

 個人的なおすすめは、小林ドンゲの銅版画です。昨年秋に佐倉市立美術館で開催された「小林ドンゲ展 ファム・ファタル(妖婦)」展を見て、古典文学を再解釈した作品に魅力を感じていたからです(ドンゲの多数の作品は、作家ご本人から佐倉市立美術館と当館などに分けてご寄贈されました)。長くうねる黒髪が、平安・鎌倉時代の白描絵巻を思わせる「散る花」がとりわけ良かったのですが、ソフトグランド・エッチングによる桜模様の地に、エングレービングの勁く、しかししなやかな線で、女の黒髪を表現した展示作「櫻川」(主題は、常陸国桜川の畔で生き別れた娘に再会する謡曲の「桜川」に取材したものでしょうか?)もおなじテイストの作品です。生命があるかのようにうねる長い黒髪が、川の流れをも象徴しているのでしょう。

新収蔵作品展

 ミニ企画展では、日本でも人気の高い「ルオーとシャガール―めくるめく挿絵本の世界へ―」。これについては、次回のブログで何か感想が書ければと思います。

 以上のように実に盛りだくさんの内容です。しかも、全館無料。見ないという選択肢はないでしょう。

大久保純一(おおくぼじゅんいち 町田市立国際版画美術館館長)