恒例の「町田市公立小中学校作品展」が始まりました。会場は御家族と思われる方々を中心ににぎわっています。今この原稿は中学の部(23日に展示終了)の作品を見て書いていますが、絵画、版画、工芸という多彩なジャンルで各校ごとにテーマや技法に工夫が凝らされており、膨大な作品点数ですが飽きずに見て回れます。鉛筆デッサンなどはびっくりするような再現力を見せたものもあり、いつものことながら中学生あなどるべからず、の感を強くしました。
今年の出品作の中で、透視図法(線遠近法)をテーマにしたものが数校あり、自身の中学生時代のことをふと思い出しました。美術の時間に校内写生の課題が出され、自宅にあった画集から得た視覚経験をもとに校舎を透視図法(らしきもの)を使って描き、感心するクラスメイト達に対してしたり顔でいたのです。ところが、見回りに来た美術の先生に、「上手く描いたと思ってるだろうが、間違ってるぞ」と消失点の不備を指摘され、絵筆を取られ上から描き直されてしまいました。クラスメイトの前で面目喪失、すごくへこんだという、ちょっと苦い思い出です。まさかその自分が、数十年後に北斎や広重の作品で遠近法云々などと書いているとは…。
中学校美術作品は23日まで。28日から2月6日までは小学校図画工作、2月11日から20日までは小学校書写になります。それぞれ期間が短いので、ご注意ください。
「新収蔵作品展」とミニ企画展「奈良美智と版画のなかの子どもたち」を同時開催中です。奈良の少女の絵は、正面をにらみつける表情が印象的で、私などはその怒りの矛先が自分に向けられているような錯覚を覚えて、どこか後ろめたさに似た感覚を覚えます。Fuckin‘ Politics! 地球温暖化に対して手をこまねいている自分たち大人に怒りをぶつける、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんの強い視線をつい連想してしまうのです。
オミクロン株の流行拡大が悩ましいですが、ソーシャル・ディスタンスを意識しつつ、どうぞ足をお運びください。
1月27
大久保純一(おおくぼ じゅんいち 町田市立国際版画美術館館長)
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