現在、フランスにあるパリ日本文化会館で、当館との共催展Les enfants de l’ère Meiji – A l’école de la modernité (1868-1912)(邦題・文明開化の子どもたち)が開催されています。
この展覧会は、2017年に当館で開催された「浮世絵にみる子どもたちの文明開化」展(足利市立美術館との巡回)を再構成したもので、パリで明治期の子ども浮世絵を本格的に紹介する初めての機会です。
子ども浮世絵のコレクションで知られる公文教育研究会にご協力いただき、当館とあわせて144点の作品が海を渡り、展示されることになりました。
展覧会ポスター
展覧会趣旨
明治時代は、西洋の文化・風俗との出会いにより日本の社会が大きく変わった時期にあたります。名称を「東京」へと改めた街には洋風建築や洋装の人びとが登場し、急速な近代化が進められました。子どもの生活も例外ではなく、西洋式の学校教育が導入されるなど、今日へと繋がる新たな「学び」のかたちが模索されます。一方でまだ裏通りには江戸の香りが残っていた時期。昔ながらの「遊び」の世界も、彼らの生活を鮮やかに彩り続けました。本展では、新旧の共存する19世紀後半の子どもの「学び」と「遊び」を、色彩豊かな浮世絵を通して紹介します。
浮世絵には風景画や美人画といった鑑賞性の高い作品のほか、本展で紹介するような「教育錦絵」や「おもちゃ絵」など実用性に富んだ作品も多数制作されました。今日紹介される機会の少ない分野ですが、当時の子どもの日常やその成長を見守る大人たちのまなざしを今に生き生きと伝える貴重な資料です。
未来への希望をのせた教育錦絵や、夢を育むおもちゃ絵や物語絵など、約140点を展示。明治期の日本の好奇心を身近に感じていただく機会となれば幸いです。
3月後半、作品輸送および展示作業のため当館担当者がクーリエとして渡仏しました。渡航にあたっては、企画当初から新型コロナウイルスの影響が懸念されていましたが、それに加えてロシア、ウクライナ情勢の影響も避けられず、直前まで調整が続けられた末にパリ行きが決定したのでした。
現地に到着してみると、パリはあたたかく、ここちよい春が訪れていました。パリ日本文化会館はエッフェル塔の目の前、ジャック・シラク河岸にあります。
館内2階にある展示室は、すでに壁塗りが終わり、展示ケースも設置され、作品が展示されるばかりの状態。ここに日本から到着した作品が運び込まれてゆきます。
作品は今回、やむを得ず通常よりも長い飛行時間を経てパリにやってきました。開梱した作品を一点ずつ念入りに点検し、展示してゆきました。
展示構成
プロローグ 明治・日本へようこそ!
1章 浮世絵で“学ぶ”
2章 浮世絵で“遊ぶ”
3章 子どもたちへのまなざし
エピローグ ビゴーのみた日本
こちらが完成した展示室です!
空間構成は、子ども時代のノスタルジーを想起するもの、そして新たな時代(文明開化)を照らすシンボルとして「ランタン(灯籠)」がテーマになっています。
基調色となる深い紺色や淡いグリーン、展示台のイエローは、いずれも作品に使用されている色から取られているそうです!完成した壁面をみて、作品がとても自然に馴染んでいることに驚きました。
このようにして、無事に展覧会が開幕したのを見届けて帰国しました✈
展覧会は5月21日(土)まで開催しています。
展覧会情報(※当館での展示ではありません)
(1) 展覧会名 Les enfants de l’ère Meiji – A l’école de la modernité (1868-1912)
邦題・文明開化の子どもたち
(2) 会期 2022年3月30日(水)~2022年5月21日(土)
(3) 会場 パリ日本文化会館 展示ホール
(4) 主催 独立行政法人国際交流基金パリ日本文化会館、町田市立国際版画美術館
(5) 企画構成 町田市立国際版画美術館
(6) 特別協力 公文教育研究会
(7) 協力 日本航空株式会社
(8) 入場料 一般5€、割引3€
★詳細はパリ日本文化会館のホームページをご確認ください。
https://www.mcjp.fr/ja/agenda/les-enfants-de-lere-meiji
ちなみに、このパリ展の凱旋展として、2022年7月13日よりミニ企画「文明開化の子どもたち―浮世絵に描かれた遊びと学び」が開催されます。ちょっと遠くてパリには行けないな、という方は、ぜひこちらをお楽しみに!