ついに地球が壊れたんじゃないかと思うような猛烈な暑さが続きます。日中、とてもエアコンなしでは過ごせたものではありません。さりとてエアコンを使用すれば地球温暖化促進に加担しているようで、私自身は自宅にいるとき、スイッチを入れることに後ろめたさも感じたりします。もちろん、命にかかわる暑さなので、躊躇する場合ではありませんが(離れて暮らす長女からは、老親がちゃんとエアコンを使っているか、心配して確認のメールが来たりします)。
そんなとき、美術館にいくのもの手かな、などと考えたりします。美術品に囲まれた静かで涼しい館内で日中を過ごすのは悪くない対処法です。何年か前にこのコーナーでも書かせてもらいましたが、美術館巡りをする人は長生きするとの調査結果もあるようです。
現在当館で開催中の「版画ってアートなの?」は、夏休みに合わせてお子様がたのご来館を意識した構成になっていますが、これってアートなの?、版画なの?、と大人でも考えさせられる作品が多数展示されていて、実は結構深い内容です。このホームページの展覧会案内をご覧いただければ、ずいぶんいろんな作品が出ていることが伝わるかと思います。毎週水曜日と土曜日はフリートークデーとさせていただいておりますので、ご家族連れでぜひお越しになり、アートや版画の常識を超えた多様な作品について、いろいろ意見を交わしながらご覧いただくもの一興です。
私のおすすめは、ヴィクトル・ヴァザルリ(1907-1997)がバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」に合わせて制作した作品を展示したコーナーです。ヴァザルリは幾何学的な構成にもとづく抽象画で知られますが、この作品集はバッハの曲をレコードで聞きながら鑑賞するという仕掛けで、緻密な計算のもとに造形された画面が、バッハの整然とした構築的な曲調とよくマッチしています。名曲に包まれ、しかもその曲に合わせてつくられた造形美術を鑑賞するというのは、贅沢極まりない体験でしょう。本展では大音量ではありませんがCDで曲も流していますので、疑似体験は可能です。
私個人はチャイコフスキー、ラフマニノフ、シベリウスなどの哀切感豊かで流れるような調子の曲が好きですが、もしも後期ロマン派やその流れを汲む曲に合わせたら、どんな画面になるのだろう、と想像しながら見入って(聞き入って)いました。

ヴァザルリのバッハコーナー