特集展示「ミロとタピエス―戦後スペインの渦 1945-1980」を開催中です。ミロとタピエスを軸に、戦後スペインで活躍した作家たちの版画を展示しています。ミロは私が好きな作家ですが、あくまでも個人的な感想を書いてみたいと思います。
ミロの作品が音楽的だということはよく言われています。作家自身、絵画の中に音楽を探し求めていたという意味のことを語っていますが、画面の中に配置されたさまざまなモチーフからはリズムのようなものを感じ、原色を主体とした鮮やかな色彩と不思議な調和を見せています。画面の背後で音楽が奏でられているような錯覚にとらわれることもあります。もちろん、荘重なドイツ音楽ではなく、かろやかなフランス音楽です(ミロはスペイン人ですが)。
本展に出ているリトグラフ「ノクターン」はまさに題名から、画面が音楽を奏でていることを物語っています。ただ、ノクターン(夜想曲)というよりは、ジャスのような感じを受ける楽しい画面です。

ジョアン・ミロ 『デリエール・ル・ミロワール』(第57-58-59号)より《ノクターン》 1953年6-8月、リトグラフ、当館蔵
© Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2026
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もちろん、題名には謡っていませんが、私は「日曜日の招待者 Ⅱ」にも音楽を感じます。一見、出鱈目に引き重ねた幼児の落書きのような曲線でできた画面ですが、題名にあるように、休日にホームパーティに招待された人々が、ラジオから流れる音楽に合わせて踊っているようなリズムを感じさせます。そうした目で線を追っていると、不思議なもので左端の曲線のかたまりが楽譜のト音記号のように見えてきました。こちらは画像をウェブサイトに上げておりませんので、ご自身の目でお確かめください。
と、楽しげなことを書いてきましたが、展覧会の副題にある1945-1980のスペインは、フランコ独裁の時代とほぼ重なります。抑圧的な体制の下で、芸術家たちがそれぞれの手法で抵抗の精神を作品に込めていたことを示す、というのがこの展示の眼目のひとつでもあります。その意味で、幕末・明治の風刺画を多数展示した同時開催中の企画展「うき世のたわむれ:笑いつづける浮世絵と幕末明治の渦」と通底させているのです。
