ネタバレあります。映画を見る予定の人は読まないで下さい。


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日本軍の指令部の一番偉い人、矢野中将(石坂浩二)その命令は下に伝わる‥‥‥で、撃墜した筈の機体と捕虜を捕えに行く『捕虜は適正に処理するように』‥‥‥この命令を受けた下の人達‥‥結局命令により選び出された豊松とあのかばってあげていた人の二人。


〇‥これね、捕えた、生きている捕虜は国際条約により危害を加えてはいけない‥‥取り決めになっているんですよね。なのに‥。

はりつけにした捕虜を銃剣で刺せと命令されるんです。

国際条約は二等兵に分かっていなかったのは仕方がないけど、上の人には分かっているはずなんです。勿論中将にも‥‥中将は『適正に‥』と言った命令が中途半端であったことは自覚していた‥‥『‥適正に』と一呼吸、言いよどんでいます。

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そして終戦。復員した豊松は理髪店で出征前と変わらず仕事をしています。

そこへ、MPのトラックがやって来て、豊松を連行していきます。

何が何やら分からないまま‥‥。

追い掛けるケンボウと房江‥房江のお腹にはもう一つの命が‥。

〇‥泣きますわ‥‥ケンボウ役の男の子、うまいです。何気無い場面も、泣きの場面も‥‥〇


巣鴨プリズンに収容される豊松。

軍事裁判にかけられる。状況を聞かれ答えたりしますが、通訳が裁判官との間に立って双方の話を訳すんですが、裁判官自身が激高したり、回りの軍人があざ笑ったり、まともな状態で受けている裁判じゃないです。

それに、裁かれているのは日本人で、通訳はアメリカ側からの人と思われる。だから英語が全く分からない豊松には、通訳の言っている事を普通の精神状態では聞けない‥‥だから受け答えが、的を得ていない‥‥。

判決を受ける時、地位が上から順に、絞首刑→終身刑→重労働と段々軽くなっていく罪に、末端の二等兵は『期待』するわけですが、その期待はもろくも打ち砕かれ‥‥‥

『絞首刑』を宣告される。
監房に収容される豊松は大西(くさなぎ君)と同室になる。

話しの中で『前は独居房だったが、自殺者が多いため二人部屋になった』
部屋は三畳見当。流しの上に板を被せ机兼用、椅子つき。と、トイレがある。そこで二人分の布団を敷いて寝る‥‥ん、狭い‥‥。

『毎週木曜日、朝食後、迎えに来られ房を換わると次の日の明け方処刑される』
大西はずっと聖書を読んでいる。木曜の朝は他の部屋からはお経の唱和がある。
次の朝が木曜日だった。

足音が‥‥通りすぎ、『最近からかっているような‥』という大西の言葉。

と、また足音が、部屋の前で止まり向き直る。

『ミスター・オオニシ』と呼び出され、連れていかれる時、他の部屋からは彼に対する感謝の言葉が聞こえる‥‥。

この大西役のくさなぎくん、自然体で、淡々と豊松に話を聞かせる訳ですが、たった一晩で、豊松に覚悟をさせたかの様でした。

次は笑福亭鶴瓶さんが同室になります。

収容者は、一日一回運動がある‥‥部屋から出て整列の時、矢野元中将は、豊松を発見、何とか話をしたいと近付くが‥‥。

そりゃあね、自分が死刑を宣告された原因はこの人の優柔不断な言い回しにより、なんだから話もしたくない、顔も実は見たくないだろう、と思います。

でも、まあ鶴瓶さんの意見も聞いて、まずは豊松達の部屋へ来て、矢野は煙草を勧めたり、また豊松は矢野の伸びた髪を刈ったりする。

また、矢野の部屋で昔話もしたり、纏わる歌(よさこい)を歌ったり。

限られた時間を、生きている日を共有する二人、お互いの気持が近付いたでしょうか。

鶴瓶さんは『マッカーサーへの直訴状』を英文で書いています。そして豊松に、『あんたも書きなはれ、それに助命嘆願書に署名 を付けたらなおええ』と教える。

矢野の部屋に来る『キョウカイシ』お寺の住職さんや教会の神父さんですが。
上川隆也さんが演じています。
彼が、豊松の状況を見てふにおちない感じを抱き、高知の房江に手紙をくれる。
豊松は自分が死刑になることを家族に知らせていなかった‥‥。

驚いた房江は、ケンボウとナオコを連れて、丸二日かけて巣鴨プリズンに着き、面会室で豊松に会う‥‥。

この場面、いいです。皆が‥‥。


面会にきた房江に『署名を集めたら‥‥ 』という話をする豊松。

高知に戻った房江は一生懸命署名をしてもらう為に奔走する。

最終的に200人の署名を集めるんですが、田舎の事で、なかなか署名などしてくれない、それを、何度も行って粘り強く頼んで‥‥。

嘆願書と署名が集まって、準備は出来て。

近頃、処刑が無くなり、もしかして、と期待を抱く‥‥話をしていた日、豊松は部屋替えと言われて連れていかれる。その時点では『もしかしたら罪が軽くなったかも』と豊松も皆も思ったみたい。


刑の執行が決まった‥‥その日が木曜日だった。

明日の朝には処刑される。茫然自失の豊松はキョウカイシの話も耳に入らない。

夜になり礼拝堂で晩餐と称してキョウカイシの上川さんがワインを勧める。

ワインを2回お代わりする豊松。上川さんは『今度生まれ変われるなら何になりたい?』と聞く。豊松は自分の何にもいいことなしな貧乏だった半生を話し、『大金持ちの息子に生まれたい』と話す。

部屋へ帰り、暗闇の中。月光か、サーチライトか、の青い光が時折入る部屋の中で、鬼気迫る表情(特に目が‥‥コワイ‥‥)で家族に宛てた手紙を書く。

明け方、刑場へ歩いていく。絞首台を見る、親しくなった看守の唇が震えている‥‥。
自分で足を引きずりながら階段を上る、手に持っていた家族の写真、目隠し頭巾を被せられ縄をかけられ‥‥‥。

厳しい‥‥‥。


高知の南の端の豊松の店には新しい理髪台が運び込まれていた。
豊松が帰ってくる事を信じて‥‥。


処刑された遺体は遺族には渡されない‥‥渡されるのは髪や爪の類だけらしい。
遺骨もないのに、死を受け入れなければならない戦犯の遺族って‥‥‥。

細かいこと(経過)を喋っても分かっているもらえないと思わせられる軍事裁判。相手国側の通訳だけの法廷。せめて、自国側にも通訳を充ててくれてもよかったんじゃない?

明治以来、天皇陛下の為に戦ってきた国民は、上官の命令は天皇陛下の命令と同じという、植え付けられた思想。戦犯に値する事をしていなくても罰される法廷。

命令を伝達したものが軽くて、直接手を下した者が重罪に問われる。

市井に生きる人を勝手に戦争にかりだしておいて、責任をその人達に押し付ける、全くもって日本という国は戦争と言うものに名を借りて、とんでもない犠牲を国民に強いた酷い国だった‥‥。

いや今も、『官』ならば何をしても許される、と勘違い・思い違い・心得違いをしている人達の多いことか。

戦争だけじゃない、日本という国を運営している政府も付属機関も、もう一度システムや意識の構築をし直しをした方がいいと思う。

戦争には二度と加担してはならない。しかし、止むにやまれぬ戦争をしなければならなくなった時、人はどうするのか‥‥。


考えさせられる映画になった。