既にこのブログでも触れているように、泉北高速鉄道を運営する大阪府の第三セクター・大阪府都市開発株式会社(OTK)の株式売却について、審査の結果、優先交渉権がアメリカの投資会社であるローンスター社が獲得しましたが、その後、次点となった南海電鉄の経営提案で、現在の運賃に対し乗継で80円の割引を行うということが分かり、入札額が高いものの利用者に対する割引額が南海に比べて低いローンスター社への売却に対する是非が、大阪府議会で議論されています。

この府議会での承認が得られなければ、大阪府が保有するOTKの株式を売却することができないため、府議会でも徹底的な議論が行われるものと考えられます。
そんな中、私がもう一つ気にしていたOTKの株式売却益についての報道が、読売新聞でありました。
泉北高速外資売却 値下げ額で維新に波紋 : 大阪 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

個人的に注目した部分はこちらです。
松井知事は「OTKは府民全体の財産で、同線を全く利用しない府民もいる。売却益が高くなる方を選ぶのは当然だ」と説明している。49%の株式を保有する府の株式売却益はローンスターの場合383億円だが、南海の場合は353億円となるからだ。
府は売却益を基金に積み立て、北大阪急行や大阪モノレールの延伸などの整備に充てる方針を示している。


気になる点とすれば、「OTKが府民全体の財産」という割には、この売却益が「北大阪急行や大阪モノレールの延伸などの整備」のための財源に充てられる点でしょうか。
大阪モノレールの延伸は、具体的にはこちらでご紹介した門真市から近鉄けいはんな線・奈良線に接続させる計画のことでしょうし、北大阪急行(北急)の延伸は、現在の千里中央から北進し、箕面市内まで延伸計画のことだと思われます。
北大阪急行電鉄 - Wikipedia

これらの両事業とも、公共交通の整備という点では必要な路線というのは確かなのですが、では、府民全体の財産であるOTK株売却益を府民全体に還元するという観点で考えると、果たしてこれらの両事業に充てることに理解が得られるのか、という点では疑念を抱かざるをえないと思いました。

さらに言えば、泉北高速鉄道沿線を含む大阪府南部の地域では恩恵を受けるどころか、OTK株の売却先が南海であれば受けることができたであろう割引額が抑えられることにもなり、プラスマイナスゼロどころか、マイナスが大きくなるのではないか、という考え方もあり得るでしょう。

個人的には、「府民全体の財産を売却する利益を府民に還元する」というのであれば、大阪府の北部や東部に存在する北急・大阪モノレールの延伸の財源にするよりも、計画はあれどその実現が未だに進まないなにわ筋線建設への財源にするほうが、よっぽど府民の理解が得られるのではないか、とも思いました。
「なにわ筋線」のルートから考えると、大阪府北部のみならず南部の住民の大きな利益を得ることができるでしょうし、それこそ府全体の発展に寄与できるものと考えられるのですが、何故かこういう案が出てくることがなく、ある意味局地的な延伸区間が具体的に出てくるあたり、別の意図があるのでは、と窺ってしまう向きもあるのかもしれません。

ともあれ、府議会では過半数を占めている大阪維新の会でさえも党内で意見が分かれているようですし、これからの府議会での議論を見守り、その結果についてもまたこのブログで取り上げていきたいと思っています。

泉北を外資に売って稼いだ利益は、泉北沿線とは全く縁のない北大阪急行などの延伸につぎ込まれる: たべちゃんの旅行記「旅のメモ」
泉北高速鉄道売却騒動: かにうさぎの部屋


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