このブログでも幾度もご紹介しているように、JR北海道では地域の人口減少や他の交通手段との競合に加え、安全最優先の鉄道事業を運営するための投資が求められていることなどから、厳しい経営環境に置かれています。
そんな中、去る2016年11月には同社単独で維持することが困難な線区を公表し、その後地域の関係者と協議を行ってきています。

これらを受けて、国土交通省では、JR会社法(旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(※))第13条第2項の規定に基づき、経営改善に向けた取組を着実に進めることを命ずるとともに、同社の経営改善に向けた取組及び関係者による支援・協力について公表しました。
(※)旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に対する法律 第13条第2項:
国土交通大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、会社に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。


報道発表資料:JR北海道の経営改善について - 国土交通省

上記発表資料よると、監督命令及び支援等の内容は以下の通りです。

●経営改善に向けた取組・・・着実に進めるようJR会社法に基づく監督命令を発出
北海道新幹線の札幌延伸の効果が発現する2031年度の経営自立を目指して、以下をはじめとした徹底した経営努力を実施。
・非鉄道部門も含めた収益の最大化
・新千歳空港アクセスの競争力強化
・インバウンド観光客を取り込む観光列車の充実
・北海道新幹線の札幌延伸に向けた対応
・JR貨物との連携による貨物列車走行線区における旅客列車の利便性の一層の向上及びコスト削減
・経営安定基金の運用方針の不断の見直しを通じた運用益確保
・JR北海道グループ全体を挙げてのコスト削減や意識改革
・地域の関係者との十分な協議を前提に、事業範囲の見直しや業務運営の一層の効率化

<事業範囲の見直しについて>
・鉄道よりも他の交通手段が適しており、利便性・効率性の向上も期待できる線区
→地域の足となる新たなサービスへの転換を進める

・利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区
→2019年度及び2020年度を「第1期集中改革期間」とし、JR北海道と地域の関係者が一体となって、利用促進やコスト削減、実証実験や意見聴取などの取組を行い、持続的な鉄道網の確立に向け、2次交通も含めたあるべき交通体系について、徹底的に検討を行う。
第1期の検証を行い、着実な取組が行われていることを前提に、2021年度から2023年度までの「第2期集中期間」に移行し、最終年度には総括的な検証を検証を行う。

・JR北海道の経営計画等に盛り込まれた取組について、四半期ごとに国交省鉄道局とともに、検証し、情報を開示する。

●関係者による支援・協力
・JR北海道の徹底した経営努力を前提に、経営自立までの間、国・地方自治体、関係者等が必要な支援・協力を実施。
・国の支援は、根拠となる法律の規定に付された期限内の2019年度及び2020年度の2年間で、以下の内容を実施。
(1)「利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区」における鉄道施設及び車両の設備投資及び修繕に対する支援
(※)地方自治体等からも同水準の支援が行われることが前提。また、道内自治体の厳しい財政助教を踏まえ、地方財政措置を要求
(2)貨物列車走行線区における貨物列車の運行に必要案設備投資及び修繕等への支援
(3)青函トンネルの維持管理への支援
(4)経営基盤の強化に資する前向きな設備投資への支援

総額(2年間)で400億円台で、(1)〜(3)は全額助成、(4)は1/2助成、1/2無利子貸付

・2021年度以降は、JR北海道及び地域の関係者の取組の着実な進展を前提に、国の支援を継続するため、所要の法律案を国会に提出スことを検討。

mlti_JRhokkaido
▲JR北海道の経営改善について(http://www.mlit.go.jp/common/001247327.pdfより引用)


その他詳細は、上記発表資料をご覧下さい。


JR北海道の経営改善については、広大なエリアでありながら利用者の少ない線区が非常に多いこと、そして極寒地であるが故のコスト増要因など、もとより単独での運営が困難な線区も多々あります。
一方で、各線区の状況をみると、鉄道以外の手段が適している線区もあれば、鉄道としての維持も選択肢にあるものの、その維持費用を捻出するための仕組みが必要な線区もあります。

今回の国土交通省の発表内容では、「鉄道以外の交通手段が適している線区」(輸送密度200人未満の線区が想定されます)では新たなサービスへの転換を進め、また「利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区」(輸送密度200人〜2,000人が想定されます)では、来年度・再来年度の2年間で持続的な鉄道網の確立に向けて、JR北海道と地域が一体となって徹底的な検討を行うことが求められています。

「求められています」と書きはしましたが、これはJR会社法に基づく監督命令であり、これに反する場合には、同じくJR会社法で以下の通り罰則規定が設けられています。
旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に対する法律 第20条:
次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした会社の取締役、執行役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員又は監査役は、百万円以下の過料に処する。
(略)
八 第十三条第二項の規定による命令に違反したとき。


仮にこれらの改善命令が実現できなかったとして、JR北海道の取締役等が百万円以下の過料に処せられるかどうかは分かりませんが、要は、それほどまでに重たい命令が発せられているという事実に留意しておくべきではないかと思われます。


また、関係者による支援において、国の支援メニューが提示されています。
これは2020年度までの2年間に限ったものとなっていますが、それ以降の支援は国鉄清算事業団債務等処理法をはじめとした法律の改正が必要となってくることから、その時点での取組状況を見た上で、当該改正を実施することを検討するものとしているため、今回のメニューでは2020年度まで、となっているものです。

メニューの内容では、総額で400億円台(年間200億円台)となっています。
青函トンネルの維持管理や貨物列車走行線区の設備投資・修繕は、国の全額助成となっていますが、「利用が少なく鉄道を維持する仕組みの構築が必要な線区」における施設・車両等の設備投資・修繕については、国の全額助成としているものの、地方自治体等からも同水準の支援が前提となっています。
この支援割合ですが、下記リンク先にあるような国の実施する他の地域鉄道に対する支援メニューを見ても、国の補助率は1/3が多く、今回のような地方自治体も同水準の支援が前提、すなわち1/2の支援というのは、ある意味手厚いものかな、とも感じます。
参考:鉄道:地域鉄道に対する国の支援制度 - 国土交通省

また、道内自治他の厳しい財政状況を踏まえ、地方財政措置を要求しているとしていますが、これは地方自治体が支援する額について、地方交付税の需要額に算入する措置のことで、これが認められると一定程度の地方交付税の増額、すなわち自治体の実質的な負担減も図られるという、これまた、他の地方鉄道維持に比べると手厚いものといえるかも知れません。


国としては、かような支援メニューを用意し、JR北海道の経営改善に向けた取組を行うこととしていますが、この命令という形を通じて、沿線自治体に対しても、もはや鉄道より他の交通手段が適している線区には新たなサービスの転換、すなわち鉄道の廃止を進めるよう促している点が見えてきます。
また、「維持する仕組みの構築が必要な線区」についても、自治体も財政支援という点で応分の負担を行う制度設計としています。

これらのことから見えてくるのは、やはり沿線自治体が線区維持をどこまで本気に考えているのが問われているのではないのか、というところでしょうか。
この点については、JR北海道の経営問題が浮上した頃からずっと言われてきたことですが、道や市町村が自ら明確な方向性を出せず、何かと言えばJR北海道の自助努力をひたすら求め続けた結果、未だ同じ問題で堂々巡りしている、と言えなくもないのではないかと思われます。

ごく一部の自治体、例えば夕張市では早々に方向性を示し、路線廃止後の新たな地域公共交通の姿を示し、今はその転換を待つ所までにたどり着いていますが、その他の自治体では残念ながらそこまでに至る道筋も見えておらず、そのスピードの遅さに国が業を煮やした、そして監督命令という形でJR北海道に命令するものの、実質的に地方自治体に結論を早く出すよう促した、とも捉えることはできなくもないのかな、とも感じました。


ともあれ、来年度・再来年度の二年間で、輸送密度200人未満の線区では鉄道からの転換、そして200人以上2,000人未満の線区では路線維持の仕組みが構築されるか、もしくは構築できずに路線の存廃の行く末が不透明となる、といった、線区ごとの将来の姿が見えてくるように思われます。

その結果如何では、道内に数多く残る、いわゆる「北海道らしさ」を実感できる路線が相当数廃止されることもあり得るだけに、そうなる前の今時点での北海道の鉄道路線に乗っておくことも、将来貴重な体験になり得るのかも知れないな、と感じたりしたので、鉄道ファン的には、これから北海道を旅行する際の記録や記憶が貴重なものになるかも知れない、そういう意識でじっくり観察して欲しいな、とも感じたニュースでした。

JR北海道に国が400億円支援へ 「監督命令」も発出、新幹線札幌開業後の経営自立目指す | 乗りものニュース
国交省、経営悪化のJR北海道の自立を支援 2年間で400億円投入 | レスポンス(Response.jp)



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