2017年11月20日

糸 60

オレの前からハニがいなくなってから付き合った女は3人。
最初の女との出会いは、ヘラと別れてそれほど経っていない時だった。
ハニはもういないと分かっていたのに、社会科学部にハニがそこにいるような気がして何度もさりげなく近くを通っていた。

「オレは何をやっているんだ・・・」
向こうから歩いてくる人に気が付かなかった。
「きゃっ!」
ぶつかった女性は、スンジョの身体に跳ね飛ばされるように後ろに倒れそうになった。
それを支えようと手を伸ばした時その細い左腕にスンジョは傷跡を見た。
「ありがとうございます。尻餅をつかなくて助かりました。」
スンジョがその傷を見ているのに気が付くと、サッと手を引いてセーターの袖を伸ばして隠した。
立ち去るその女性を呼び止めたのは、傷ついたハニも同じ事をしていたかもしれないと思ったから。

「あの!」
「はい?」
「時間がありましたら、どこかで話しませんか・・・」
古臭いナンパの台詞を言うとは思ってもいなかったし、その女性が付き合ってくれるとも思わなかった。


「その人、奇麗な人だった?」
「きれいな人ではないな。どちらかと言うと、悲しそうな女性に見えた。」
「悲しそうな?」
「その顔がハニと似ていて、その後何度か会っているうちに好感を持つようになった。」


「スンジョ君!待った?」
「いや。行こうか・・・」
彼女の名前はチョン・イスル。
社会科学部の講師の助手をしていた25歳の年上の女性だった。
手首の傷は、恋人に捨てられた時にショックのあまり自分の身体を傷つけて命を絶とうとした跡だった。
イスルはオレと付き合って行くうちに自分の身の上や、捨てた恋人の事を話してくれた。
でも結局彼女との交際期間は続かなかった。
田舎の親から早く結婚をしてほしいと言われて、学生のオレは彼女からの別れ話を受け入れるしかなかった。


「その人の事をスンジョ君は好きだったの?」
「好きだったと思う。オレが彼女よりも年上だったら結婚をしてもいいと思っていた。それは・・・・彼女の淋しそうな顔がお前と似ていたからかもしれない。」
イスルと付き合って、あの時のオレはハニへの罪滅ぼしのように思っていたのかもしれない。





 
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2017年11月19日

糸 59

何から話そう、何を話してくれるのか。
ふたりは無言でベッドの端に並んで腰かけた。

「ヘラとは暫く交際はしたが・・・何もなかった。何もなかったし、あの日・・」
「あの日?」
「ハニが家を出て言ったあの日に、オレはヘラと別れた。公にはしていなかったし約束をはっきりとしていた分けじゃないが、ハニと将来ずっと一緒にいたい。」
あの時オレはハニがジュングと結婚するかもしれないと聞いた。
その時に初めて自分の取った行動が間違っていたと思ったし、焦りを感じていた。

「それって、ハニと結婚をすると言う事?」
「そのつもりでオレは付き合って来た。まだ、親父にもお袋にも話していないし、特にお袋には気が付かれないように一年間内緒で付き合っていた。」
お試し付き合いをしたころから、オレの中ではずっと一緒にいたいのはハニだと実感していた。
ハニはオレの事をずっと好きだったから、大学を出て社会である程度自立が出来るようになってから結婚するつもりでいる事を話したら、簡単にお袋に気が付かれてしまうと分かっていたから何もはっきりと約束はしていなかった。

「たぶんおば様も気が付いていたと思うわ。だから私があなたの家に行った時、あんなふうに私に嫌味を言っていたのよ。勿論私も結構前からあなたがハニの事を特別な思いでいつもそばにいる時が付いていたわ。」
「済まない、君に悪い事をした。」
「謝らないでよ。こっちがみじめになるじゃない。」
ヘラがそう言ってくれた事で、オレはその足で親父にオリエントコーポレーションとの融資がダメになるかもしれない事を伝えようと思った。

「親父?オレだけど・・・・」
<すぐに家に帰って来い!ハニちゃんがいなくなった・・・>
ヘラとの結婚が無くなった事を伝え、オリエントコーポレーションのユン会長に親父が謝りに行き、オレも時間をずらして訪問して謝った。
あの頃は、おじさんもお袋もハニを探すのに必死で、オレと親父はとにかく新作ゲームの発表の事で頭がいっぱいだった。
数日後に警察から電話が入ったとおじさんから聞いて、お袋は倒れるし親父は親父で無理は出来ないからと、オレがおじさんと一緒にハニの身元確認に行った。

将来は結婚するとオレだけが思っていただけで、身元確認はおじさんしか出来ず、全身が酷い火傷で手に持っていた指輪だけがハニだという証拠として死亡を確認した。
当然あの時はハニが妊娠していた事を誰も知らなかった。
勿論、ハニとそんな付き合いをしているどころか、オレたちは高校生の時のような関係だとみんなが思っていた。

「ハニちゃん、ずっと悩んでいたから顔色も悪かったわよね。食欲がないと言って食べないし、たまに食べたかと思ったらトイレで吐いているし。まるでつわりみたいだけど、もしそれが本当につわりでスンジョと付き合っていたらどんなに良かったか。」
もしかしたらお袋は気が付いていたかもしれない。
「まさか。オレがハニとそんな風になるわけがないだろう。」
こうなってもオレはまた自分を守ろうとしていた。
葬儀はしないとお義父さんは言った。
ハニが死んだなんて信じられないし信じたくない。
ハニが恨むかもしれないが、恨んでもいいから葬儀をするつもりはないとみんなに言ったし、ジュングもお袋も親父も・・・ウンジョも、きっと間違いに決まっている、もしかしたらひょっこり帰って来るかも知れないからとお義父さんの考えに同意をした。


「ヘラと別れてからどうしたの?」
「酒浸りの生活をしていたよ。」
ハニは意外だった。
スンジョがそんな自堕落な生活をするようには思えなかったし、そこまで自分の事を思っていてくれたとは知らなかった。
「飲みすぎて、朝起きたら知らない部屋で下着姿の行きずりの女と寝ていた事もあった。」
「えっ!」
「それは冗談・・・」
「もう!驚かさないで。」
冗談でも言わないと、ハニがオレが付き合っていた女の事で、落ち込んでしまうと分かっていた。






 
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2017年11月18日

糸 58

「ウンジョ君に見られちゃったね・・あっ・・・」
部屋に入ると、行き成りスンジョがハニを強く抱きしめた。
「スンジョ君?」
こんな事は初めてだった。
「お袋には話せても、オレには学校での話はしないのか?」
「別にそんなつもりは・・・・」
「随分と楽しそうに話して、お前の話の中でハン・ギョルがよく出て来るけど、なぜだ?」
なぜだと言われても、特別に意味などなかった。
他人の事にあまり興味のないスンジョが、そんな風に聞いて来る理由が分からない。

この間の歓迎会の後から、スンジョはハニの口からよく出て来る名前が気になっていた。
一通りあの時に自己紹介があったが、一番スンジョの中ではハン・ギョルに特別な気持ちを感じていた。
「ハン・ギョルと採血の練習をしたって?オレの腕でやった回数よりも多いのか?」
「そ・・そりゃぁ・・・授業中に練習をしたし、グループワークではこの間の合コンのメンバーで、いつも座席は固まっているから。」
「採血の仕方なら、医師のオレに聞けばいいだろ?お前を怒鳴ったり貶したりするやつに教えてもらうよりもいいだろう。」
いつもと違うスンジョに、ハニは自分を抱き締めている腕を解いた。

「スンジョ君・・・・もしかして、焼きもちを焼いているの?」
上目づかいで少し怒ったように言うハニに、スンジョはハニに背を向けて机の方に歩いて行った。
「もしかしてじゃなくて、焼きもちを焼いている。」
普通にそう言ってくれるスンジョが、ハニは聞く事が出来てうれしかった。
「私にはスンジョ君だけだよ。」
「それは分かっている。分かっているけど、オレはリャンさんと暮らしていた時の事を考えても焼きもちを焼く、独占欲の強い人間だと最近になって分かった。だから・・・」
「だから、ギョルとペアを組むのを止めてと言われても、止める事は出来ない。もう、私は誰にも遠慮しないでスンジョ君の奥さんと自分から言うから・・・・」
そんな事を言わなくても、へウンやミンジュたちが広げてくれている。
あの合コンに参加をしたのも、結婚式を挙げなかった自分たちの事を、親しい人だけに知らせたいという考えでもあった。

「独占欲は、私の方がスンジョ君よりも強いと思う。リャンさんと私の事は、スンジョ君は全部知っているけど、私はスンジョ君が付き合っていた人の事を何も知らない。その方が気になるの。」
確かにそうだった。
ハニがスンジョ以外の男性の妻として過ごしていた事は知っていたが、ハニに自分が付き合っていた人の話をしたのは、ミヒュンの事だけでそれ以外の人の話をした事はなかった。

「オレの付き合った女の話を聞きたいのか?」
「出来れば知りたい・・・」
知る事によりショックを受けるかもしれないが、知らないでいるよりはその方がいいのかもしれない。







 
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