「思い出したのなら、今は体も疲れているだろうから、少し休んだ方がいい。」
出来るだけリャンは動揺を見せないで、いつも通りの自分を見せていた、
「リャンさん、赤ちゃんはどうして産れなかったの?産科の医者でしょ?」
ハニはリャンが支えている手を振り払って正面から顔を見た。
「とにかく休もう。休んで起きたら話すから。」
「リャンさん、さっき会ったペク・スンジョ先生と何を話したの?赤ちゃんの事も彼に話したの?」
やはりそうだったのか。
ハニが記憶を無くしていた時は、子供の父親が誰なのかは聞けなかったし、妊娠をしている事さえ覚えていなかったから聞いても分からなかった。

「何も赤ちゃんの事は話していないよ。彼に会いたい?」
ハニは何も答えなかった。
それがハニの意志表示なのは知っている。
今までも、相手の事を思って耐える時はそうだったのだから。
「赤ちゃんの事を彼に話したら?」
「それは出来ない。産まれなかったらそれで終わりでもいい。私は、リャンさんの奥さんなのだから。」
無理をしているのは、ハニもリャンも分かっている。
分かっているけど、会わないといけない事も分かっている。
スンジョに会って話をしたら、今までの静かな生活から困難な事に直面して変わってしまう事も分かっている。

「言わないようにした方がいいと思ったけど、彼はハニに会いたいと言っていたよ。会ってハニが彼の元に行く事になっても私は大丈夫だから。」
「リャンさん・・・」
ハニの悲しい表情は、自分に対してそれだけの愛だったのかと聞いているのだった。
「いや・・・嘘だよ・・・彼の所に行ってほしくない。前の妻とは故郷が近いから知り合いのいないこの国で、お互いに心許せる話相手が欲しくて結婚をした。ハニは私が初めて心から好きになった女性だよ。彼の子供を亡くした時も、あの子供を自分の子供だと思っていたのは、ハニを誰にも渡したくなかったから。本当に私の子供を妊娠した時は、すごく嬉しかったしこのまま生涯共に出来ると思っていた。」
「ごめんなさい・・リャンさんの赤ちゃんも産めなくて。」
リャンは正面からハニの目をしっかりと見つめた。
ちゃんと話そう、リャンの子供産む事が出来なくなった理由も。

「違うよ、ハニのせいじゃない。産科の医師なのに、ハニの身体を考えなかった。あの彼の子供は流産ではなくて死産だった。ハニを始めてみた、あの火事の時に妊娠していた事を知らず、行き場のないハニを私の家に連れて行って暮らした。ハニが私の妻になって、ずっと一緒にいたいと言ってくれた時は夢のような気持だった。あの時はすでに私はハニを心から愛していたから。そのあと、ハニが生理が来ていないと言った時に妊娠している事を知った。妊娠5ヶ月に入る頃だと知った時、記憶のないハニに私の子供を妊娠していると告げた。私が嘘を吐いた事に神が罰したのだろう。それからしばらくして、ひどい腹痛で苦しんでいた時に、お腹の中の子供が死産した。」

あの時の記憶は覚えている。
今まで体験した事のない痛みに意識を失って、気が付いた時は自分が住んでいたリャンのクリニックではなくリャンが患者を転院をするときに連携している病院だった。

「女の子だったよ・・・かわいい・・」
「写真は・・ないよね?」
「さすがに撮れない。彼によく似たかわいい女の子だった。もうここまでにしておこう。」
ハニは首を横に振った。
スンジョと会う会わないは別として、自分の知らない時期(とき)の話を聞きたかった。






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