ママには黙っている。
言わない方がいい事はスンジョには分かっているが、いずれはどこからか聞いて知ってしまうかもしれない。
ワシは自分の子供が会社の犠牲にならず、好きな女性(ひと)と結婚をしてほしい。

スチャンには、心の中もすべて見通されている。
いつも何かを言う事はないが、間違っている時には静かに話をしてくれた。
グミにしても、いつも思い付きで行動しているようで、実際は人の微妙は心の変化を読み取る力を持っている。
それだから、スチャンはスンジョと話をするためにグミに飲み物を用意するように伝え、グミも何かスチャンが話をしたいのだと察したから何も言わないで部屋の外に出て行ったのだ。

「ごちそうさま。じゃ・・家に帰るよ。」
「あっ!帰るのなら、お見舞いの品を持ち帰ってくれる?皆さんには、パパとの面会が出来なかった事のに申し訳ないと伝えたけど、会社関係の方々だからスンジョも挨拶をしないといけないから電話でお礼を言っておいてね。」
大量の見舞いの品々は、そのほとんどが食料品。
腐る物ではなくても、とても食べきれる物でもない。
ひとつにまとめるとスンジョはそれを持って歩き出した。

「2・3日中に一度家に戻るわ。着替えも欲しいし、パパの具合も安定しているから先生も家に一度帰っていいって、さっき廊下でおっしゃってくださったの。」
「じゃあ、スンジョと一緒に帰ったらどうだ?」
「もう、パパもせっかちね。今言われたからすぐに帰るつもりはないわ。明日のお昼くらいに、機能の検査結果が出ると言っていたでしょ?それを聞いてから一時帰宅をするわ。」
手術はしなくてもよさそうだと、グミが医師から聞いた話をスンジョとスチャンに伝えた。
思ったよりも投薬治療で経過が良好で、あとは定期的な通院で問題がないが、食事や生活に無理をしないでいれば大丈夫だとの事だった。

ヘラとの見合いをしたその日に、スチャンの経過良好の話を聞いて、何か大きな運命の歯車がまた違う方向に廻り始めたのかもしれない。
病状についての明るい話とは裏腹に、スンジョには別の何かが始まる暗い空気が流れ始めていた。

日曜日の夕方の、少しあわただしい景色を見ながらスンジョは家に帰る道を運転していた。
家に帰れば今日の見合いの事を知らないハニとウンジョが、先を争うようにしてスンジョを出迎えにあらわれる。
その生活が、また閉ざしかけたスンジョの心の中に差し込むわずかな温かな光だった。





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