スンジョが手を挙げて合図をしただけで、スキップでもしているような歩き方でハニはうきうきとした顔で企画室内の社長室の部屋のドアをノックした。
「どうぞ。」
「社長、何でしょうか?」
「社長じゃない、社長代理・・だ。」
「どっちでもいいじゃない。ペク家の長男なんだ・・・・」
調子に乗って言い過ぎたと思ったハニは、口元を手で隠すが一度出た言葉は消す事は出来ない。
自分の夢を見つけたと言っていたスンジョが、医学部に言って医者になると最初に言った相手が自分だったのに、それを忘れていたわけじゃないがうっかりとしていた。

「ごめんなさい・・・」
「謝る事はない。オレは大学をやめるのだから。」
「大学をやめるの?おじさん、そんなに悪いの?」
「いや・・思ったよりも経過もいいみたいだ。」
「それなら、どうして大学をやめるの?休学しているだけじゃないの?」
スンジョが決心をしたら、そう簡単に気持ちを換えない事はよく知っている。
理工学部から医学部に移るのも、普通はよほど成績がよくてもそう簡単に叶う事ではない。
ハニにだけ話した後は、部屋に閉じこもって医学部に移るための勉強をかなりしていた事は知っている。
グミもスチャンも、スンジョが部屋から出て来なくても特に気にも留めていなかったが、9時にはベッドに入っていたスンジョがウンジョが寝付いてから起きて勉強をしていたのをハニは知っている。

「経過がよくても、一度弱った心臓にそんなに負担はかけられない。医学部は一日授業を受けないととんでもないくらいに勉強が遅れて行くし、オレは一年から医学部じゃないから追いつくのは並大抵の事では無理だ。」
「それなら、復学したらまたほかの学部に・・・」
「常識的に無理だ。理工学部から医学部に移って、また家の事情で他の学部に移るなんて、一年から勉強している学生にふざけていると思われるだろう。」
「おじさんは、会社に行ってくれるのは嬉しいと思うけど、大学を辞める事は望まないと思うよ。」
医学部をやめると言っても、スンジョが遅い時間に会社から帰って来て、医学部の本を見ている事もハニは知っている。

部屋の掃除に入ったり洗濯物を収納に入った時に、医学部の本を見た形跡があった。
せっかく見つけた夢を諦める事が、そんなに簡単に出来ない事くらいハニでも分かる。
「そんな顔をするな。大学をやめるにしても、今すぐにではないから。昨日、眠ったのが遅かったから、お前の淹れてくれたコーヒーが飲みたくて呼んだんだ。すぐに淹れてくれるか?」
スンジョはハニの目を見ないで、机の上の書類をまとめていた。
目を見なくても、ハニが涙を流している事は空気で伝わってくるようによくわかる。

「すぐに持って来るね。」
鼻をズーッとすすって、ハニはコーヒーを淹れるために給湯室の方へ歩いて行った。
ハニには絶対に言えない。
この間のユン会長との会食の席で、ハニが苦手としているユン・ヘラと見合いをした事を。






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