デパートのベビー服売り場には、可愛らしいベビードレスや小物が並んでいた。
ハニは一つ一つ手に取りながら、母親になる実感をひしひしと感じていた。
「ご出産はいつですか?」
夫のスウォンと楽しく会話をしながら選んでいると、二人の様子を見ていた店員が声を掛けて来た。
「7月が出産予定です。暑い季節なので、どんなのを選んだらいいのか・・・・」
「そうですね。赤ちゃんは肌が弱いので、オーガニックの商品を皆さん選ばれますよ。室内がエアコンが聞いているお家でしたら、ガーゼのこういったものを一枚用意するといいと思いますよ。」
幾つもの商品を並べられ、一つ一つ手に取りながらスウォンは熱心に選んでいた。
そんな顔を見ていると、ハニはふと昔グミがスンジョが生まれる前の話を思い出していた。

『初めての子供が授かった時、お腹の中であまりにもおとなしい子だったから女の子だと思っていたの。私も娘が欲しいと思っていたから、選んだベビードレスは全部女の子の物だったの』

「先生、お腹の子供が男の子だと教えてもらったけど、生まれて来たら女の子かもしれないよ。」
「そういう事もあると聞いたけど、あの先生は間違っていないとおもうけど・・・・」
水色のベビー服を眺めながら、他の色のベビー服と比べていると、店員が淡い黄色のベビー服を二人の前に置いた。
「早めに用意される方は黄色のベビー服にされる方も見えますよ。黄色は女の子でも男の子でも、どちらでも使いやすい色です。」
言われるまま選んでいるわけではないが、お互いに納得しながらたくさんのベビー用品を買う事になった。

「先生、あのベンチで休んでいてもいい?」
久しぶりの人混みに疲れたわけじゃないが、購入した商品を自宅まで送ってもらう手続きをしているスウォンに声を掛けてその場から離れた。
もしかしたらここに座っていると誰かに会うかもしれない。
ミナとジュリも結婚して母親になったから、もしかしたら偶然に会えるかもしれない。
ソウルに来たのなら連絡をしておけば、どこかでランチでもできたかなと思っても、ミナもジュリもハニよりも早く母親になり、子供を連れての外出が大変だとよく言っていた。
誰かに会いたいな・・・・そんな思いがあったからなのか、突然に自分の名前を呼ばれた。

「ハニちゃん?ハニちゃんなの?」
聞き間違いと思わなかった。
その人の声は、人混みの中でもすぐに誰なのか分かる。
「おばさん・・・・」
驚いて立ち上がると、グミが足早に近づいた。
「久しぶりね・・・・ハニちゃん・・・・お母さんになるの?」
咄嗟にハニはお腹を手で隠した。