「もう一晩泊って行けばいいのに。」
デパートで購入したベビー用品が助手席と後部座席に納められ、少し狭くなった後部座席に座ったハニにギドンは呟いた。
「パパ、そう言う訳にはいかないの。忙しい診療所じゃないけど、週末に体調を崩した患者さんが明日の月曜日の診療時間に来るかもしれないでしょ。」
「分かっているけど・・・・」
「お義父さん、ハニが出産するまで無理しないようにしますから。」
「スウォン君に安心して任せているけど、母親がいないから初めてのお産なのに何も手伝えなくて悪いと思っているよ。」
「パパ、大丈夫だって。お手伝いのおばさんは、自分の子供も孫もたくさん世話をした人だし、先生のお父さんの時代から家の事をお願いしている人なの。」

心配で仕方がないギドンの気持ちは、スウォンも理解できる。
「次にパパに会う時は初孫と一緒だから。」
明るく笑うハニも本当は初めての出産で不安で仕方がないが、母になるという気持ちでそれを乗り越えようと決めていた。
ギドンの店を出てから、車の中のハニは可愛らしいベビー用品の袋を覗きながら幸せな顔を見せていた。
バックミラーでスウォンはハニを見て、昨日ハニが長い間片想いをしていたスンジョと一緒だったといつどのタイミングで言おうかと迷っていた。
今は自分の妻として笑顔でいるハニが、まだ大学生の頃はスンジョが財閥令嬢との婚約発表を知って、今にも心が壊れそうでいた時の顔が忘れられなかった。
教え子だからとその時は接していたが、実家の診療所で再会した時に一生懸命に看護師として仕事をしているハニが元気になってよかったと思った時から、自分の気持ちを伝えようとするまでにどんな気持ちでハニの片思いだった時の話を聞いていたか。

ハニに教え子と恩師の関係から、男としての自分を見て欲しいと話して結婚に至るまでに3年かかった。
結婚して子供が授かるまで5年、田舎の診療所でお互いに信頼しあって暮らしていた時間を、ハニの片思いの相手に壊されたくないという気持ちが強かった。
嫉妬だと分かっているし、そんな態度を取るのは自分らしくないと分かっているから、もっと自信を持ってハニに話すにはタイミングを見つけるのに勇気がいった。