都会の大きな病院ではないから、数年前のカルテを用意するのはそれほど時間はかからず、診察を担当する医師もハニをよく覚えていた。
普通の妊婦ではなく事件の被害者でもあるハニを、この田舎町の人でおそらく知らない人はそれほどいないだろう。
そんな中で、ハニはこの5年間どんな思いをして生活してきたのかと思うと、男であっても涙が出そうになる。

「あれから5年ね・・・娘さんはお元気ですか?」
担当の医師は中年の女性の穏やかそうな人だ。
「今日も一緒に来ました。」
「そう・・・ご主人は初めてお会いしますね。」
産婦人科の診察室に入ってから、スンジョは一言も話さなかったが、ハニの夫だと気が付いたのを知り、この女医がハニの担当医でよかったと思った。
「数日前に入籍をしました。」
「あの時に産まれた赤ちゃんのお父さんね。産まれたばかりなのにとっても顔立ちのはっきりした赤ちゃんだったから、よく覚えているわ。あとからお子さんに会わせてね。」

普通の人なら気が付かないカルテに書かれていること。
担当医は恐らく前に診察をした診療科から、連絡を受けて知ったのかスンジョの情報をメモした紙を見ながらカルテに書き込んでいた。
「あの・・・・私・・・・」
「二人目のお子さんが欲しいの?」
「え・・っと・・・」
言わなくてもこの科に来れば、そう思って当然だ。
ハニ自信スンジョにそう言ったことはなかったが、【無排卵】という言葉を聞いていたからその相談をしたかった。

「あなたの場合、ほかの人と違う事情があったから無排卵と話したけど、タイミング法を考えてみるか・・・・時間をかけてもまだ年齢が若いから可能性はあると思うわよ。一年後に来た時にお腹の傷を見せてもらったけど、きれいだったたしあれから5年経っているから、今度は普通分娩でも大丈夫よ。早く妊娠しようと思う焦りよりも、ご主人と今いるお子さんとの幸せな時間が一番の薬だと思うわ。」
スンジョは知らなかった。
スンハが予定よりも早く生まれたことは知っていても、普通分娩で生まれていないと聞いていなかった。
薬での治療を早めたいから産まれても問題ないくらいに成長していれば、そうすることもあるだろうがそれほどハニはよくない状態だったとは知らなかった。

「お腹の傷を見せてもらってもいい?」
スンジョがいる場で見せるのは抵抗があったが、それを拒むほど子供ではなかった。
診察台に上がると、ハニは横になりスカートのホックを外して腹部を出した。
白い肌に無数の傷がはっきりとまだ残っていた。
手術での傷のほかにあるものは、あの忌まわしい事件の時に付いたものだろうか。
顔を横に向けて、スンジョと視線を合わせないようにしているハニを思うと、心の傷は単純に治すことができるとは思えなかった。





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