高台から海を見るハニは、穏やかな風になびく長い髪の毛を押さえて、風と同じような穏やかな表情をしていた。
スンジョは車の中のハニのカーディガンを取り、静かにハニの背後に近づくと肩にフワッとかけた。
「清々しいというより、少し肌寒く感じる。もうホテルに行こうか。」
ハニが緊張をしているのがスンジョにも伝わって来る。
ずっとスンハと二人で生活し、スンハがいたから不安や悲しみに耐える事が出来た。
スンジョと再会して結婚し、一年経ってから結婚をした。
初めて二人だけになるのを、緊張しないはずはなかった。

「昔はよく二人っきりになりたいとよく言っていたよな。」
「あの時はね・・・スンジョ君といるとウンジョ君が間に入って来るし・・・」
「オレがハニとふたりだけで出かけたくても、お袋が何かに気が付いていたのか、ハニに貼り付くようにしていくっついていたからな。」
お互い二人っきりになりたい気持ちはあっても、昔も今も気恥ずかしく思っていた。

「私ね・・・スンハには聞かれたくない事をスンジョ君に言いたいの。」
車の窓から見える景色を眺めながら、ハニはスンジョの方を見ないで勇気を出して声に出してみた。
「オレに話したい事?」
「あの事件の事・・・・どうして示談にしたかよりも、パパにも警察にも言えなかった屈辱的な事・・・」
スンジョは相槌を打たないで、ただ黙って聞いていようと思った。
ハニもきっとその方が話しやすいはずだ。

「必死に抵抗したの・・・・おじさんやおばさんを呼ぼうとしたけど、いない事が分かっていたし、ご近所の人たちは私が見込んで妊娠しているから、あまりいい目で見ていなかったのは知っていた。それでも助けを呼びたくて、叫ぼうとしたのに声が出なくて・・・・動画を撮っている人が私の口にタオルを詰めて声を出せないようにして・・・・洋服は破れ・・・スカートはめくれ上がって下着を・・・」
ハニはブルブルと震えていた。
当たり前だろう。
あんな目に遭って、あれから年数は過ぎていてもハニは何一つ忘れていなかったのだから。

スンジョは路肩に車を停車すると、震えているハニを抱きしめた。
痩せたハニはスンジョと一緒に暮らし始めて幾分か体重は増えたが、それでも昔のハニを知っている人はまだ痩せていると思う。

「動画を写している時のカメラが点滅している光と、三人の男の人達のギラギラした目が怖くて・・・・私を押さえている人が私の体中を唇が・・・・」
「もういいよ・・言わなくても。辛い事はその時々でオレに話せばいいよ。一人でハニが抱え込まなくても、オレがハニを一生支えて行くから。」
そう言うのが精一杯だった。
産婦人科に受信した時に見たハニの腹部にある無数の傷跡。
手術痕はスンハを産んだ時の傷で、そのほかは抵抗した時に着いた傷だろう。 
ひとつずつオレがその傷の思い出を消していくよ。
ハニがまた昔のように笑ってくれるその日が来るまで、オレはどんなに小さな傷も見つけて治して行く。



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