シーズンオフだから客が少ないのじゃない。
普通の人が泊まるホテルのレストハウスじゃなくて、まるでVIPがお忍びで使うレストハウスじゃないだろうか。

「お袋・・・・気を利かせたつもりだな。」
「気を利かせたって?」
「ん?ホテルにチェックインした時は、もっと客がいただろ?」
「そう言えば・・・」
個室ではないのに個室みたいに他人と顔を合わせる事がない造りになっていた。
他人と顔を合わせないのはいい意味でも悪い意味でも緊張して来る。
スンジョのイライラとした微妙な表情を、ハニは心なしか楽しんでいるように見ていた。

「スンジョ君、今でもお義母さんが準備してくれた事にイライラとするんだね。」
「そう見えるか?」
「うん、そう見えるよ。でも、緊張しないようにと気を利かせてくれているのかもしれないけど、私は逆に緊張してきちゃった。」
「オレもだよ。ハニと二人だけで旅行をした事もなかったのに、いざとなると緊張するよ。」
ふざけて言ったわけではないのに、ハニはスンジョを見ながらくすくすと笑った。
「食べたら部屋に帰るぞ。」
「まだ時間が早いから、少し外の風に当たりたい・・・」
「8時過ぎているから、早くないだろう。部屋に戻って風呂に入って休もう。」

ハニは別の意味で緊張していた。
本当にスンジョとこれから幸せになれるのだろうか。
義理の家族には自分の話せない秘密がある事を知ったら、どう思われるのか。
そんな不安が顔に表れていたのか、部屋に向かって歩いているとスンジョがそっと手を握ってくれた。

「ハニの不安を、オレがひとつずつ消していくよ。大丈夫だから・・・・大丈夫だけど、もうオレは待てない。」
その言葉が何を意味しているのか聞かなくても分かっていた。
ひとつずつ消してくれると言ったスンジョ。
高校生の時に片想いをしていたスンジョはまだイタズラな輝きを瞳の奥に見せていたが、あれから10年近く経った今のスンジョの瞳の奥は、優しくて深い愛情を持っているのが見えた。
スンジョに何もかも任せて、新しい自分になろう。




人気ブログランキング