大丈夫
スンジョさんは大丈夫
まだ結婚して一月も一緒にいた時間はないよ

気を失っていたのはわずかな時間。
『大丈夫』と自分に言い聞かせた時に目を開けると、ジュリがハニの体を起こそうとしていた。
「若奥様・・・・良かった気が付かれて。」
「ジュリ、大丈夫。スンジョさんは戻って来てくれるから。」
「そうですよ。若奥様の所に戻っていらっしゃいます。こちらに住まいを移しているとお知らせは届いているのですから、遠回りをしてもどれだけ時間を掛けても戻っていらっしゃいます。」
送り出す時は体調を崩して見送りも出来なかった。

今は、幼いヘジュンが天に召されてから、ヘラがペク家に頻繁に訪れてはペク家の嫁のように使用人たちに命令をしていた。
特に、ハニが漢陽を離れて静かで小さな町で過ごしてからは、自宅に戻ろうともしなかった。
体調を崩していたハニが、回復を待つことなく自宅を出る事になった時は、義理の母のグミから『我が子を亡くした母親が精神状態が不安定になっている』と言われた。

宮殿にいる頃に、スンジョと一緒に漢陽の街を歩いていた時にされた事を思い出せば、それは間違っていない事だった。
ジュリと数人の使用人とだけの静かな生活。
商団の若奥様として、静かな環境で教えてもらうためにはその方がよかった。
日課となっている散歩は、使用人の誰かが必ず付いて行くが、方向音痴のハニには仕方のない事だった。




漢陽での生活から離れて、小さな町で生活を始めてからいつの間にか三年が過ぎた。
時々、漢陽からスチャンやグミ、ギドンとハナがハニから頼まれた品を届け、それを使って女性向けの小物を売る商売を始めた。
仕立て屋だった祖母のパルボクの地を受け継いだのか、唯一人に自慢が出来る事が小物作りだった。
小さな町に住む人たちは、ハニが作ったチュモニ(巾着)を皆持ち歩いていた。
見慣れない人が数人、町に住んでいる人たちが持っているチュモニに目を止めた。

「何でしょうね・・・老若男女、チュモニを見に着けている人がこの小さな町のほとんどでというのも・・ちょっと聞いてみましょうか?」
「いや、人の持ち物に特別興味がないですが、漢陽では着衣に付けている人はまずいないです。すりやひったくりに遭わないくらいここは安心して住めるところだという事でしょう・・・」
「そうですね・・・それでは参りましょうか。この先の小さな家に住んで見えます。」
背の高いその人は笠を下げて、自分に付いている人に軽く頭を下げると歩き始めた。



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