「でも、スンリが赤ちゃんの時から育ててくれた母は間違いなく隣にいる母様です。まだ幼くて理解できないかもしれないですけど、成長するとその意味が分かると思います。母様は育ててくれた母で、スンリをこの世に誕生させてくれた母もいる・・・・という事です。」
幼過ぎる子供には理解が難しい事かもしれないが、実の母の事を知るのが遅ければ遅いほど傷付く事になる。
それならば、幼い今の時期に本当の事を話して、少しずつ理解をして行った方がいいが、父親の事を聞かれたらどう教えてあげればいいのだろう。

「まだ小さいから、父様が言う事がよく分からないわよね?」
幼いスンリの目を見つめて話しているハニは、血の繋がりがそれほど重要じゃないと言うようにも見えた。
「スンリにはね・・・母様が二人いるの。凄く嬉しい事よね?母様が二人いれば、嬉しい事は倍になって、悲しい事は二人の母様に助けてもらえるから半分になるの。」
「うれしいね・・・とうさまもふたりいるの?」
「そうです。スンリに父様が二人いるのです。でも、本当の父様は、もう亡くなられたので会う事はありませんが、スンリが立派な大人になるのをきっと望んでいます。」
どんな男がスンリの父親かはきっと分からないままかもしれないが、二度と会う事がない男ならそう話すしかなかった。

この国の民の中で両班はわずかな数しかいないが、身売りをしていた女に子供が産まれたことなど、その時の男は知らないだろう。
ハニには、スンリの産みの親のキョルの事は、二人だけの時間に詳しく話す事にしよう。

「ヨンファがスンリの母親とその子供たちを連れて来ますが、ここで一緒に生活をしようと思っています。」
「え・・・・」
驚いたのはハニだった。
当然だろう、スンリに実の母親がいる事を今言ったばかり。
母親が見つかったら返すと言っていても、乳飲み子の時からずっと育てていた。
子供を産んだ事のないハニが乳が出る事がないのだから、町に住む人たちの中から父が出る人を探して育てたのだろう。

「今は家の事をジュリが一人でしてくださっているので、スンリの実の母・・・キョルさんに手伝ってもらうと負担が少なくなると思った事と、この先の事を思って人手はあった方がいい。キョルさんの一番上の子供は女の子で、一人前とは言えないですが、手伝いの出来る年齢です。他の子供たちも、今から商団の仕事を教えて行けば、いずれは漢陽に帰った時に仕事を任せられると思います。」
ハニやジュリが複雑な思いなのはわかるが、ハニの祖父である先王は民が苦しむ姿を見たくないとよく言っていた。
身分が決して高くない商人の息子である自分を、その能力を信じて宮殿に上がらせてくれていた。
その考えを受け継いでいくのは、ハニと夫婦になった自分の役目だとも思っていた。
ハニもスンリの母親の話を聞けば、同じ考えだと言うはずだ。

ほどなくしてヨンファがスンリの母と、スンリの姉や兄たちと戻って来た。


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