キョルたち親子はスンジョの提案どうりに、ジュリの手伝いをするために離れで生活をする事になった。
今まで住んでいた家から持って来る必要な荷物がなく、戻る事なくヨンファに案内されて離れに行った。
親子5人で生活をするには少し手狭だが、寝るだけの部屋なら十分すぎる広さだ。
埃まみれの部屋でも、今まで暮していた家と比べ物にならないくらい、寒さや雨漏りで困る事はなかった。

幼い3人の兄妹たちが、一番上のキョンに叱られながら母と一緒に片づけをしている声が、ハニたちの生活する母屋の方にも聞こえていた。
初めてキョルと対面した時から、ハニが一言も言葉を発していない事にスンジョは気が付いていた。
無言でスンジョの傍で、黙々と売るためのチュモニに刺繍をしていた。

「怒っていますか?」
首を横に振るだけで何も話をしようとしない。
ハニがこんな態度を取るとは思ってもいなかった事はないが、ハニに対しては冷静な判断がスンジョは出来なくなる。
「キョルさんは、スンリを含めて5人の子供を産んだ人です。今はまだ私たちに子供はいませんが、その時になったら助けてくださると思います。いつ漢陽に帰るか今は決めていませんが、ジュリとキョルさん・・・・まだ子供ですがキョンがいてくれると、ハニに力になってくれるはずです。」
「だからと言って、キョルさんがスンリを捨てた理由が分からないままでは・・・」

確かに誰だってスンリの実の母親だと言っても、身元がはっきりしていない人との同居は不安になる。

「キョルさんは・・と言うよりは、キョルさんの旦那さんは、妻を・・・・生活費のために売っていたのです。」
「う・・・売っていたって・・・」
世間の事や人間の綺麗ではない部分を知らないハニには、とても信じられない事だと思うだろう。

「漢陽や地方の両班が、単身で漢陽から来ている両班の相手をするために妻の身体を売ったのだそうです。一番上のキョンだけが夫の子供で後の子供たちはその両班との間に出来た子供だそうです。夫の言われるがままにするしかなかったキョンさんですが、夫が行方不明になってからは、もう身売りをする事も無くなり、その代わり生活のために、どこかで子供を授かった人がいると聞けば、産まれて落ち着くまで手伝いに行って生活費を作っていたそうです。ハニがスンリを手放さず、キョルさんも捨てた子供を心配して、ほぼ毎日通う事が無いようにするにはこの方法が一番いいと思いました。おばあさまも先王もきっとこの方法を選んで良かったと思っていると思います。ハニは心が純粋で、人の見かけやそれまでの生活で人を侮蔑する人ではないと知っています。」
ハニはスンジョの話を聞いて、顔を隠して胸の中に飛び込んだ。
「焼きもちを妬いていました・・・スンリにもスンジョさんにも・・・・私はスンジョさんの妻になったのに、いつまで経っても子供のままで・・・・嫌われたのだと思っていました・・・・」
ハニが泣いているのかスンジョの着物を通して涙が伝わって来た。
「ハニを嫌いになどなりません・・・私の方がハニを好きなのですから。」



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