5年のここでの生活は色々な事があった。
スンジョさんの行方が分からなくなったと聞いた時は、死んでしまいたくなりそうだった。
毎晩庭に出て空を見上げると、キラキラと輝く星に涙を流していると、風が吹いてまるでスンジョさんが涙を拭ってくれているようだった。
スンジョさんが行方不明の連絡があった日に、スンリが家の前に捨てられていたから私は絶対にスンジョさんが帰って来ると信じていた。

スンジョさんが帰って来てから、割と早くにスンハを授かり本当の母親になれたような気がした。
スンリは血の繋がらない息子でも。自分の子供としか思えなくらいに可愛い。

「奥様・・・私も付いて行っていいのでしょうか・・・」
家の中の荷物をまとめていたキョルが、一旦手を止めてハニに心配そうな目で振り向いて聞いた。
「私は身分も卑しく、夫の言いなりになっていたとはいえ・・・・恥ずかしい事をしていました・・・」
ハニは心配そうにしているキョルの、苦労をした手をしっかりと握った。
「身分が卑しいって・・・商人の地位は決して高くないです・・・」
「そう言う事では・・ジュリさんから聞きました。奥様は先王の・・お孫様だと。」
キョルには話さないでいるつもりはなかった。
いつかは話さないといけないし、漢陽に行けば度々訪れてくるかもしれないヘラとの関係も話しておかなければいけない。

「話さないわけではなかったの・・・私自身そういう血縁だという事を知らずに15歳まで田舎の貧しい村で育った。両親は私に何も伝えていなかったのだけど、それは祖母・・・・が誰にも知られずに母を産んだから。」
「そう・・・なのですか・・」

「話せば長くなるし、きっといつか誰かに聞くと思うけど、私は王族の血を引いていても、普通の人間で商人の家にお嫁に来たの。後・・・スンリの事は、私とスンジョさんとジュリさんとヨンファさんだけしかし要らないわ。ペク家の両親や私の乳にも話していないの。スンリもいい子だし、キョンはお義母様にとても可愛がられている。キョルさんもとてもよくしてくれているのだから、過去の事は話す必要もないって・・・スンジョさんの考え。たとえ、それが義理の両親や私の乳に知られても、キョルさんの人柄を見たら気にしないわ。」
スンリが素直で良い子供に育った理由がキョルには分かった。
一緒に暮らしたスンジョやハニが、どうしてこれほど親切で心の広い人だと言うのは、育てた親や環境が素晴らしいからなのだ。

「過去の事は風のように通り過ぎてしまっているの。スンリが産まれて私たちの養子になったのは運命だったのよ。産みの親と育ての親・・・それだけの事。キョルさんは、スンリを捨てた事を後悔しているけど、私がスンハを産んで大変な時に母親としてスンリにとてもよくしてくれたわ。大切にしているスンリを、キョルさんが私に託した事を忘れないように、これからもその気持ちを受け入れて大切に育てていくわね。」
ハニの純粋で優しい心は、恩で返すことも出来ないほど尊く感じた。
漢陽での生活に不安はあるが、この若いハニの下で生涯を尽くそうとキョルは心に決めた。



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