「父さん・・・・・」
品物を帳簿と照らし合わせているギドンの背中にハニは声を掛けた。
「ハニ!」
「ただいま・・・・」
申し訳なさそうな表情でハニはギドンと目を合わせると、見る見るうちに大粒の涙を流した。
「何事もなく帰って来たのに、そんな風に暗い表情で涙を見せる事はないだろう。お前の可愛いスンハを見せてくれないか?」
ハニの後ろからジュリがスンハを抱いて前に出て来た。
そんなジュリの後ろからチョコンとスンリが顔を出すと、ギドンは目を細めてスンリの顔を見てほほ笑んだ。

「スンリか?じいちゃんだよ。」
節くれた手でスンリの頬に触れると、スンリは緊張をしていたのかビクッと身体を固くさせた。
スンリの事はギドンも、ペク家の人達も事情を知っているが、母親がキョルだとは伝えていなかった。
この先ずっと、スンリの母親はハニでいようとスンジョがそう決めたのだった。
「賢そうな子供だ。」
母親がキョルだとは知らないが、ハニが家の前に捨てられていた子供を育てている事は知っていた。
誰が親なのかギドンは気にする人ではない。
子供には何の責任もない事は、誰でも同じ考えだと言うのがギドンだった。
「妹は可愛いか?」
「かわいい・・・僕がずっと守っていくよ。」
「ジュリ、上がってスンハを休ませてあげて。」

グミは可愛い孫娘のスンハの顔を見たくて仕方がなかった。
もちろん、スンジョからもスンリの話は聞いていたから、ジュリのそばにいるスンリの手を取ると血の繋がりのない孫でも愛情あふれる笑顔でほほ笑んでいた。
「ギドンさんの言うように、スンリは賢い顔をしているわ。将来はうちの商団をまとめて行ってくれそうね。」
離れて立っているキョルは、温かく迎えてくれるスンジョの母グミと、ハニの父ギドンに対して心の中で感謝の気持ちを向けていた。

「キョルさんも上がって・・・・シン、ミン、リンも・・・これから生活をする部屋に案内をするわね。キョン!キョン!お母さんと弟と妹が来たわよ。」
『はぁーい』という返事が聞こえ、奥の方から誰かと話をしながらキョンが姿を現せた。
一年ちょっと離れていただけの娘が、すっかりと垢ぬけて漢陽の生活に馴染んでいた。

「キョン・・・・なんだか、よそ様の娘さんみたいにきれいになって・・・・」
「母さん・・・私は変わらないよ。大奥様がとてもよくしてくれて・・この着物もみんな奥様が用意してくださったの。」
色鮮やかな着物を着て、少し大人びた娘がとても生き生きしている姿を見てキョルはペク家の人々に頭が下がる思いだった。




人気ブログランキング