2010年10月15日

クマ受難の秋〜ほど遠い「いのちの教育」

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<クマの事件を報じる地元紙の夕刊>

  昨日(14日)早朝、私の家から200mあまりしか離れていないところで最初に目撃されたクマが、3ヶ所で人にケガを負わせ、3ヶ所目の市立中学校の校舎内で射殺されるという事故がありました。山からは5キロほども離れたところで、しかも住宅街なので、大きく扱われ、全国ニュースでも流れていました。

  射殺されたクマの胃の中を調べたそうですが、ほとんど空っぽで、ふだんなら食べない堅いクルミの殻などがあったそうです。クマたちが置かれている厳しい状況が、並大抵のものではないことがうかがわれます。2006年の大量捕殺の年でも、今回のように街中や住宅街で、ということはそう多くはなかったような気がします。

  中学校の校舎の中での射殺というのにも複雑な思いです。流れる血や運び出されるクマの死体の写真や映像が、何の遠慮もなく掲載、放映されていました。
そのことによって、自然界で起こっている危機的な状況を、私たち人間が知る機会が失われ、単なる「事件」として、市民に恐怖心を植え付けるだけのことになりはしないかと危惧しています。

  山形では「いのちの教育」のスローガンをかかげていますが、そこには全ての動植物のいのちが含まれるのだと思っていますが、今回の対応をみますと、人間のいのちに限定されるとでもいうようで、残念でなりません。

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<昨年植樹したクリ>

  朝のニュースでその事件を聞きながら、この日は福島県国見町に向かいました。昨年、この町のはからいで初めて植樹を実施した場所に、今月30日、2回目の植樹をする計画があるのです(※現在参加者募集中です)。町の担当者の方々と現地で待ち合わせていました。

  一足早目に現地に着いて、一人で昨年の植樹地をざっとまわってみました。ほとんどの苗木は根付き、育っていました。とりわけクリは成長が早く、背丈が1mを超えるものもありました。

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<自然に生えてきていたホウノキ>

  また、嬉しかったのは、そこに生えていたアカマツやその他の木が伐採されたあとに、切り株から株立ちをして新たに生えてきているミズナラや、大きな葉っぱのホウノキなども成長を始めていたことです。自然の回復力というものがかなりあるものだと感じました。植樹はそうした回復に、人間がちょっとだけお手伝いするようなものなのだと改めて感じました。

  立ち会ってくださったM課長さんは、100年200年先のことを話してくださいました。林道をたどって車でくることのできるこの地が、気軽に自然を満喫できる場所になり、多様な木々が生育する森になるようであればなあと。そしてそうした森は、動物たちにとっても大切な「いのちの森」になるはずです。

  「自然を大切に」、「いのちを大切に」。その言葉はいいのです。「自然」というとき、そこには人間と対峙するかもしれない生物もあっての自然であることを忘れないようにしたいものですし、「いのち」もまた、私たち人間だけのいのちであってはならないとも思います。害獣というけれど、たとえばクマたちにとって私たち人間はどんな存在なのか、という謙虚さを忘れないでいようと考えています。


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happajuku at 04:37│Comments(6)TrackBack(0) 葉っぱ塾からのメッセージ | 日本熊森協会関連

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この記事へのコメント

1. Posted by きよこ   2010年10月15日 04:49
今年の木の実の凶作により、クマに大きな影響があるのではということが現実になっていますね。
知らぬ間に人間の住む土地に入ってしまい、森に戻れなくなったクマはきっと冷静さを失って恐怖に満ち溢れた心でいたことと思います。
母と話していても、クマは凶暴なんだね、という認識でいたので、そうではないことを話したのでした。
そんな中祈るように植樹の場を訪ねられたヤギおじさんのお心の深さを思います。どうかクマたちが生きられますように。すべての命が平等に、つながりあって生きられますように。
2. Posted by 葉っぱ塾より   2010年10月15日 05:34
 こういう報道のあり方によって、ツキノワグマは肉食の獰猛な動物であるというイメージが固定化されてゆきます。ここ山形でも、クマが肉食だと思っている人は多いです。北海道のヒグマは肉食です。

 2006年のことが教訓にされていないことが残念です。
3. Posted by ちはる   2010年10月15日 09:51
やぎおじさんのこの記事を読んで本当に複雑な気持ちで涙が出ました。

東京に住む友人が心配してメールをくれてこの事を知りました。我が家は北中の目の前です。朝6時と言えば、やぎおじさんもご存じのように私の母が愛犬と散歩に出かける時間です。真っ青になって連絡しました。遠く離れているとなおさらです…。

母に連絡したところ、祖母宅脇の細路地を通って中学校に行ったのこと。あらかじめ連絡を受けていたのと、騒ぎに気づいて散歩には出かけなかったので我が家には何の被害もありませんでした。

本当に異常な状況だと思いました。なんの理由もなくこんな事が起こるはずがないと思うし、射殺された熊の胃がこの時期に空っぽなんていう事がどれだけ危機的状況なのかと思うと本当に胸が痛みます。

クマの保護の活動に参加されているやぎおじさんの歯がゆさは計り知れないです。
何の罪もない命がぞんざいに扱われ、無知やエゴによって正しい情報が伝えられない。やり切れない思いでいっぱいです。

ただ、やぎおじさんも山歩きの際は、十分に気をつけて下さい。
4. Posted by 葉っぱ塾より   2010年10月15日 13:58
 ちはるさん、そうでした。記事によれば、ちはるさんのご実家のすぐ脇を通ったようですね。お家の方々もご近所の方々も驚かれているでしょうね。

 クマは元来、見通しのよいところは好まないので、おそらく山からは川沿いに来たものでしょう。コンクリート3面張りの今の河川は、川が藪だらけで、見通しが悪いですから。ここに、河川管理の問題がありますね。出てきたはいいけれど、身を隠す場所もなく、おそらくクマはパニックに陥ったのでしょうね。そういうことに対する想像力があったのかどうか。

 私は動物愛護の観点だけでものを言っているのではないつもりです。クマが棲める自然を失うということの意味を考えています。クマなどいないほうがいいという考え方にあるのは、自然に対する傲慢さではないのかとも思います。残念な結果ではありましたが、できることはあるはずです。人間の英知が試されているのですね。
 
5. Posted by つつみ   2010年11月19日 21:25
ちょっと待ってください。あなた方おかしくないですか?
ケガをした人間を気遣うコメントが一切なくって、「腹が減ったクマがどったらこったら」って、これじゃ熊森は「人間の生命よりもクマの生命を優先する反社会的カルト団体」と認識されますよ。
6. Posted by ホルモン   2010年12月30日 23:21
1 まず、記事の内容について間違いを指摘させて頂きます。
>ふだんなら食べない堅いクルミの殻
これは何か根拠があってのことでしょうか?僕の知っている範囲ではクルミはクマにとって、ある程度重要な食物資源です(参考論文:http://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/37/1/1/_pdf/-char/ja/)。

それから質問に対するコメントにも間違いがあります。
>北海道のヒグマは肉食です
これはひどいですね。ヒグマは食物のうち大半(曖昧だが少なくとも80%以上)を植物質に依存しているとされています(参考文献:ヒグマ学入門)。ある程度クマに関する知識を持っている人であればこのような間違いはしません。

誹謗中傷をしたいわけではないです。ただ、ブログ主さんをはじめとする日本熊森協会という団体には、勉強する、調べる、という意識があまりにも不足していると思います。1支部のリーダーとされている方ですらこれほど認識に間違いがあるのですから。

>無知やエゴによって正しい情報が伝えられない
下のちはるさんのコメントの一部ですが、これは正に熊森に対して言うべき言葉では無いでしょうか。十分な知識ももたない自然保護団体による行動力のみの暴走は、これまで調査や研究を積み重ねてきた研究者の努力を冒涜し、無にする行為です。

結局誹謗中傷のようになってしまいました...申し訳ありません。
このようなコメントはすぐに削除されてしまうのかも知れませんが、同じ自然を愛する者として、正しい知識を持つ、実験に対する検証を行う、ということの重要性についてどうか考えて頂きたいと思っています。

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