『金継ぎ』。
というと、骨董的レベルの器等を
美術的に修繕するというのはもちろんですが
それに加えて
"すごぉーく高尚な趣味"
という印象もくっついてきます(私見)。

芸能人だと杏ちゃんとか小雪さんとか
あーゆうきちんとした感じの人が
ていねいに暮らしてますっていうのを
ものの見事に体現してる
実益を兼ねた至極高尚な趣味。

そもそも
金継ぎで直したいと思うほど価値がある
器を持ってないと実施不可能なワケで
私にはご縁がないと思ってた『金継ぎ』。

えぇ、ハイ。
まわりくどいようですが
正直チョット憧れも興味もありました。
ご縁がない"高尚"だからなおさらなんでしょう。
エヘヘへへ(*´∀`)

その憧れの金継ぎを
簡易に体験できる機会に恵まれまして
金継ぎしたい器があるわけでもないので
迷いに迷いましたが、参加してきました。

結論、行ってヨカッタです✨

申し込みするにあたって迷いに迷ったのは
手元に金継ぎするような器が一切なかったから。
だいたい欠けたり割れたりした食器類は
その場で捨てているので残ってません。
そして私が所持してるものの多くは
ロイヤルコペンハーゲンやマイセンの
白地に青で絵柄が描かれているもの。
金継ぎとの相性が悪い…。
和皿もあるにはあるのですが
使用頻度が低すぎてまったく傷ついてナイ。

そんな迷っているときに
ふと目にして「これだ!」と思ったのが
実家の食器類たち。
実のところ母と私の好みは全然違いました。
洋食器だと母はミントンが好きで
私はロイヤルコペンハーゲン。
和製洋食器は
母はノリタケで私はナルミ。
さんま皿ならば母は織部で私は有田。
みたいに。
なのであまり実家の食器類に
思い入れはなかったのですが
母が亡くなってみると
ひとつひとつ思い出の詰まった
大切なものに思えてくるものですね。

当然ながら実家の食器類は
10年20年選手なんてザラ。
私が物心ついた頃からあるものなんて
少なくとも40年は使われてるワケですから
欠けてるものがいーっぱい。

その中から金継ぎされるに相応しいもの…。
となるとそう多くはありません。
数ある割れ欠けから選んだのはコチラ。

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赤志野の急須&湯呑みセットの湯呑みと
すき焼きの際に使ってた渋い貫入のとんすい。

あまり好きな器ではなかったものの
湯呑みは陶芸に没頭してた友達が
ウチに遊びに来たときに
「これ赤志野じゃない!
 赤志野はもう今
 作家物以外作られてないんだよー!
 けっこう希少だよー!」
と言ったのを聞いて
俄然大切にしはじめたもの。

とんすいのほうは
ヒビに黒い汚れが染み込んだみたいで
小汚ないなぁなんて思ってたのに
自分が陶芸教室に行きはじめて
"貫入"という技法があることを知り
しかもなかなかキレイに入れられないから
ようやくその価値に気づいたもの。

まぁいずれにせよ
ゲンキンな性格ってことですね。
とにかく金継ぎを体験するにはもってこいの
"欠け"と"ヒビ"が揃いました。

体験講座はカフェの一角をお借りした
ワークショップとして開催。
お席には図工の授業みたいなセットが一式。

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『新うるし』なるものが
まったく漆ではないのですが
簡易金継ぎにおいて漆の役割を果たす物質。
合成プラスチックだとかで
漆と違ってかぶれたりしなくて扱いが容易。

まずは粘土みたいなもので
欠けてる部分やヒビが入ってるところを
補完するように埋めていき
埋めたら触っても違和感無いところまで
やすりでなめらかにします。
(私はもうこの時点で投げ出し気味。
 十分なめらかかなと思っても
 先生はまだまだとおっしゃる。
 向いてないな…と早速感じはじめました。)

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結局先生のお手を借りて
完ぺきななめらかさに到達し
そこから『新うるし』登場。

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ここからワクワクするかな~と思ったら
甘い甘い甘ーい!
そもそもワタクシ、手先がものすごく不器用!
習字とか絵の具の絵画とか
イメージどおりに書けたことがありません。
手が脳ミソの命令どおりに動かないタイプ。

まだ"欠け"はいいです。
埋めたところにちょんちょんと塗るだけ。
(それでも先生のフォロー入りました。)
問題は"ヒビ"。
細い筆を使って
文字通り細~く線を書いていくのです。

歪む。
はみ出る。
途切れる。
かすれる。
うまく書けない。

…もうイヤ。

周囲を見渡すとほかの生徒さんたちは
それはもう見事なまでに
細くキレイな線を引いてるではありませんか。

…もうイヤ。

書き上がったものの出来と
私のテンションがダダ下がりなのを見て
「マズい」と思ったであろう先生が
善後策を提案してくださいました。

ストレートに申し上げますと
箔がけをしてヘタクソな筆あとを
覆い隠してしまいましょう、という案。

銀箔ならぬ錫箔(だったかな?)を
新うるしが乾く前にフワフワと纏わせ
渇ききったら余分なものを払い落とします。

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それだけで
目も当てられない状態だったものが
かなり華やかに修復されたように変身✨
不細工な太線が逆に効果的に✨

そんなワケで
出来上がりはとっても満足ですが
「行ってヨカッタ」という結論に達したのは
決して金継ぎにハマったからではありません。
自分に金継ぎはムリだということが
よぉーくわかったからです。

今回参加したワークショップは
あくまで簡易に体験するためのもの。
本物の金継ぎは
漆の取り扱いは危険で気を遣うし
ひとつひとつの工程にとても時間がかかる
かなり根気の要る作業。
それにチャレンジする気になるかどうか
判断する機会でした。

体験してみて
金継ぎは本当にステキな技法だと思いました。
でも、自分にはムリ。
もしも金継ぎしたいほどの器が現れたら
そのときは先生にお願いしよう。
潔くそう判断できました。
(そのくらいヒドい出来だった…。)

最後はカフェタイム✨
会場となったカフェのオーナーさんから
バスクチーズケーキとコーヒーのサービスが♥️

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金継ぎされた器でいただきました。

ほっとひと息つきながら、先生への質疑応答。
ほかの参加者の方々は
骨董品店のオーナーさんだったり
シルクプリントの技士さんだったり
けっこう「プロ」っぽい方ばかりで
ただの会社員は私だけでした。
みなさん金継ぎのさらなる深淵について
熱く質問をされてるなか
私は金継ぎのやり方に関してではなく
先生に修復をお願いした場合の価格について
ガッツリお聞きしました(  ̄▽ ̄)

いやホント、しつこいようですが
金継ぎを簡易に体験できてヨカッタです。
改めて、そうカンタンには手を出せない
やっぱり"高尚な趣味"だと思いました✨