昨日の当ブログで書いたように、木下忠司さんは「破れ太鼓」(1949 木下恵介監督)に音楽担当ばかりでなく「役者」として出演したわけですが、それより前にもす木下作品に出演がありました! と言っても、乗馬シーンの吹き替え出演です。「わが恋せし乙女」(1946 木下恵介監督)で、SID0034680
映画の舞台が牧場のため、頻繁に乗馬シーンが出てくるのですが、原保美さん演じる主人公が原野を馬で疾駆する場面(もちろんロングショット)などは木下忠司さんがつとめているそうです。忠司さんは召集されたとき、騎兵隊に配属されて馬術の達人だったのです。そして、この「わが恋せし乙女」が忠司さんの映画音楽デビュー作となりました。復員したものの仕事がなく落ち込んでいた忠司さんに兄の木下恵介さんがサトウ・ハチローさんの詩を渡して曲をつけさせたがきっかけとなりました。その「青春牧場」が「わが恋せし乙女」の主題歌になり、以後は木下恵介監督の全作(長唄、義太夫を用いた「楢山節考」を除く)で音楽を担当して兄の作品を支えます。
木下恵介監督といえば、多くの人がまず「二十四の瞳」(1954 木下恵介監督)を思い出すでしょう。日本中の観客の涙をしぼった名作です。既成の小学校唱歌が多く流れますが、「今回は唱歌を使おう」という監督の意図を受けて、忠司さんがどのシーンにどの歌がいいかを選んだこの選曲がまた絶妙です! 
特に、貧しくて小学校卒業前に去っていった松江という女の子と、高峰秀子さん演じる大石先生が修学旅行先の高松で偶然再会するシーンに「七つの子」が流れてくるのですが、僕はここは何回観ても涙腺が決壊してしまいます。かつての級友たちに見つからないように隠れる松江、おそらくは売り飛ばされて、この先は女郎か酌婦になるであろう彼女の行く末……ここで落涙しない人は僕には信じられません。
木下恵介さんはこういった抒情や哀切を描く作家である一方、非常に前衛的というか、新しい映像表現に挑戦する監督でもあります。日本初のカラー映画「カルメン故郷に帰る」(1951 木下恵介監督)、その続編で斜めのアングルなど奇抜な構図の「カルメン純情す」(1952 木下恵介監督)、楕円形のフレームを使った「野菊の如き君なりき」(1955 木下恵介監督)、舞台セットのような様式美で驚かせた「楢山節考」(1958 木下恵介監督)、フィルムに直接着色した「笛吹川」(1960 木下恵介監督)……と枚挙にいとまがありません。そして、木下忠司さんも負けずに幅広い音楽性とアイデアに満ちた音楽家です。特に僕が衝撃を受けたのは「永遠の人」(1961 木下恵介監督)にフラメンコギターの演奏を導入したことです。憎み合う夫婦の壮絶なクロニクルという極めて日本的風土の物語になぜかマッチしていて驚きました。
  
木下恵介監督は今年、没後20年。4月30日に亡くなった忠司さんとあちらの世界で再会し、映画や音楽の話をされていることでしょう。 (ジャッピー!編集長)
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