今日は5月の第2日曜日、「母の日」です。カーネーションの花やプレゼントを用意されている方も多いかと思います。自分という人間をこの世に送り出し、育ててくれた「母」に感謝の気持ちを持って過ごす一日にしたいものです。
当ブログで一昨日から話題にしている木下恵介監督は、母と子を取り上げることの多い作家でした。その原点というか、コアな部分が表されている映画が「陸軍」(1944 木下恵介監督)です。o0480060013919252626
1944年すなわち昭和19年の12月7日封切ですから、太平洋戦争真っ只中、もう敗色が濃厚に漂っている時期ですが、大本営はまだまだ国民に「必勝」を信じさせていました。この「陸軍」も太平洋戦争3周年記念で作られた戦意高揚映画です。「陸軍省後援」というお墨付きのついた、まさに「国策映画」です。主人公の家は、日清、日露戦争時代から「軍国日本」の鑑のような家風です。そんな家に生まれた心優しい少年がやがて成長し、出征していくのがラストの場面で、母役の田中絹代さんが出征する息子の隊列を延々と追いかけていくのが強い印象を残します。何しろ9分間(!)にも及ぶシークエンスなのです! 脚本にはわずかな描写でしか書かれていないこの場面を、カットバック、移動撮影、様々な技法を駆使して9分間まで引っ張ったのですから木下恵介監督がここを一番のクライマックスとして考えたのは明らかです。結果的に、田中絹代さんの演じる母が見送りの人々の波にもみくちゃになりながら隊列を必死に走り追う姿(田中さんの入魂の演技もあって)が強烈な感動を生み出し、「母親」の子どもを思う気持ちが「戦意高揚」よりも強く打ち出された形になりました。実際、公開されたあと、「女々しい」「厭戦的だ」と当局から批難が沸き起こったのですが、ここには「軍国の母」をのぞまれた当時のお母さん方の真の思いがこめられているように思います。どんな時代、どんな状況であっても、何よりも子どもの命を大切に思い、子供の幸せを願う……それが母親なのだということが胸に迫るシークエンスです。

軍から後援を受けた作品ですから、この行進シーンは本当に召集された補充兵を動員して撮影されました。(ここで映った兵隊さんのほとんどが戦死されたそうです)通りを一杯に埋めたエキストラも含めると千人を超える大スペクタクル場面です。当局の目が光っている中、木下監督が反抗的に「反戦」のメッセージをこめたというよりは、木下監督が自身が信じるもの(この場合は「母性愛」)を描いたのだと思います。結果的に、この「陸軍」は軍国主義も戦意高揚も吹っ飛ばしてしまうわけで、「母性愛」はすべてのイデオロギーを超える普遍性があることを知らしめたのだと思います。 
(ジャッピー!編集長)
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