先日、子どもの小学校の学芸会に行ってきた。

小学生の劇なんて、先生が本来の授業の合間にやるものだし、
演劇を学んだことのある人も多くない。
または逆に芝居好きな先生の思い入れが強すぎて、
痛々しいものになる場合もあるんじゃないかと心配したりして、
正直に言うと、そこまで期待していなかったのだ。

 

 でも、いい意味で期待を裏切られた。

 

 衝撃的だった演目は、葛飾区本田小学校6年生による
『いじめについて考える劇〜それが、いじめなんだよ』

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学芸会にありがちな昔話やミュージカルではないし、

既成の台本も使っていない。

 それだけでも驚きだが、劇はフォーラム・シアター(討論劇)だった。

 フォーラム・シアター
ブラジルの演出家アウグスト・ボワールが考え出した手法だ。
身近な問題を含む劇をつくり、観客に何が問題か考えて意見を言ってもらう。
そして観客は意見を言うだけでなく、劇の中の登場人物になって、
問題を解決するための行動をとる、観客参加型のお芝居である。

 もちろん、今回のお芝居では、私たち観客はそこまで求められなかったが、
「いじめだと思うかどうか」意見を表明したり、
ジョーカー(進行役)の子どもからどう思うか聞かれたりする機会があった。
従来の学芸会では見たことのない風景だった。

 

 「いじめについて考える劇」は次のような場面で構成されている。(私の記憶)

 

1.じゃんけんでだまされて、ランドセルを持たせられる男子

2.違う待ち合わせの公園で待たされた女子

3.持っていないLINEで悪口を言われる女子

4.いじめをした人、された人の割合の違い

5.「いじめ」の構造

6.クラスで発生するいじめをやめるには

7.全員のふりかえり

 

 

1〜3は「ショーケース」。

 子どもたちの中でありそうな具体的なエピソードを紹介し、
シーンの最後に観客に
「これはいじめだと思いますか?思ったら頭の上で〇、
思わなかったら×のしぐさをしてください」と問いかける。
戸惑っていた保護者も多く、
〇や×の意思表明をしていないブロックもあったみたいだが、
私たちの周りは全員参加していた。

 そして、ジョーカー役の子どもが
一番前の保護者席の中から人を選び、意見の理由を聞いていくのだ。
親自身も子ども同様に、
劇の中の「いじめ」と向き合うしかけになっているところが面白い。

 

 子どもたちの熱演によるカタルシス(精神浄化作用)や
感動を期待してきた親たちにとって全然想定外の劇になったのではないか。


 4では、子どもたちはいじめの一般的なアンケートの結果を発表した。
「したことがある」と答えた人は17パーセント。
「されたことがある」と答えた人は64パーセント。(私の記憶でうろ覚えです。)
そして、子どもたちは自分たちで考えた
「いじめをした人たちは自覚がないのではないか」という仮説を紹介する。


 5では、いじめの4層構造「被害者」「加害者」「観衆」「傍観者」を紹介する。
ここらへんは劇というよりも発表に近い。
見ている親自身も「いじめ」の劇に非参加的な態度をとり続けると
「傍観者」になる可能性もあり、見ていてもドキドキした。


6「クラスで発生するいじめをやめるには」は、
参加する子どもたち全員がひな壇に並び、
1人の子が身体的にも精神的にも集中的にいじめられる芝居。
「加害者」だけでなく、クラス全員が
5で紹介した「観衆」「傍観者」になっている状況が表現される。


 同時に、「先生に告げ口したら、自分がいじめられかも」
「先生に言っても変わらないんじゃないのか」と言った
「傍観者」役の子どもたちの葛藤も表現されて、
いじめの問題の根の深さも垣間見えた。

そんな中、一人の子どもが「戦う者の歌が聞こえるか」という
『レ・ミゼラブル』の「民衆の歌」を歌いだし、
徐々に歌声が広がっていく。
ここらへんは先生の希望と演出が入り、
少しカタルシスっぽいところを入れてバランスをとったかもれない。
(学芸会なので仕方がないのだろうが。)


 最後が圧巻だった。カーテンコールのように、
子どもたち一人一人がひな壇の一番上に立って、
お辞儀をしていくのだが、
同時に舞台奥にあるホリゾント幕に
子どもたち全員の「劇をつくったふりかえり」が映像で流されていく。

 私は拍手そっちのけで、一文字一文字を追うことに夢中になった。

 「悪口を言うのをやめようと思った」など率直だが、
私たち見ている人たちへの宣言のように見えるものが多かった。
また「学芸会でこんな劇をやるなんてどうかと思ったが、勉強になった」
というものもあり、
子どもたちが劇を通じて、
「いじめ」について調べたり考えたりした痕跡がわかった。

 

 この意欲的な劇を企画し、演出した先生たちと、
チャレンジした子どもたちに拍手を送るべく、
久しぶりにブログを更新してしまった。
自分が住む地域でフォーラム・シアターが見られるとは思わなかった。
いや、ほんとにすごかった。