e7572f37.jpg宿が決まったので、今度は食事をするお店さがしをしました。
歩くないなや、三人とも文句なしでここしかないというお店を発見。昭和の大衆居酒屋の王道を行くような看板と堂々とした門構えの「大林」というお店です。暖簾に吸い込まれるように入りました。

さらにすばらしいのが店内です。高い天井。カウンター席とテーブル席の間に大胆なスペースを設けたつくり。しかもカウンターは使いこまれた木製の机。温かみを感じさせる木製のイスも並んでいます。奥には神棚なんかもあります。一つ一つの調度品に風格が漂っています。
ここでも、反射的に女性の友人が「すばらしぃ!!!写真撮ってもいいですか?」と写真を撮ろうとすると、ご主人が奥から無言で札を持ってきて、我々の目の前にパチリ!見ると「撮影禁止」「携帯禁止」と書かれています。ダメ押しに「うちはダメなんだよ」とそっけない一言が浴びせられました。

その日は自分たちがはじめてのお客さんだったみたいです。
無愛想そうに見えたご主人が「こっちのほうがストーブがあるからいいよ」と中央のカウンター席に案内してくれました。
とりあえずビールで乾杯。あじフライ、モツ煮、ニラ玉炒めというような定番ものを頼みます。どの品も丁寧でおいしいです。せっかくなのでハイボールを頼むと、焼酎を目の前で入れて、炭酸で割ってくれます。注ぎ方のおいしそうなこと。濃さも味もまがい物のハイボールではありません。
こんなにいいお店が山谷にあるとは・・・。立石の数ある名店にも負けず劣らずのお店で、少々嫉妬してしまいます。

われわれがかなりこのお店を楽しんでいるのが伝わったのか、無口な職人肌のご主人が少しずつ変わってきます。
途中でちょっとかわいく「焼き銀杏があるんだけどどう?」と声をかけられました。さすがに「いりません」とは言えません。しばらくすると銀杏が殻つきのまま出てきました。ご主人の右手には小さなすりこぎ棒が。「こうして食べるんだよ」と棒でお手本に殻を割ってもらいます。アツアツの実をまるさんがおいしそうに食べます。一種の参加型の演出なのですね。自分も続いて挑戦すると、力が強すぎたため、殻とともに実もつぶれました。ふたりは大笑い。ご主人も満足そう。
友人がなにか別の飲み物を頼もうとしていると、「焼酎のミルク割なんていうのもあるんだけど」とご主人。無愛想だった人がちょっとかわいくなる。ツンデレの法則でしょうか。こんなふうに言われたら、どんな人でも断れないでしょう。
これも意外といけました。焼酎がカクテルのカルアミルクみたいな飲みやすい味になるのです。

あっという間の2時間を過ごしました。かなり飲んで食べて三人で6,600円。お茶目なご主人とも出会える。贅沢とはこのことです。
こんな優良店なのに、2時間自分たちの独占。
かつては仕事帰りの労働者でさぞかしにぎわったお店だったのでしょう。入口付近には小さな手洗いスペースがあったりして、建築関係の労働者とかは、手を洗ってから店に入ったのだろうなと想像しました。
本当にいいお店というのは、食べ物の味も建物も人も記憶に残るのだと思います。

ここで、女性の友人とはお別れ。南千住の駅まで送り届けて、ほろ酔い加減のふたりで再び居酒屋をさがします。(つづく)